青野くんに触りたいから死にたい 第50話 感想やメモ(考察)


青野くんに触りたいから死にたい
第50話|夫婦石の涙①

感想と気付きのメモ

感想

黒青野くんの求めているもの/「貰う」の意味

ついに始まった「夫婦石の涙」の儀式。
内田の予想外の行動をとる黒青野

 「お前の一番欲しいものをやる!! お前がずっと求めていたものだ!!」
 「それならこれを全て貰おう」

内田くんが遠回しな言い方しちゃうから大変なことに。
黒青野くんは検閲が厳しめだからはっきり言わないと、、
でもはっきり伝えていたとしても、黒青野くんは刈谷優里はもう俺のもの と言っているので、
結局ほかに何か差し出すものを求められることになって結果的には同じ?
四ツ首様の時みたいに、生贄の命を差し出さなくても済む回避方法があると良いのですが。
でも一度儀式をはじめってしまった以上、内田くんは何らかのリスクを負うことになりそうなので心配です。

今回と状況が似ている鉄平くんの部屋での出来事( 5巻/この時は「申し合わせ」ではなく「話し合い」)での
黒青野くんの言動から考えると、「貰う」と「殺す(命を貰う)」はイコールでは無さそうだけどどうなんだろう?
今回は息をしていない人もいるようなので、「話し合い」と「申し合わせ」では「貰う」の意味もちょっと違うのかな。
これまで黒青野くんは優里ちゃんひとりに固執していると思って読んでいたので、黒青野くんのこの発言には驚きました。
真意はまだわからないけど、貰えるのなら誰でも欲しいし、刈谷優里もその大勢のなかのひとりであり、彼女はすでに自分のものになっているから次を貰いたいという意味合いにもとれる。

黒青野くんは主語を言わないことが多いから怖い。 
ぜひ主語も入れて話してほしい。

少し逸れるけど、この「貰う」のほかに、「入る」にも主語を入れて欲しい。
優里ちゃんはともかく、「(保健室に)入ってくれば!」(1巻5話)でまさか自分に入ってくるとは藤本くんは思わないし、堀江家に何をしに行ったのかという問いかけ( 2巻9話)に対する答えの「入るため」も家に入る、の意味だと思って読んでいました(美桜ちゃんもこの家に入れない、と言って追い返している)。
優里ちゃんだけに固執しているのではないのかもという見方も出てきた今話を読んだ後だと、家ではなく美桜ちゃんに、の意味とも思えてきて、元々怖かった化けて訪ねてくるシーン(2巻7話)がますます怖いです。

黒青野くんに主語を言わせないだけで、こんなにも怖さが増してるのほんとにすごい。

夫婦石の儀式とは

内田くんが始めた夫婦石の儀式はどんなルールなのか?
おそらく彼は鉄平くんが説明してくれたものとは別のソースを見たのだと思うので、読者にも早く儀式のルールを教えて欲しいです。
あとこの感じで儀式(申し合わせ)が始められたのも意外でした。
ほぼ呼びかけだけで始まっているので、四ツ首様の儀式と比べると随分お手軽なような…。
このお手軽さが怖いです。それともまだ描かれてないだけで事前準備があったのかな?

大おばあちゃんが言っている「あの子ども」。
希美ちゃんは内田くんを思い浮かべているけど、彼じゃない可能性もあるかも。大おばあちゃんも主語をぼやかさないで…。

優里ちゃんが止めに入って黒青野くんもそれに反応してるけど、内田くんが始めた儀式なのに優里ちゃんに儀式を止める権限はあるのかな。
鉄平くんとの「話し合い」では、同じように止めに入った優里ちゃんにこれは鉄平との話し合いだ、と言っていたので。
優里ちゃんがどう出るかはまだわからないけど、
もし今回ここで何かを差し出しても意味がないのでは?
赤根滝の片割れ帽子の時のように、黒青野くんはまた騙そうとしているのかもしれない。
優里ちゃんも藤本くんもすでに2回間違えてますよね、どうか気をつけて…。

最後のアオリの、
“命捧げずに青野と生きられるか──。”

その答えはわからないので、希美ちゃん、頼みます…。


怖いことがいっぱいの回でした。
はるちゃんの出番も欲しいです


気付きメモ

ここからは読んでいて気づいたことのメモ。
Twitterでぽつぽつ呟いていたこともまとめています。
思いついたことを書き連ねてるので整合性に欠けています。

黒青野くん=神さま?説

※青野母のことは一旦おいておきます

黒青野くんは青野くんの別人格というより、
青野くんに取り憑いちゃってるナニか──多分神さまなのかなと思って読んでいるんですが、それっぽい雰囲気は今までも何となくあったけど、今話はより強く感じました。人間の想定を越えた代償を求めてくるのこの感じ、お狐さま?みたいな動物霊とか動物系の神さまっぽさがすごい。

この神さまはつまり加々皆山に祀られてるモノ(おそらく水神、龍神)か、千羽町の土地の神さまなのかなと思っています(両者は同一のモノかもしれない)。
何で青野くんに憑いてるのかはうまく説明出来ないんですが、この神さまと青野くんと優里ちゃんの三者には“忘れられたくない”という意志が共通項としてあって、それがこの生贄契約に深く関わっているのではないかな。


町の人たちから
忘れられつつあることが描写されている。

  • 加々皆山の鳥居や祠について、藤本の何を祀ってるか知らないという発言(3巻11話)

  • 千羽町内の手入れがあまりされてない祠や道祖神(9巻45話)

神とは信仰から生まれたものであり、信仰する人が居なくなれば存在できなくなるという考え(←これ何か名称があるのかな)がこの物語にも適応されるなら、神さまはこの土地の人々に忘れられることをおそれている??

青野くん
寂しい、一人になりたくない(9巻44話)
まわりのみんなに嫌われたくない


優里ちゃん
青野くんの世界にいない自分をどうしたら知ってもらえるか?強く印象に残りたい(1巻1話)


≒自身の存在を忘れられたくない

土地の人々/周囲の人/青野くん個人とそれぞれ範囲は違うけど、三者には似た意志があって、それかがなんやかんやで契約ぽくなってるのでは。
肝心のなんやかんやが何なのかは分からないので
説得力に欠けてしまいますが…。
黒青野くんが今話で名前を呼ばれて笑み(のように見えるもの)を浮かべてたのも、黒青野くん=神様だとしたら
たくさん人が自分の存在を認識してる状況=忘れられていない ということに喜んでいるのかなと思いました。

雑な解釈ですが、
受肉する──つまり神が人=青野龍平として肉体を持てば、神は人々から認識され、再び信仰されるようになる。
青野くんは神として人々から信仰されるようになり、”ひとり“にはならない。
優里ちゃんは神を産む?ことで彼と強い結びつきができる。

つまりそれぞれの願いが叶うことになる。
優里ちゃんの部分はちょっとあやしいですが…。
でも小学生たちには見えてる糸(おそらく臍の緒)も、まさに“強い結びつき”を想起させるのかな、と。

黒青野くん=神さまではないとしても、加々皆山の鳥居の前で青野くんの記憶が遠退いたり、優里ちゃんが神隠しにあったりしているので(3巻11話)、あの鳥居(の場所に祀られてるモノ)が青野くん⇆黒青野くん・青野くん⇆優里ちゃんの契約において、何らかのトリガーのひとつにはなっていそう。

青野母はどう関わっている?

母についてはまだまだ分からないことが多すぎるので、黒青野くん=神さま説の視点に限定して考えたことを少し。
母親が作中で描写がある中で、現実の世界に初めて現れたのは最初の加々皆山での諸々のあと(3巻11話の刈谷家ベランダ)だし、電柱の影に居たのもはさむけど、加々皆山での四ツ首様の諸々のあとにもぺとぺとついてきて(あれは母ですよね?)いるので、母も加々皆山、あるいは加々皆山の神さまと関連があるのかも。
または加々皆山自体がこの世とあの世の境目的な場所とか…
( “ぺとぺと”が濡れてることを表してるなら彼女も滝壺の底に居たのかも。青野くんは濡れてなかったけど)

それかこの土地の神さまは人形神(ヒンナガミ※)みたいな性質のもので、生前から青野家(または青野くん)に憑いてたとか。青野家でそれに似た呪い的なものがたらい回されているとか…。大おばあちゃんの言う「役目」にも関わってきそう。ただその場合だと、鉄平くんや祖父母にも何か起こっていそうだけど、今のところ平和っぽいから違うのかな。
(追記:大おばあちゃんが希美ちゃんに只人に育てられて…、と言っているから、その血筋の中でも役目をうけない人もいるのかも)

※ヒンナ神…その家の願いを何でも叶えてくれるがそれに伴う代償がつき、死んだ後も離れないといわれる


美桜ちゃんの「幽霊の物語」論と青野くん

ここからは今話ではなくずっと気になってたけど書けずにいたこと。1巻4話の美桜ちゃんの「幽霊の物語」の説明について。

「幽霊の物語は基本的に
その土地に憑いた地縛霊か
禁忌を犯すことによって取り憑かれる浮遊霊の物語が多い」

「許可の宣言はおそらく禁忌」

美桜ちゃんのこの発言で、青野くんは許可の宣言という禁忌を犯すことにより取り憑いた浮遊霊だと思わせられるけど、のちに土地に憑いた地縛霊という可能性も青野くん自身によって示唆されているのかなと思っています。
3巻11話で、青野くんは自分が優里ちゃんに取り憑いているから彼女から離れられないみたいだと言ってるけど、それは優里ちゃんからではなくて、“地縛霊だから”千羽町から離れられないともとれます。

この地縛霊と前述の土地の神さまとは、一緒にしてはいけないのかもしれないけれど、近い位置の存在のように思います。
(ここからは整理しきれていないので、さらにぐちゃぐちゃなまま書いています)
浮遊霊である黒青野くんはすでに消えていて、今の黒青野くんは地縛霊に近い土地の神さまなのでは。
1回めの加々皆山のくだり(3巻11話)で浮遊霊ぽい黒青野くんは成仏?していて、そのかわりに土地の神さま≒地縛霊ぽいものが憑いてきたか(青野母も関連、またはその一部か)、あるいは浮遊霊が消えたことで元々生前に取り憑いてたものが前に出てきたか。
加々皆山で優里ちゃんが「返して」もらったあとに現れた黒青野くん(4巻15話)は
2人も感じてるけどあきらかに前とは変わっている。

  • 優里ちゃんに笑いかける/褒めるようになる
    (媚びともとれる態度)

  • 白青野くんにもうっすら記憶が残るようになる

  • 髪が伸び始める
    (幽霊であれば形状記憶状態であるはず(8話参照)なのに変化している=幽霊ではなくなっている?)

  • 願い事を催促するようになる
    (そしてその代償を求めてくる)

黒青野くんはあきらかに加々皆山前と後では別のモノに変わっていて、悪魔的なような、能動的な神さま的な行動とも取れるような…。
やっぱり黒青野くん=神さま説を押したい。


最後まで読んでいただいてありがとうございます。
穴だらけなので、随時埋めていけたらと思います。

今後の展開も楽しみです。