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言語の”響き”にまつわる小話

「あなたたちのしゃべる言葉はとてもかわいいね」

 日本人の子とふたりで久々に日本語を喋っていたら、通りすがりのドイツ人にそう言われた。日本語は抑揚がなくて感情が読めないなんてアメリカ人に言われたことはあったが、かわいいと言われたのは初めてだ。

 ドイツ語圏からの留学生にその話をすると、彼の言いたいことはすごくわかる!!とみんな口を揃えて食い気味に賛同する。

「日本の発音は歌うみたいにきれい。私達の言葉はとてもアグレッシブに聞こえてしまうから好きじゃない」と。

 さて、日本語って何がそんなに可愛らしく聞こえるんでしょう。わたしはその一番の理由は、日本語には喉や鼻やベロを使って”ンガッ”てな発音をする音がないことだと感じています。フランス語やドイツ語なんかを聞いてると話すの大変そうだなあと思いませんか。それに比べて日本の発音はとても省エネです。

 わたしの名前には”ラ行”が含まれているので、外国人に名前を言うと必ずRかLか問われます。いや、Rではない確実に。でもLかと言われても違う気がする。喉の奥で舌を巻くのがR、歯の裏で舌を弾くのがL……日本のラ行はちょっと舌を当てるだけで派手な動きはないから…なんなんだこれは。

 強いストレスポイントもない、ベロも鼻も使わない。そんな日本語が「歌うみたいで可愛い」と言われるのは確かにそうかもしれません。

 中国語、韓国語、朝鮮語(?)、ドイツ語、ロシア語などなど。例えば新宿の交差点でふと耳にすると怒ってるの!?ってくらい攻撃的に感じます。でもひとたび彼らが同じように英語を喋れば、多少なまりはあっても普通に落ち着いていて、国ごとの気性の違い以前に、言語の持つ響きの違いであったことに気づきます。

 同じ英語ですら、アメリカ英語よりもイギリス英語のほうが尖って耳に届くので、普通の内容を言われても少しビクッとしてしまって、一ヶ月経った今でも慣れないです。外国人の強い言葉を聞くとつい萎縮してしまいますが、特別怒りっぽい民族なんていません、もちろん彼らの沸点は日本人とそう変わりません。何も無ければ別に怒らないし、それは単に喋り方・響きの問題です。

 日本語は、普通に喋っていればツバが出ないようにできていると思います。 例えば腹話術のモノマネ、日本人なら誰でもやったことあると思んですが、これを他言語でやろうと思うとかなり、かなり難しいんですよね。日本語を話すのにはほとんど舌や喉を使わないので口を閉じたままでも大体発音できちゃうんです。

 日本人だったら、よほどアグレッシブな話し方をする人しかツバなんか出ません。外国人と話してると普通の会話なのにツバが飛んでくる事もしばしば。このようなツバがでる話し方を、日本人は”怒っている”と勘違いしてしまいます。外国人に話しかけられて無駄に萎縮ししまう日本人が多いのはこれに起因するのではないでしょうか。

 日本人はよく親切で礼儀正しいとか

言われますけど、朝の通勤ラッシュなんか乗っていると日本人にも嫌なヤツはいっぱいいるぞ!!と思います。それでもなんとなく、日本人が異様に”やさしく”見えるのは、ソフトな言葉を作り出した先人たちのおかげなんじゃないかな。

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