【漫画紹介】宝石の国 完結 1~13巻
11/22(金)漫画版の宝石の国の最終巻が発売されてしまった・・・・
されてしまった・・・・のである。私からしたら。
1~10巻くらいまで、まじで?どうなるの???ふっふふふおーーーーっ世界観があかされていく!!やば!!!感じだったのですが、12巻からもう読むのがつらくてねえ。。。。(鬱展開というわけではないよ。)いろいろ考えさせられる漫画です。
市川春子先生そして雰囲気はドラクエのルザミ
まじで向き不向きのある作家さんで読み手に相当な(ある程度の)知性というか、教養というか、深堀りしたいタイプかどうか、漫画に慣れているか、を選ぶ。バトルスポーツ漫画とかが好きな人はなんなんな!ってなると思うよ。
雰囲気も、空気感もかなり独特なので下記のような雰囲気が好きな人はドンピシャであると考えます。
●北欧の冬の雰囲気や、図書館などの静謐な雰囲気が好き
●誰もいない美術館などの雰囲気が好き
●ドラクエ3のルザミ島が好き
●ラーミアの隣にいる巫女っぽい子が好き
・・・後半はずれたわね。
あらすじ(適当かつ概要)
遠い未来の話。どこかの白い島である。島の中に、白い石造りの建物がある。
「先生」と呼ばれる僧侶の恰好をした男性風のキャラと、宝石でできた見た目中学生~20歳くらいの美男?美少女?たちがいる。宝石だから性別がないの。顔はみんな美少女だけど、体は少年っぽい。中性的ね。
白い島は、月に1~2回、月人とよばれている、意思のない白い像に空から襲撃をうける。襲撃をうけて宝石が傷つく=隙ができて粉々にされて、月に宝石たちが連れ去られる。月人たちは宝石が好き。
宝石たちはそれぞれ意思がある。(石だけに・・・)名前は宝石の名称である。
島の宝石たちは常時20人~30人くらいかな?いて、白い島の端っこにある浜にごく稀に打ち上げられる宝石のかけらがどんどん成長したら意思をもって宝石人形?になり、先生や先輩宝石が暮らす建物の中で教育をうける。教育課程でいろいろなものを知って、意思をもっていく。
そもそも宝石は不死である。そうですよね。アテクシの結婚指輪のダイアモンドも今も「生きている」もの。なので劇中の宝石たちの生活も驚くほど時間の概念がない。普通に「あれって100年前だっけ?」「ん~忘れちゃった?300年前くらいじゃない?」みたいな。そもそも生まれから石としてから人形になるまで百年~数千年かかってますしね。
一定の教育が終わったら、性格、趣味、志向や、宝石自体の硬さで「仕事」といっていいかわからないが役割が与えられる。
序章~中盤まで
1巻の表紙のボルツ(上にいる髪が長い子)
ダイアモンド(下にいる髪がおかっぱの先輩)
たちは硬度が高い(9~10)ので「戦闘」という役割を担う。
月人からきたときに島の宝石を守るのだ。
主人公 フォスフォフィライトは硬度3半
転ぶとすぐに割れる。=戦闘できない
かといって、手先も器用ではなく、繕いものやものを書いたり読んだりするのも苦手。フォスは劣等感がある。
先生にフォスの仕事は「博物誌を編む」をしなさい、といわれる。
貴重な紙に、今までにない、いろいろな発見や、まだ本に書かれていないことをメモしていくのだ。フォスは「え~地味だよ~」といって嫌がるが、まあ~がんばるぞ!となってフラフラと散策しているとき夜の見回り当番(夜に襲撃があったことはないので、本当はいらない)のシンシャと出会う。
シンシャは体から銀色の毒液を無尽蔵に出せる能力をもつのだ。シンシャは優しく賢すぎる性格で自分がいるだけでみんなに迷惑がかかると思っていた。触ると毒液がでて相手(宝石)の体が黒く水銀毒におかされてしまう。不死の宝石でも修復能力はないので、削るしかない。
それがイヤで、みんなが暮らす建物から出て島の端で1人で暮らしている。
シンシャと会ってからフォスはいろいろ考える。2人での会話時、黄昏時にはこないはずの襲撃がくる。「その薄荷色は月人好みだ。お前はいいな、敵にすら愛されて」
シンシャはフォスと会話をする。
シンシャ「俺は此処で、攫われるのを待っている。月でなら俺に価値を付けてくれるかもしれない。待っているが来ない」
フォス「夜の見回りよりも楽しくて君にしかできない仕事を僕が見つけてみせるから、月に行くなんていうな」
フォスは博物誌を編む、シンシャの仕事を探すことを考える。
この辺くらいまでが多分1巻よね。んでアニメだと2話か?
アニメだと4~5巻くらいの内容まで入っているのでそのあたりは飛ばします。
●アドミラビリス族のウェントリコスス(喋るかたつむり的な生物)と会う
●かたつむりを海に返す途中、フォスは足を失う
●冬の仕事をする(みんな光が好きなので冬は寝ます)アンタークとであう
アンタークは寒いほど強い珍しい宝石。
●アンターク先輩と仲良くなるフォス。流氷割りの途中で腕も失うフォス。かわりの金属を探しに浜にいくが月からの襲撃にあう。
アンターク、フォスをかばって月に連れ去られる。
この辺からフォスの意識がかわる
中盤の展開
●フォス、いろいろな宝石と結合して強くなる・・・けどそれでいいの?
●パパラチア先輩とあう途中、図書館の仕事をしているゴーストクオーツ(のちのカンゴーム)とであう。
●月人からの襲撃で今度はフォス、頭をうしなう(意識は石の中にいる微生物・インクルージョンがもっています)
●頭をなくしたことで、カンゴームの大親友ラピスの頭とフォスを結合する手術が行われる、ラピスはフォスとは逆に、頭以外の部分を月にもっていかれたのだ。
●インクルージョンがなじむのか。目覚めてもそれはフォスなのか。わからないまま102年。フォスは目覚める。顔はラピス、頭のめぐりもラピスぽく賢くはなったけど性格はフォス。
目覚めて「あ~僕って美人~!!!!」
ルチル(医師宝石)他、みんな「このふてぶてしさ・・・フォスだ」
●ラピスの影響で賢くなったフォスは月人について色々と考える。シンシャとの約束を果たすのだ。
●月人について興味をもつフォスはだんだん周囲と距離があく
●カンゴーム(親友)と共謀して月に行く計画を立てる
この辺までが8巻くらいかな?
最強にネタバレ↓ ってかWikiがもう全部ネタバレしてるけど
----------ネタバレ
●フォス、月にいく。月は不老不死の月人たちの大宴会
●月の技術に驚く。江戸時代と令和くらいちがう。
●月人普通に話す。なんならおもろい。
●月人の王と話す
●なぜこうなったか話す
●キーワードは「金剛先生」と「にんげん」
●金剛先生の「祈り」で月人(もともとはにんげんの魂だったもの)を成仏させることができるが、現在の先生は壊れていて(人を愛する機能の不具合ですね)その役割を果たせていない
●月人ははやく成仏したい。そのため宝石を連れ去って教え子を愛する金剛先生を刺激する「長期的消極的戦略」を行う。
この後はあんまりうまく説明できんのでぜひ買ってよんでくれ
やっと感想である。もちろんネタバレあり。
初期のフォス・・・不器用でふてぶてしく、かわいらしくみんなに可愛がられる後輩キャラ。おバカと言われてもその薄荷色は月人にも宝石にも大人気。シンシャ、アンタークと心を通わせる。
中期のフォス・・・アンタークがいなくなったことで戦闘能力は上がったがどうしても精神的には不安定。
後期のフォス・・・ラピスの頭でかなり賢く「現状で一番ベターな方法」「月人の代表者(エクメア)との交渉」を行う。
その交渉途中に、金剛先生を裏切る算段をつける。
でも、それって・・・・・初期のフォスにはなかった「狡猾さ」であり、良くも悪くも初期のフォスとはもう別人なのである。
フォスは宝石の中で異色だった。劣等感、不器用、嫉妬。そんな「人間らしさ」が親友たちの死(死んではないけど月に連れ去られる)を通して精神が「成長している」のだ。これぞ人間。
月人の狙い通り、金剛先生の「祈る」機能はフォスに受け継がれた。
何万年もの時を超えて、月人の悲願だった「成仏への祈り」
フォスは金剛先生の機能をインストールする。1万年かかる。
その間、月は宝石たちを月人へ変えた。
これまで月に連れ去られた仲間も修復できるものはした。
シンシャもフォスに感謝している。もう毒液はでない。
地上はフォスが1人で祈りの準備を始めていた。
もうフォスじゃない。金剛先生の中に入っている「博士」の意思である。
12巻、フォスは祈る。月人はみな、もと宝石の月人を含めみんな成仏する。フォスは1人になる。
13巻 フォスはフォスの記憶を持ちながらもう別人だった。「にんげん」はもろく、弱く、悲しいもので復活させるべきではないと思っていた。フォスの中に眠る、にんげんのかけらをどう処理したらいいのか迷っていた。
何万年も経過し、昔のように「石が意思をもって話す」ことが起き始めた。フォスは会話を楽しんだ。「ぱすぱす・・・」「ぽくぽく・・・・」
太陽は役割を終えたように、地球に衝突をはじめる。
フォスはフォス以外の石たちを脱出させようとした。端折ってるけど金剛先生のお兄さん機(わかりやすく悪意も持ち合わせている人間らしい機)も一緒に。
お兄さん機の機転でフォスのかけらをもって、宇宙へ飛び立つ。
生まれる。死ぬ。祈る。祈られる。価値。役割。個性。善悪。
宝石の国は、意思をもったきれいな石たちの強く儚くそして少しせつなくだれも不幸になっていないのにフォスがいないだけで何かちょっとこれってどうなんだろう・・・・と考えさせられる、非常に秀逸な作品です。
そして人間らしさ、善の部分と悪の部分、それらについて哲学的な問いがかわされている。
祈る お葬式って成仏するように祈りますよね。故人をしのんで祈る
祈る 人間が、もともと人間であった方に敬意をしめしながら、祈る
魂が成仏しますように、輪廻の輪に戻れますように、あの世で元気にやってますように
祈る 祈る側は地球に残る 取り残されたわけではない。役割をもらってうれしいの。ただ1人だけフォスは祈るために、かつてできる仕事がない、といわれたフォスがフォスしかできない役割を果たしたのだ。
果たしてそれは、善なの?悪なの?
ハッピーエンドって何?