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「とーとぅがなし」から始めよう

 チャリティーTシャツの制作から始まった yoron blue. では、当初から Tシャツに限らず、それ以外の商品も企画していこうと考えていました。コンセプトは「青」、そして与論ならではのエッセンスを感じられることです(その顛末は 与論島へ旅したらオンラインストアを始めてしまった で)。

 与論らしさでわかりやすいのは、その言葉。いや、わかりにくいと言うべきでしょうか。
 与論を訪れた際、島の人とごくごく普通に共通語で話していたのですが、別の知り合いが現れて島人同士の会話が始まった途端、面食らいました。なまりとかのレベルではなく、まったく理解できないのです。

 与論で古くから受け継がれている言語は「ゆんぬふとぅば」と呼ばれています。
 日本国内において、ユネスコが選定した消滅危機言語はアイヌ語、奄美語、八丈語、国頭語、宮古語、沖縄語、八重山語、与那国語の8つ。そのうち、ゆんぬふとぅばは沖縄北部と与論、沖永良部島で使われる国頭語に分類されます。そのルーツは琉球語にあり、文法など日本語と同じ系列ではあるものの、耳にする限りでは全く聞きとれません。
 もとより話好きの島人が高速で交わす会話が、ひとこともわからないのも無理からぬことです。

 その、ゆんぬふとぅばのなかで、最も知られているのは「とーとぅがなし」でしょう。「ありがとう」という意味です。漢字で書くとすれば「尊加那志」。この言い方をするのは同じ国頭語を話す地域の中でも与論島だけ。

「とーとぅ」は尊い、「かなし」は神や王に対する尊称で、直訳すると「尊いお方」といったところでしょうか。そして、この相手に対する尊敬の気持ちが与論では、やがて「ありがとう」の意味を持って使われるようになりました。

 この与論独特の「とーとぅがなし=ありがとう」という気持ちを込めて、yoron blue. ではトートバッグならぬ「トートゥバッグ」を作りました(駄洒落か? と思われるかもしれませんが、駄洒落です)。

 デザインのモチーフは「尊」の字。これを中心に、全体の構成をどうしようと考えたときに脳裏をよぎったのが、空から見た与論島。
 複雑に分割されたモザイクのようなキビ畑が全体を覆い、周りを青く輝く珊瑚礁が囲んでいます。
 
 大海にぽつんと浮かんだその姿を思い浮かべると、どうしようもなく愛しい気持ち「かなし」(哀し・愛し)が沸き起こってきます。ああ、これが「とーとぅがなし」かと思い至り、作り上げたのが以下の図案。

「尊」をサトウキビが囲み、その下には打ち寄せる波。上には島の姿と青い珊瑚礁を配置しました。添えられた文字は「鹿児島県奄美群島」と「風光絶佳優游閑適」。前者はしばしば沖縄の離島と間違えられることがあるための但し書き、後者は素晴らしい景色の中でリラックスできる場所といった意味です。

「与論島」の下には「YORONJIMA」と入れました。かつての観光ブームの際、ブランド名としての「ヨロントウ」という呼び方が定着してしまったので、正式な名称としての表記です。そして「ISLE OF YUNNU」はユンヌの島の意。「ユンヌ」は「与論」の古い呼び名で、島人のことは今でも「ゆんぬんちゅ(ユンヌの人)」と呼びます。

 こうして「トートゥバッグ」のデザインが完成したわけですが、よく考えると、ゆんぬふとぅばが生まれた頃にはサトウキビ栽培はまだ行われていなかったし、そもそも空から島を見る機会などありえないので、すべて自分の妄想にすぎません。
 でも、緑と青のあのコントラストには、言葉を超えて胸に迫るものがある気がします。与論ファンのみなさんも、きっとそんな気持ちになるんじゃないでしょうか。

 さて、バッグの紹介に絡めて与論の言葉についても書いてみました。与論を訪れた際は、ぜひ「とーとぅがなし」からコミュニケーションを始めてみてください。

【追記】

 2018年9月29日、猛烈な勢力の台風24号が島を襲いました。現時点ではまだ被害の全貌が判明していませんが、かつて経験した 2012、2013 年の台風に匹敵する、あるいは超えるかもしれない大きな爪痕を残しているようです。離島に台風はつきものとはいえ、ほんの数年で同様の事態が起こるとは残念でなりません。しかし島人はすでに前を向いて復旧へ動き始めています。
 yoron blue. も最初にショップを開いたときの気持ちに立ち返り、10月から年末までの全売上より30%を義援金に充てることを決めました。
 今回の台風では他にも被害を受けている地域が多いと思います。もし余裕のある方は、それぞれのやり方で復旧への力添えをしていただけたらと願います。
 一日も早く、青い海に囲まれた緑あふれる島がよみがえりますように。

【追記】

 尊加那志をさらに身近に感じられるTシャツを作りました。トートゥシャツ、略して “ T ” シャツです。色は白と紺の2種。どちらもイノー(サンゴ礁内側の浅い海)はヨロンブルーに輝いています。「とーとぅがなし」から始めよう、から「とーとぅがなし」を広めよう、へ。


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山の国に住みつつ与論島をテーマに活動中。なぜ? どうして? その顛末は note 本文にて公開中!

山の国より南の島経由でありがとうを送ります!
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海のない県に暮らしつつ海を想う日々。台風情報はついつい島を気にしてしまいます。