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お伊勢参りは高速バスで…のはずが、鉄道の偉大さを認識することに



年末の一本のLINEから始まった

「ピコン……」
年の瀬も押し迫ったある日、LINEの着信を知らせる音が鳴った。
いつもの某氏からのイベント配信の問い合わせだった。
「1月4日に**神宮で行われる年頭会見を配信していただけませんでしょうか」
「神宮」と言えば「明治神宮」という脳内変換を経て、私は余裕で応えた。
「良いっすよ」
すると、お礼の返事が入ってきた。
「年始に遠いところまで行っていただきありがとうございます」
遠いところ?
再度LINEの依頼文を見てみると、明治神宮ではなく、なんと伊勢神宮だった。

驚く豚さん

今さら断るわけにも行かず、とりあえず経路と時間を検索してみた。

なんと最寄り駅5時24分スタート

所要時間は最寄り駅から4時間20分だが、朝5時20分には事務所を出ないといけない。起きるのは4時半か……寝てられないじゃないか。
年始は混むだろうし、20kg(推定)の機材を持って移動はキツい。乗り換えもある。
あああ憂鬱じゃ……

高速バスがあるじゃないか

そういえば高速バスが出ているそうじゃないか、と検索してみると出てきた。
「あおぞらライナー 東京⇒伊勢(宇治山田)・青木バス車庫 3列シートトイレ付き 《車内除菌済》《空気清浄機付》」
東京駅近くの八重洲口鍛冶橋駐車場で乗れば、そのまま伊勢まで行ってくれる。出発は22時40分だけど、車内で寝ていかれれば、起きたら伊勢というわけだ。
写真を見ると3列シートになっているので、隣の人を気にすることも無さそうだし、トイレもついていて、Wi-Fiも使える。いいじゃん。これでお値段12,500円(保険は別途500円)。旅費は依頼者持ちだけど、安いに越したことない。
調子に乗って帰りも予約してしまった。
これが後で後悔することになるとは……

なんだ快適じゃないか

そして年が明けた1月3日。
機材を準備し、風呂に入って八重洲口鍛冶橋駐車場へ。東京駅から行ったけれど、あとで考えたら有楽町線銀座一丁目駅からの方が近かったかも。
八重洲口鍛冶橋駐車場は若者や家族連れなどでごった返していた。外国人グループの姿もかなり多い。
一抹の不安を抱えながらバス停に着き、名前を言って乗り込むと、あらら。
1人しかいないではないか。

バス内はガラガラ

「今日はお客さん少ないので、隣の席も物置きで使ってください」という運転手さんのありがたい言葉にホッとしながら、「青木バス大丈夫か。これで経営が成り立つのだろうか」と他人事ながら心配もしてしまった。
結局、乗客はおっさん4人。快適な旅が始まった……かに見えた。

途中のSAでトイレ休憩もある
快適な高速バス

イスはリクライニングシートで、フットレストもあり、前後左右を気にしなくて良いので快適だ。

車内では、iPadでダウンロードしてあった映画『セキュリティ・チェック』を観始めたところ、途中で眠くなるだろうと思っていたら、面白くて全部観てしまった。

すっかり目が覚めてしまったので、今度はKindleに入れてきた『書いてはいけない』を読み始めたら、これも面白くて全部読んでしまった。

やばいやばい……これでは寝ないまま本番に臨むことになってしまう。
しかしこうなると眠れないものだ。
結局、一睡もできないまま宇治山田駅に着いてしまった。

宇治山田は尾崎咢堂、沢村栄治ゆかりの地

趣のある宇治山田駅

なんとも趣のある宇治山田駅。聞いたところによると、「憲政の神様」尾崎咢堂(尾崎行雄)の胸像が駅前の観光文化会館正面にあるそうで、行けばよかったと後悔したけれど、時間はあっても気持ちにそんな余裕は無かった。ああ、残念。

なんと、往年の大投手、沢村栄治の出身地でもあるらしい。これも見ておけばよかったなあ。このときは観光気分でも無かったし、気が回らなかった。
それにしても恐るべし宇治山田。

駅に着いたあと、とりあえず「孤独のグルメ」の井之頭五郎ばりに「腹が……減った」と近くを探してみると、なんとも昭和レトロな喫茶店が。

昭和レトロな喫茶「モア」
モーニングセット なぜかキュウリが

モーニングのシナモントーストにかぶりつきスケジュールを確認すると、バスで会場となる神宮会館に行けば、余裕で準備できそうだった。

準備…そして本番

神宮会館には少し早めに着いたので、余裕で準備できた。
初めての場所でのライブ配信となると結構トラブルがありがちだが、今回は問題無く終わらせることができた。

年頭会見会場

(会見内容は契約もあるので、今回は割愛させてもらいます)
13時前にはすべて終了したので、夜のバスの時間まで伊勢神宮に行くことに。しかし、寝不足と疲れですでにヘロヘロ。

宇治山田駅前からリ・スタート〜伊勢神宮へ

神宮会館前から宇治山田駅に戻ろうとしてバスを待っていたが、混んでいて機材が邪魔になりそうだったので、タクシーに乗った。運賃は2180円。
タクシーの運転手さんと話していると、「ここだけの話」が多い。
詳細は言えないが、伊勢参りに来たときは、一日タクシーを借りて7箇所のお勧めスポットを廻るのが良いらしい。必ず費用は交渉してください、とのことだった。これ以上は察してね。

宇治山田駅のコインロッカーに機材を預けて(700円)、駅前の食堂「割烹 大喜」で昼食。カキフライ定食が1760円。

カキフライ定食

バスに乗り最初は外宮から。とにかく人が多い。正月なので仕方ないか。それで仕事になったわけだし。

伊勢神宮内宮入口

外宮と内宮のようすはビデオに撮ったので、軽く編集して後日掲載するつもり。
内宮横の「おかげ横丁」は、魅力的な店がたくさん並んでいるのだが、とにかく人が多くてうんざりするほど。すでに疲れがピークに達していたので、何度か倒れそうになった。

観光客で溢れている「おかげ横丁」

バスまでの時間つぶし

宇治山田駅に戻ってきたのが17時。帰りのバスは20時25分出発のため、3時間ほど時間を潰さなければならない。寒いし、疲れているし、泣きそうになりながら駅の横を見ると居酒屋が。「海鮮食堂三幸丸」に飛び込む。

海鮮食堂三幸丸にて

ビールにハイボール3杯飲んだところで伊勢名物「さめたれ」を見つけて注文。何かと思ったら、味のついた「えいひれ」という感じ。

さめたれ

けっこ酔ってきたが、まだバスの時間まで1時間あったので、横にあったカフェ「チャンプ」へ。名物の「伊勢うどん」を注文。
焼きうどんのような見た目になるけど、コシが無くしょっぱい。ハイボールのアテとしてはちょうどいいのではないか。

伊勢うどん

正直言って感動するほど美味いとは思えなかったけど、今度来たら別の店で食べてみよう。

行きはスカスカ 帰りはぎゅうぎゅう

宇治山田駅前にバスが到着。バス停では10人ほど待っていたので、嫌な予感がしていたが、乗ってみるとなんと満席。青木バスさん、良かったね。
しかし、私の両脇はどちらも、180cm、120kg(推定)の巨漢のおっさんが。しかも左側はタバコ臭い。
さらに、前の客が目一杯イスを倒してきたので、フットレストに足を乗せていると当たってしまう。泣く泣く股を広げて座ることに。

前のイスが目の前に

さらに、「携帯、スマホ、タブレットなどは、光が他のお客様の迷惑になりますので、消灯後はご使用を控えていただくようお願いいたします」とのアナウンスが。
疲れ切った体にビールとハイボールを流し込んできたので、バスの出発前に爆睡状態に陥ったが、出発後1時間ほどしたら目が覚めてしまった。
消灯中だったために何もできず、しかも眠れなくなったので、東京まで7時間ほど拷問のような時間を過ごすことになった。
トイレは車中で入らずになんとかなったけれど、トイレのある最後尾は女性専用席でもあるため、運行中にもよおしたら恥ずかしかったかも。

東京駅に着いたときはヘロヘロだった。
二晩ほぼ徹夜で2万歩以上歩き、ライブ配信では緊張し、酒も入っていたので、半蔵門の事務所に着いてメルマガを書いていたら、途中で何度か気が遠くなった。
メルマガを出し終え、床に倒れ込むように寝てしまったのは言うまでもない。

高速バスは快適な人とそうでない人がいる

当たり前のことだけれど、特定のサービスに適応できる人とできない人がいる。
高速バスはメリットがある。

  • 他の交通機関よりも安い

  • ホテル代が浮く

  • (直行の場合は)乗り換えがいらない

とはいえ消灯中は、スマホやタブレットで映画を観たり、本を読むことができない。仮にパソコンを使えたとしても、道路の振動は意外と大きく、執筆のような作業は難しいのではないか。
リクライニングシートは倒せるが、フルフラットではないので違和感を持つ人もいるだろう。不自然に膝を曲げた状態で長時間いるので、膝の弱い人には辛いのではないか。

メリットはある。しかしそれは限られた人にとってみれば、ということだ。
体が丈夫で、どこでもどんな状態でも寝ることができる若者
そんな君こそ高速バスは合っていると言えるだろう。
還暦過ぎの爺さんは、鉄道で行くことにするよ。

そう考えると、鉄道は偉大だ。
車内でデスクワークが可能。スマホやタブレットで映画を観たり、本を読んだり、飲食だってできる。公共マナーとして、匂いの強い食べ物は持ち込まない方が良いけれど、それはどこでも同じだ。
その分コストが上がってしまうけれど、良いじゃないか。カネをまわすのも年配者の責務だ。

年寄りは鉄道や飛行機で移動し、高速バスは若者に譲ろう。


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