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イーサリアムの魔法使いたち

4月の後半はオランダに来ていて、Devconnect(デブコネクト)というイーサリアムのカンファレンスに参加していました。今回Devconnectの終盤に開かれたOG Council というイベントを運営していて、折角なので簡単にイベントの様子を紹介します。ドキュメンテーション目的のブログですが、読んでくださった方には少しでも参加した気分をおすそ分けできると嬉しいです。

オランダで開催のDevconnect 

Devconnectは1つのカンファレンスというよりも、たくさんのイベントの集合体で、1週間の開催期間中に街中でいろんなイベントが企画されていて、参加者は個別に興味があるものに申し込んで参加するスタイルでした。そしてイベントのハブとしてアムステルダムの中心地にコワーキングスペースが用意され、カンファレンスの合間や仕事をしたい時にふらっと立ち寄れるようにセッティングされています。

ちなみに私はこのイベントに仕事ではなくて個人のサイドプロジェクトという位置づけで参加しています。職場の人にもこれはライフワークだから絶対参加すると伝えて、リモートワークしながらの自費参加です。

https://devconnect.org/schedule

Fellowship of ETH Magicians

今回紹介するのは23、24日の土日に開催されたOG councilというイベントです。この集まりはFellowship of Ethereum Magicians(イーサリアムマジシャン)という EIPやイーサリアムに関するディスカッションをするためのオンラインフォーラムが起点になっています。

https://ethereum-magicians.org/

イーサリアムマジシャンのイベントは大きなイーサリアムのイベントやハッカソンなどのサイドイベントとして開催されることが多いです。私は2017年にシンガポールで初めて参加してこのフォーラムの存在を知りました。

コミュニティの有志で開催・運営されており、運営にかかるコストは全て寄付金と有志メンバーのコミットメントで賄われています。

1日目、いきなりガンダルフ登場

カンファレンス1日目の朝はオープニングセレモニーから始まります。

受付を済ませてコーヒーを飲みながらしゃべっていた参加者がメインルームに集まり席につくと、ゲストスピーカーである綺麗な白髪のロングヘアとロング髭をたくわえネームタグにガンダルフと書いてある人物が登場し、オープニングスピーチがスタート。

オープニングのゲストスピーカー登場

まずこのオープニングに30分くらい時間をとってあるのですが、ゲストスピーカーは「今日の主役は私じゃなくて参加している皆さんです」と言って3分くらいでステージから降りてしまい、そしておもむろに近くにいる参加者にマイクを渡しました。

そして参加している人たちは気づきます。会場に居合わせた全員が今日このベントに参加して何を得たいか一言話すまでオープニングセレモニーが終わらないことに・・(笑)

会場でマイクを回して全員が簡単な自己紹介と今日の抱負をコメントしたら、今度は1日目のスケジュールをみんなで決めるプロセスが始まります。そう、このイベントは世界中からコア開発者やEIPコントリビューターを集めておきながら、タイムテーブルはほぼ白紙のまま当日を迎えるんです。

見てください、Open slot(何も決まっていない枠)の多さを!

朝、受付をすませた参加者が今日話したいことを付箋に書いてホワイトボードに張り付けてくれているので、それを見ながら、ざっくりその場で付箋をカテゴリ分けして(この時点でEIPの番号を見てカテゴリ分けするの難しいのでコアな参加者が自主的にリードしてくれる)、次に各セッションをリードしたい人がホワイトボードの横に立って「こういう事が問題だと感じていてみんなと話したいんや!」と軽く内容の補足をします。

こんな感じで

それを聞いて今日どんなテーマのセッションがあるのかざっくり把握したあとで、みんなが小さいラベルステッカーを使ってどのセッションに参加したいと思っているか意思表示をします。

こんな感じで

このテーマ一覧とみんなの関心度合いを示す投票シールを見ながら、人気になりそうなセッションの時間が被らないようにセッションの順番と部屋割りを組んでいきます。

10時過ぎにイベントをスタートしているのでタイムテーブルが出来上がる頃にはほぼランチタイム。一旦休憩を挟んで午後に1時間×3セット×5トラックでセッション開催します。

ディスカッションの内容

1日目はアプリケーションに関わるトピックを受け付けて、2日目はもう少しプロトコル寄りになっています。

1日目のスケジュール、投票が終わった後はこんな感じに落ち着く
2日目のスケジュール。ボランティアスタッフが1名このホワイトボードの横で待機していてどの部屋行けばいいのか案内してます。2日目はすごく流動的だったのでこのホワイトボードの情報が全て。

ディスカッションのメモはフォーラムに後ほど投稿される予定です。今のところディスカッションレポートが出てるのはこれだけですが、コンパクトにまとめてくれているので読んでみるのおすすめです。
The Mergeの後、既存のテストネットはどうなるのか?

そんなこんなでグループディスカッション×3セット済ませたら、コーヒー休憩を挟んで全員メインルームに再集合。1日の締めも、また全員でマイクを回してどんなディスカッションに参加して、どんな話をしたのか、学んだことや面白いと思ったことを共有して終わります。(難しいことをいう必要はなくて、ただ全員参加の精神で各々の感想をシェアします)

カンファレンスでカンファレンスをしない

有名な人がステージで話している様子はわざわざ旅費を払って現地に行かなくてもだいたい後でYouTubeにアップされるので、どうしても生で話を聞きたかったりQ&Aに参加したいなどの目的が無ければ正直コスパが悪いですよね。

カンファレンスの醍醐味は、その場に居合わせた同じ志を持つ人たちと議論したり意見を交換したりしながら学びや繋がりを得ることだと思います。

せっかく世界中からみんなが集まる貴重な機会だからこそ、あえてカンファレンスをしないのがイーサリアムマジシャンの基本的な方針で、会場に足を運んだその場にいる人たちの話したいことや熱を最優先に運営していきます。私自身初めて参加した時は、このフラットで全員参加型の形式に驚いたのですが、クリプトコミュニティらしくて個人的にはUn-conference(カンファレンスじゃなくする)スタイルから得られるものは多いと考えています。

ディスカッションのフォーマット

とにかく「誰かの話を聞く」んじゃなくて、お互い話の中から何かを得ることにフォーカスしたスタイルになっています。各ディスカッショングループ(リング)にはリーダー(ファシリテーター役)が割り当てられていてマイクを回しながら話します。大きい部屋だと数十人、小さい部屋だと10人くらいで話していました。イベントのフォーマットは毎回違うので今後参加される方はまた違う形式を体験されるかもしれません。

そもそもイスの並べ方からこんな感じ

運営・ボランティアチーム

この緩いイベントと運営スタッフの動き方についてです。その場の雰囲気重視のイベントを大勢でやるのは、運営にとっては若干チャレンジングでした。運営コアチームは私とアネット(普段はNFT Standardのとりまとめ兼 ETH magiciansフルタイムでやっている人)の2人で事前のプランニングを進めて、当日私は会場ボランティアチームとりまとめ、アネットは全体進行というざっくりのタスク分けになっています。

ボランティアメンバーはざっくり下記の要領で動いていました。

レジストレーション役:Devconnect全体のガイドに沿った受付のオペレーションをしながら参加人数の管理。

コーディネーション役:スケジュールが書いてあるホワイトボードの横に誰か一人立って案内をする&そもそもこういうフォーマットのイベントだと知らない参加者に軽く説明する&あとからディスカッションしたいことが出てきた人に部屋を割り振る。

参加&コーディネーション役:普通の参加者と同じようにセッションに参加しつつ、ホワイトボードで決めたセッションが本当に各部屋で行われているのか(その場の流れや熱気でたまにトピックが変わっていたりする)をホワイトボードの人に伝えたり、普通のカンファレンスセッションがあると思って話を聞きに来た人にとっては想定外の状況が広がっているので困惑している人がいたら声かけてあげたり、適宜サポート。

いろんな国から来てくれるボランティアを10人ちょいくらい募集してたのですが、アムステルダム大学の学生さんからコアな開発者までいろんな人がボランティアとして申し出てくれて(しかもほぼちゃんと当日に約束通り来てくれて)感激しました。エコシステムへの貢献方法はたくさんあって、みんなそれぞれ自分のやりたいこと/できることを少しずつやるスタイルはクリプトコミュニティの素敵なところです。

全員で魔法を起こす

非常にユニークな形式でのイベントなので思ってたのと違って途中で帰ってしまう人もゼロではないですが、こういう参加者で作り上げるイベントが1つくらいあってもいいと思います。おおむね参加者の方からは有意義な時間を過ごせた、カンファレンスで若干息苦しくなってたところから解放された(笑)とのフィードバックをいただきました。

ディスカッションの中ではそもそもEIPのプロセスに問題あるんじゃないの?提案したあとレビューもらうまでが大変なんだが?みたいな話やユーザーエクスペリエンスの観点で良いと思うプロダクトはどれ?どこまでワンクリックでアクションできるようにするべき?といった話やたまたま居合わせた金融機関出身の人たちがDefiアダプション相談会やったりしていて本当に様々なレイヤーで様々な課題についてのディスカッションがありました。

Web3が大きなトレンドワードになり、エコシステムもそこに乗っかっているお金の額もすでに巨大だけれど、これを作り上げて、進めて、広げていくのはクリプトに関わる一人ひとりの貢献の積み重ねなのだと改めて実感します。

最後に、イーサリアムマジシャンのディスカッションに興味がある人はこちらを見てみてください。誰でも参加できますので、まずは興味があるトピックにいいねをするところから始めてみるのがおすすめです。
https://ethereum-magicians.org/D

シールがついてるやつ:EIP 1271 、EIP3074、EIP2938、EIP726
その他:2426、1559、11153、3382、3756、2539、2803、3436、2593、クライアントの多様性に向けたインセンティブ設計、NFTの長期的な価値 (写真に写ってるのほかにももっとたくさんありました。ここに載ってるのは集まった人が話したいと思ったトピックの一例です)


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