雪女のアクセサリー

一晩明けると一面の雪が地平線の終りまで続いていました。

私はアクセサリーの素材がいっぱいできて歓声をあげました。

やっぱり降り立ての雪が一番綺麗だと思うのです。

私はさっそく雪を舞いあがらせました。

「どんな形にしようかしら」

雪を集めて宙を回らせているうちに、この子はブレスレットにすることにしました。雪を小さく固めて息を吹きかけます。そうすると、雪玉が透き通っていきました。それだけではつまらないので月の光を集めたものを雪玉の中に込めました。そうすると月の輝きと雪の輝きがうまいぐあいに調和しました。このブレスレットは月と雪のイメージで作りましょう。私は同じような雪玉をつくり氷の糸でつなぎ合わせました。

さっそく氷の机の上に置きました。

次に雪でイヤリングを作ることにしました。今度は秋に収穫しておいた紅葉の葉っぱのエキスを雪につめて六角形のクリスタルをつくり。温かみのあるイヤリングができたのでうれしくなりました。

私は雪でどんどんアクセサリーを作ります。透き通った雪で作ったアクセサリーは吹雪によく似合いました。私は氷で作った棚に自分の作品をどんどん並べなした。ネックレスやティアラもほれぼれするほど綺麗でした。

私はお客さんを待ちました。このティアラなど、花嫁さんにとてもお似合いですよ、このネックレスは雲の端切れをきれていますので空のようでしょう。

けれどだれもお客さんは来ませんでした。こんなに綺麗なアクセサリーを作っても人間は来てくれません。私は悲しくなって店じまいをしようと思いました。手に取って自分の作品を見てみても、美しいと思います。けれどどうしてだれも手に取ってはくれないのでしょうか。

雪のアクササリーを雪に戻していると、車のエンジン音が聞こえました。車はとまり、中から女性が出てきました。分厚い防寒着で毛皮がついたフードを着ている女性でした。

「やあ貴女はお噂の雪女さんかな?こんなに雪をふらせて困ったさんだな」

「そうですか?でも素敵でしょう」

私は残っていた紅葉の葉っぱのエキスを詰めこんだイヤリングを見せました。

「ええたしかに、綺麗ですけれど」

その女性の顔をみていると紅葉のイヤリングが似合う気がしたのでプレゼントする気になりました。

「これ貴女に似合うと思うの。差し上げるわ」

私は紅葉の色のイヤリングをその女性の耳につけてあげました。思ったとおり紅葉色のイヤリングはその女性に似合っていました。

「まいったな。耳が冷たくて千切れそうだ」

「どういうことですか」

女性は少し首をふって、自分の耳たぶをさわりました。するとイヤリングの雪の留め具が溶けてしまって、イヤリングは雪原に落ちてしまいました。

「せっかく美しいイヤリングでつけていたかったけれど、雪で作ったイヤリングは人間には冷たくて、体温で溶けてしまいます。綺麗なのはわかるんですけどね」

女性の耳たぶは赤くなって凍傷になりかけていました。

「そうなのですか―――私はただ綺麗なものを差し上げたかっただけなのです」

綺麗なアクセサリーを作って差し上げると、喜んでくれるとばかり思っていた私には衝撃的でとてもかなしくなって立ち尽くしました。

「どうですか、雪女さん。雪以外でなにか作ってみては」

「ええ―――でもやはり私は木の実や貝殻のネックレスはさほど作る気がしないのです」

女性は手袋を外し、自分の首元からネックレスを外して手のひらに乗せて出しました。

「まあそれは」

私は興味を惹かれました。氷のように透き通っています。けれど水晶ではありません。なかにはキラキラと星や花が閉じ込められていました。

「それはなんでありますか」

女性はネックレスを私の手に乗せてくれました。氷のようなのに冷たくはありませんでした。

「これはレジンという素材で私が作りました」

「レジン?とはなんでしょう」

「樹脂です。樹脂を固めて作ります。よかったら私の教室に来てみませんか。雪で作ったアクセサリーは人間には冷たすぎて見ていることもできませんが、樹脂でつくれば貴女の作品なら喜んで買い求められると思います」

女性は白い息をはいてぶるっと震えて手袋をはめ直して足ふみして居ました。私は吹雪をとめるように天にお願いしました。吹雪がやむと女性はほっとしたような顔をします。

私は女性の教室に興味がわいてきました。

「私、貴方の教室にいってみたいわ」

女性は私の胸にネックレスをつけてくれました。

「では車に乗ってください」

「どこに行くのですか」

「札幌です。私、そこで住んでるんです。ああ。私の名前は陽子です。太陽の陽に子供の子です。あたなは」

「名前?さあ」

「うーん、雪女さん、はなんだかな。そうだ雪子さんにしましょう。さあ車に乗ってください。雪子さん」

私は陽子さんの車に乗りました。車に乗ると自分が冷え切っていたことに気がつきました。雪子という名前になった私は陽子さんと同じく暖房が嬉しく感じました。私はそうして陽子さんと札幌に行くことになりました。

「雪子さん、吹雪かせないでね」

「もうそんなことは出来ません。それより、これはどうやって作るのか詳しく教えて」

「もちろん。いっぱい教えてあげるよ。雪子さんはセンスがいいからみんなきっと欲しくなるね。

「そうだとうれしいわ」

そうだ一番最初に作ったのと一番きれいにできたのを陽子さんに差し上げようと思い、私は陽子さんに頂いた熱いお茶をいただいて雪原にさよならしました。