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テストプレイは行動の観察が重要

ミヤギユウさんがテストプレイについて書いていて興味深いので、のっかって米光一成も書く。(もちろんテストプレイの方法はさまざまなので、自分にあった方法でやろうね、ってのは前提)


テストプレイは大切

ゲーム製作においてテストプレイは大切。作っていると、だんだん夢中になりすぎて製作者の視野が狭くなる。
シューティングゲーム制作時によく起こるが、めちゃくちゃ難易度が高くなっていても、何度もプレイして自分の腕が上がっているから、それに気づかなること。ステージ1からめちゃ難しいゲームになっちゃうミスが起こる。

以下、ボードゲーム、カードゲーム制作時を事例として書くが、根本的な部分ではコンピュータゲームでも同じだ。


行動を観察する

テストプレイしてもらうときには、「プレイヤーの行動」を観察する。
意見や、感想も、聞く。聞くけど、鵜呑みにしない。
「おもしろい」「なかなかいいね」と言ってくれたとしても、「ありがとう」と思うけれど「よし、おもしろいのができた」とご満悦にならない。そこそこまともにできていたら、「おもしろい」って言ってくれる人は多い。
作った本人を目の前にして、正直に感想を言える人は少ない

だから「行動」を観る。「おもしろい」と言ったあとに、「もう1回やろう」と言って、再度プレイするかどうか。実際に何度もプレイしてくれるか。その行動は、言葉よりも重要だ。
プレイしているときの顔や動作、話しっぷりを観察して、ゲームに夢中になっているか、笑っているか、真剣に考えているか。そういった「行動」こそが、テストプレイにおいて最大の「気づき」を与えてくれる

たいくつそうにしている場面、ちょっと気が抜ける場面、そういったところを行動を観察してとらえる。

間違った行動からゲームの欠点が見える

あと、プレイヤーの「間違った行動」は重要。
マニュアルとコンポーネントを渡して、説明せずにプレイしてもらう。ここで、ていねいに遊び方を説明しない
プレイに製作者は参加しないほうがいい。自分が参加すると、ルールを伝えたり、的確な遊び方に導いたりしちゃうからだ。無意識のうちに避けているプレイ動作を自分がやらないことで、プレイヤー全体にそれが伝わってしまうこともある。
そうなると、おもしろさのチェックにはならない。

まったく知らない状態で、ゲームだけ渡して遊んでもらう(ゲームをリリースしたら、多くのプレイヤーは、そのような状態でプレイすることになるのだから)。
このとき、プレイ方法を間違ったり、想定した遊び方をしてくれないケースがある。それは、改善すべきポイントを指し示している
ルールがプレイヤーの自然な流れに逆らっているのか、マニュアルの書き方が悪いのか、コンポーネントのアフォーダンスが足りないのか。プレイヤーが想定した遊び方をしてくれるように改善すべきだ。
そのためにも、テストプレイしてくれるときに、製作者は「説明してはいけない」。ポンとゲームだけを手渡して、行動を観察するのだ。

テストプレイメンバーの多様さが重要

テストプレイするメンバーを固定化しないことも大切。なるべく「まったく初めてプレイする人」とテストプレイする機会を何度か設ける
いつも同じメンバーでテストプレイしていると、プレイヤーが製作者の意図の理解に慣れてくる。良きプレイヤーになって、楽しめてしまうケースがでてくるからだ。
テストプレイヤーのメンバーを集めるのはたいへんだけど、いろいろなタイプの人とテストプレイすることがとても大切。「ふだんはゲームなんてしない」という人に意識的にテストプレイしてもらうようにしている。

感想と意見で自分の思い込みを外す

感想と意見も、参考にする。
プレイヤーは、正直な感想を言うとは限らないし、感想をうまく言語化できるとは限らない
だから、なぜ、その感想がでてきたのかを探ることが重要(そのためにも行動の観察を)。
意見も、とても大切。「その意見は間違ってるんだよな」と思わずに、いったん無条件に受け入れる。そうやって自分の思い込みを外すためにも、しっかり検討する。
「ありえない!」って意見ほど、それを検討して効いてきたとき、威力を発揮する。ありえないことが組み込まれた新鮮なゲームになる可能性が高い(もちろん、検討して、なんぼなんでも無理ってなることも多い)。

テストプレイでブレないためにビジョンシートを

テストプレイででてきた意見や感想、自分での発見は、いま作っているゲームに組み込むかどうかは、しっかり自分で判断しなければならない。

意見や感想をもらって、すぐにそのまま従ってはいけない。
学生がゲームつくるときに他人の意見を取り入れすぎて、凡庸なものになったり、方向性がちぐはぐになったりするケースは多い。

それまでのゲーム制作の過程や、ゲームの目指す全体的な方向性は、他の人は掌握していない。それが分かっているのは自分だけだ。と言いたいところだが、自分でも分からなくなることがある。
だから意見や感想を取り入れるかどうか判断するためにも、ビジョンシートを作るべきだ。テストプレイ開始以前に、ゲームの方向性がブレないように、自分が目指すゲームの方向性をまとめておくといい。
1枚ペラで、ぱっと分かるように。何かを検討するたびに、それを見返す。方向性から外れる意見はいくら良くても、そのゲームには組み込まない(また別のゲームとして考えること)。

心の中だだもれテストプレイ

もうひとつ。オインクゲームズの佐々木さんに教えてもらったのが、プレイしながら心の中だだもれでしゃべってもらう方法。プレイが終わってから感想を言ってもらうんじゃなくて、プレイしてる最中に、心の中が漏れてる人みたいに喋ってもらう。
実際にやってみると、おもしろい。
「あー、まだ何すべきか分かってない」「ああ、さっきのまずかったーってのが分かってきた」「もう勝ち目ないっぽいなー、ちょっと退屈かも」とか、みんなべらべらしゃべる。それ言うたら何を持ってるか分かるよーってのも言っちゃうぐらいの勢い。

回数は大切

テストプレイは、最低100回やる。(←このあたり各自調整してください。でも、最低何回やるかっていうのは決めて目標にするといいよー)
『想像と言葉』を作ったとき、テストプレイ用紙を作って、その回数を数えたら100回以上だったので(100回やることで断然良くなったので)、それ以降も100回をひとつの基準にした。(『荒野へ』は、基本1人プレイ、2人プレイでプレイ人数が少なくてテストプレイしやすかったので、もっとたくさんテストプレイしている)
テストプレイをやってブラッシュアップすることで、もともともっている面白さを何倍にもできる。回数は大切。

ただ、これはゲームにもよる。大人数のゲームや、2時間3時間かかるゲームになるとなかなか回数を繰り返せない。マーダーミステリーだと、一回やるとその人はもうできないのでまた別の人を集めないといけない(マダミスのテストプレイってどうやってるんだろう?)。
可能な限り、回数をやるのは原則だと思うが、それ以外の手を打たねばならないときも多々あるだろう。

テストプレイはたいへんだけど、とても楽しい。

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以下、もうすこし詳しく細かいことを記す。

そういう意味では、ミヤザキユウさんとテストプレイ観がけっこう違う。もちろん、それぞれの流儀の違いで、「どちらがいい」「よくない」っていうことではない。テストプレイの方法や流儀が違うから、違うタイプのゲームが生み出される。
意見、感想を切り分けるのは大切。ここまでは、まったく同意見。ただ意見と感想の取り扱いが、だいぶ違う。

意見と感想の取り扱い

ぼくにとって、意見は、「いったん取り入れて、検証できることがら」だ。問答無用でいったん受け入れてみる。検証してうまくいくうまくいかないが明確にわかるので、その結果、取り入れるか入れないかが決まる。わりと客観的な判断が可能だ。
感想も参考にする。けど、取り入れるかどうかよりも、「そう感じるだー」という主観的なことがらとして、大きな方向性が狙い通りにいってるかどうかの検証として使う。
意見よりも感想を重視するという感覚はなくて、違う扱い方をする。

テストプレイメンバーの集め方

100回テストプレイすると言うと、「そんなにテストプレイする機会が持てない」と返ってくる。
たしかにテストプレイのメンバーを探すのはむずかしい。そのために以下のことをしている。

1:テストプレイOKのゲーム会に参加する
2:作ってる者どうしでテストプレイをやりあう(完成直前のものを中心に)
3:いろんな人に遊んでもらうまえに「面白さ」をちゃんと作っておく

3は、継続してゲームを作る人にとって、とくに重要。あの人のテストプレイ会にいくと、最低でもちゃんと遊べるゲームが遊べるっていう状態にしないと、テストプレイに来てくれなくなるからだ。
そのためにも、しっかりと自分の頭でテストプレイしたり、少人数でやってみたりする必要がある。
「面白さ」を生み出す前の特別なテストプレイメンバーグループを作れるとなおよい。

あと、『荒野へ』は最大2人プレイのゲームだったのでテストプレイメンバーを集めるのが楽だったなー。

感想や意見に反論しない

テストプレイして、感想や意見をもらうと、ついつい反論したくなる。「いや、もうそれは試めしてみたのよー」「そこを変えると、こうなっちゃうのよー」とか。ゲームマニア同士のときはいいけれど、そうじゃないときは反論しないほうがいい。
「違うなー」と思っても、いったん受け入れる。受け入れて検証する。検証してやっぱり違ったなー、不採用、でいいんである。
ていねいに検証するまに拒絶しないほうがいい。せっかくのめちゃくちゃゲームがおもしろくなるチャンスを逃すことになるからだ。

マニュアルは必ず作っておく

テストプレイするときにはマニュアルを作ってからにしたほうがいい。これは、テストプレイ時に製作者が説明しないためにも必要だ。
またマニュアルを作ると、欠点がわかるので、テストプレイ前にちゃんと改善ができる。テストプレイしてもらうときには、ある程度おもしろいゲームにしておくのは大切だ(あまりにもつまらないゲームにつきあわせるのは心苦しいだろう)。
またテストプレイ時に、マニュアルに赤ペンでメモを取ると便利。

変更したらまたテストプレイする

当然のことだが、どんなにちょっとした改変でも、変更したらしっかりテストプレイしよう。これ、わりと油断するとミスちゃう。
チップ1つ増やしただけだから、カードの表記場所を変えただけだから、マニュアルの表記を直しただけだから、ってんで、テストプレイするけど「軽く」なんてことにして、あとから後悔することになる。
ちょっとでも変更したら、しっかりテストプレイするといいよ。
*あと、マニュアルも随時修正するクセをつくる。そうすることで、しっかりと変更点を記録として残せるし、どう直したのか失念することもなくなる(テストプレイで細かいところを修正していると、似たルールのゲームを何度も遊んで、どう修正したか混乱することがあるので要注意)。

テストプレイシート

テストプレイシートを作る場合もある。テストプレイ後に、感想や意見を書いてもらうシートだ。ただ、まあ、めんどうなわりに、うまく機能しないことも多いので(喋ったほうが速い)、どうかなー。
最近はあまり作っていない。
*作ってやっている人がいたら、どんなふうにやってるか教えてください。

今度の課題

たとえば、プレイ年齢が「13歳以上」だったら、全員13歳でテストプレイしてもらう必要があると思う。けど、なかなかむずかしい。
プレイ年齢を決めるときに、その一番低い年齢の人に遊んでもらうっていうのはやってもらっているが、大人に混ざってやると、大人がやっているのを見て理解してるだけであって、全員がその年齢だったら、マニュアルを読んでルールを理解できるだろうか、っていうのは、そうとう怪しい。

あとテストプレイ、楽しいんだけど、たいへんはたいへん。製作過程のなかでテストプレイに、いちばん時間とコストがかかってしまう(あ、製造費はのぞく、ね)。
このあたりも、もうすこしストレートにうまくできるようにしていきたいなー。テストプレイ環境を整えられるといいなーと思う。

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