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途上国ベンチャーで働いてみた:デザイナー常時募集中(通算90日目)

バングラに来てからずーっと悩んでいること、それはクリエイティブデザインを任せられるデザイナーが見つからないことだ。

自称デザイナー、という人がいないわけではない。
現に、この職場にも一人、いや2019年の時点では二人、デザイン担当のローカルスタッフがいた。
一人は算数が苦手でCVR(コンバージョンレート)が計算できないコールセンター兼FBマーケのリーダー、もう一人はComputer Science出身なのに同チームのアシスタントをしている女の子だった。

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リーダーの彼は、本当に優しくて最高のボケをかましてくれる気のいいスタッフで、初対面なのに「ところできみは何歳?、、あ、いや、女性に年齢を聞くのはあまりよくないって知ってるんだけど、えっと、えっと、、」などとストレートにかましてくるタイプ。この写真の時も、「君にこの自家製ピクルスを食べてほしいんだ..!」と言って包装紙に私の名前を書こうとしているところ。そんなキャラクターゆえに皆からいじられ愛されていたが、残念ながら仕事のできなさにかけては秀逸だった。

FBポストの制作は彼とアシスタントの彼女に任されていたが、一つのポスト案がCEOに承認されるまで、10稿ではきかない数のドラフトがボツにされる始末。
CEOの要求が高いわけではない。
記載されたコールセンターの番号が間違っている、営業時間が間違っている、ロゴが写真にかぶっていて見えない、ロゴのカラーが微妙に本物と違う、写真の縦横比がおかしい(いわゆる雑コラ......)、素材の背景が部分的に透過になっていない、そもそもの色遣いがとてつもなく見づらい、英語の文法が間違っている、翻訳後のベンガル語が間違っている、etc etc etc...............................................................

思い返せばきりがない。
そしてまた、一度の修正にとんでもなく時間がかかり、挙句に指示した箇所が直っていないこともザラだった。。

2019年6月以降、バックオフィスの役割で入ったはずの私だったが、気が付けばこの困ったデザイナーチームの面倒を見ながらFBマーケティングを見直す役割を負っていた。
「日本式健康診断サービス」「値段」「バングラ人医師の顔」の3点セットのデザインが一番反応が良い、という過去1年間のABテスト結果はあったが、エンゲージメントの数字は良いもののかけた広告費に対して実際の来店客はほんの僅かだったことから、この際と思い、日本人医師の顔を出したり、健診に含まれる検査名を出したり、はたまた人々が怖いと感じる病気名を前面に出したりと、さまざまなクリエイティブを試すことにした。

が、一回一回のクリエイティブを作るのにかかる工数、そして実際に投稿した後にFBユーザーから届くコメントやメッセージへの返信を適切な内容で行えるようマネージする工数は想像を超えていた。
一つのポストに40-50のコメントやメッセージがついても、英語には英語で返す、ベンガル語にはベンガル語で返す、といった基本的な対応を期待することさえできず、一件ずつ回答案を作り返信漏れがないか数分おきにチェックしクレーム案件には対応策を考え、回答マニュアルをつくるところまで手が回らないどころか朝から晩まで他の仕事がいっさいできなくなった

これはもう諦めるしかない、外部の人材を探そう、、と腹をくくり、広告代理店と名の付くところにいろいろと足を運んだが、どこも見積もり費用が高い割にクリエイティブのサンプルがお粗末で、なかなか決められない。
自称マーケティングアドバイザーという人にも話を聞き、「日本式」を打ち出すマーケティングについて散々批判的フィードバックを頂戴したりしたが、目的のクリエイティブディレクションや制作ができそうな人にはなかなかお目にかかれなかった。

その後、顧客向けのサービス案内冊子を作ることになり、どうにかこうにか探し当てた自称クリエイティブエージェンシーに制作を依頼し、インターンRくんと共にページ割案をつくって持ち込んだが、最終的にはエージェンシーのオフィスに深夜まで同席して指示を出し、挙句の果てにはうちの困ったリーダーとアシスタントの女の子と共に自社で細かい手直しをしなければ完成しないというありさまだった。
日本の本社や株主からはたいへん評判の良い冊子が出来上がったが、正直なところ二度とやりたくない仕事5本の指には入る気がする。

2021年7月現在、アシスタントの女の子が2年を経て成長し、コールセンター業務はだいぶ任せることができるようになって助かっているが、いまだにこれだ!という現地のデザイナーやエージェントには出会ていない。
ベンガル語ができる素敵なデザイナー、常時募集中

(続)

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