新人コピーライター、斬新な食レポからオノマトペの効果を実感した話
最近、日本語ならではの表現について面白いと感じる出来事がありました。
お昼の情報番組を見ていた時。コーナーは「秋の新作スイーツ特集」。次々紹介されるスイーツにおいしそう…!!とくぎ付けになっていたところ、さつまいものスイーツを食べたタレントがこんなふうに食レポしました。
「…ん!おいしい!なんだかこう、ねちょねちょしていて、おいしい!」
ね、ねちょねちょ?!
共演者に「食レポ下手か!(笑)」「語彙どうなってんねん」とツッコまれており、おいしそうとは思えない斬新な表現に私もつい吹き出してしまいました。本人に悪気は一切なく(とてもおいしそうに食べていました)、感じたままに表現したのです。
このように物事や動作の状態を表すときに、音や感覚を用いて示す言葉を「オノマトペ」と言います。古代ギリシア語の onoma(名前)と poiein(作る)が融合してできた「onomatopoiia(オノマトポイーア)」が語源です。
日常的に私たちはたくさんのオノマトペを目に耳にし、自然に使いこなしていますが、実は細かな分類や使い方のコツがあるのを知っていますか?
今回はそんなオノマトペについて詳しく紹介します。
いろいろなオノマトペの分類
食べたものの味や感想を瞬時に具体的な言葉で伝えるのは難しいですよね。質感、温度など絶妙な尺度はさらに高度。
私たちはそれらを的確に伝えるためにオノマトペを使いますが、表すものによって分類がされています。
先ほどの斬新な食レポ「ねちょねちょ」は食べ物(無生物)の状態を表すので「擬態語」になります。ミスマッチではあるものの、食感を伝えるために擬態語を用いたのは適切だと思います。おかげで食感はダイレクトに伝わってきましたからね。でも、ねちょねちょというか「ねっとり」が個人的にしっくりきます。
日本語にオノマトペが溢れているワケ
実際、数としていくつオノマトペが存在するのか気になったので調べてみました。オノマトペ研究家の藤野良孝さんによると、日本語オノマトペ辞典に収録されているものだけでも約4,500語。収録されていないものも含めるとなんと約1万語にもなるのだとか。ちなみに英語のオノマトペは1,000から1,500語、フランス語は600語程度で日本語のオノマトペの多さは一目瞭然。
多さの理由についても藤野さんはこのように解説しています。
同様に、「聞く( ガツガツ / ノリノリ / コソコソ )」「話す( ペラペラ / ワイワイ / ヒソヒソ )」など、一つの動詞でもオノマトペでバリエーションを持たせることで、異なる状態を上手く伝えられているんですね。
オノマトペ=語彙力のなさの現れ?
「言葉の引き出しが少ないから擬音ばっかりになる」という人がいます。
何かを説明したり伝えるときに言葉が出ず、擬音語や身振りに頼ってしまうことを意味しているのだと思いますが、オノマトペ(擬音)を使うこと自体は「語彙力がない」わけではありません。誤った使い方をしている場合がほとんどです。
誤った使い方①伝えるべき要素を省いている
オノマトペは表現の定義があいまいなため、正確な情報を伝える場合には具体的な要素が欠かせません。
道をたずねた時に「あのへんをピュッと曲がって、ごちゃごちゃした大通りに出るからその道をぐーっと進んでいくと着くよ」と言われても不安になります。方向や時間の目安、地名や目印になるものを伝えつつ、オノマトペで距離感や雰囲気の感覚を補うとわかりやすくなるはず。料理のレシピやスポーツの指導などでも同じことが言えますね。
誤った使い方②使いすぎている
情景を鮮明に伝えられるけれど、使いすぎると発言や文章自体に落ち着きがなく幼稚な印象に。ここぞという部分で使うと記憶に残りやすくなります。
誤った使い方③捉えた音の表現が正確でない
感覚や音を模倣する言葉なので、正確に捉えて表現することが大切。ここがズレると違和感が生じ、内容が入ってこなくなる場合も。
オノマトペは語彙力の低下ではなく、効果的に使えば感覚や状態をいきいきと表現することができます。斬新な食レポのおかげでオノマトペの影響力の強さを実感しました。
オノマトペで解像度の高いコミュニケーションを
オノマトペは相手の解像度を高められたとき、使った効果があると言えます。
食レポに限らず仕事で指示を出す時、何気ない会話でも、自分の思いを食い違いなく届けられると嬉しいですよね。
①伝えるべき具体的な要素を加える、②適度な量、③正確な音のポイントを押さえてぜひ活用してみてください。
言葉だけで情景と情緒を鮮やかに映し出すことができるのは日本語の美しさとも言える特徴。オノマトペの重要性を再認識し、豊かな表現でコミュニケーションを深化させたいですね。
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文:マキ
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