今、電子書籍作家が死んだら

コーラで酔っぱらい気味で書く。というかでないとやってられない。

電子書籍を私は100冊以上発表している。でもこれ、私がもし死んだらどうなるか。

はい、全部消えてなくなります。きれーさっばり。電子書籍書店、ストアの規約のほとんどは販売アカウントの相続を認めず死亡とともにアカウント削除、としてる。というか相続認めた例をいまだに私は知らない。

買った側には著作権管理措置DRMをしてなければデータがダウンロードできてそれは読めます、というとこもあるけど、買った側は確かにそれでいいでしょう。でも著者側のメリットは薄い。DRMをしないことでデジタル回し読みが当たり前になって紙の本ではなく電子書籍だからという理由で死んだ途端に著者の意図に関わらず強制パブリックドメイン扱いだなんてたまったもんではない。

しかもダウンロードした電子書籍、いまだにまともにバグなく読める電子書籍ビューアーがなかなかないんだけど、これも電子書籍差別なんだろうからどうにもならない。最強の電子書籍ファイル形式はPDFだったし。Linuxでは縦書きのリフローePUBはまともに読めるビューアーがなかった。今は少しマシかもしれないけど、ePUBなんてはやらせても誰も儲からないと思われてるせいか、なかなか改善されなかった。

で、普通はそうなっても国会図書館の納本制度がある。国内で発行された全ての出版物には国会図書館に納入する義務がある、と国立国会図書館法で定められてる。

この納本制度、紙で有料の本はなんと小売価格の5割+送料が代償金として交付される。つまり半分戻ってくる。その上国会図書館に保管されてデータベースにも載り、それはほぼ永久に消されることはない。

現在と未来の読者のために、国民共有の文化的資産として長く保存され、日本国民の知的活動の記録として後世に継承されます。
  -国会図書館HPより

こう書かれてる。すごい。文化として保護してもらえる!ちなみに私の商業で出した本は全て納本されて検索できる。多分私が死んでも、ずっと記録として残るのでしょう。

だが。

電子書籍は対象外なのです。

正確には電子書籍でも「無償でかつDRMなし」ならオンライン資料収集制度(eデポ)という制度で収集してる。

でも、これは値段つけた電子書籍になるととてつもない塩対応になる。まず全く受け付けてもらえない。代償金を不正に得ようとするバカが出るから警戒してんのかな、と思って、代償金いらないです、寄付します、と言ってみたけど「ダメです」と断られる。「制度がないから」なんだそうです。

で、その制度はどうなってるのか。現在「電子書籍・電子雑誌収集実証実験事業」ってのが行われてる。これは値段のついた電子書籍や電子雑誌も対象で、調査研究として平成27年12月から平成30年12月まで第一段階が行われ、第二段階は平成31年1月から令和2年1月まで行われる。あれ、これもう終わったのかな? 今令和2年3月だよ?

というわけでここ、動いてくれればいいんだけど、動かなければ現状、電子書籍は値段をつけた途端に本ではなくなる状態です。資料でもないし文化的資産でもないし知的活動の記録でもない、という扱いになるのですから。本づくりとして頑張ってやったところで電子書籍は本に非ず!と言われるに等しいのです。文化としてノーカウント。むしろ無料で読んでもらってるwebページの方がインターネット資料としてまともに保存されるという歪な状態です。

そんな中とある会社が電子書籍を納本しちゃったんですが、これがよくわかりません。制度なくても納本できちゃうんだ……でもなんで? 個人はダメでその会社はいいわけ? 個人なんかそこらへんの草でも食わせておけばいい、ってことなのか。

でもこの状態、ホント洒落になりません。私はまだしぶとく生きるかもしれないですが、今電子書籍でおじーさんおばーさんがいろんな本を出してるんです。俳句とか川柳とか。それも全部「文化に非ず」で済むんでしょうか。なかには自分史やったりしてる人もいるでしょう。それにも「価値認めません」とできるのか。できるわけない。そういうものも紙で出せば納本制度の対象の文化遺産なんですから。電子で出せば数えない、ってのは、紙書籍の自費出版商法を支援してるようにすら思えて愉快なもんではないです。それに納本制度の基礎精神にも反してる。それに遺族が故人の著作が電子書籍ストアと国会図書館によって抹殺された!なんて言い出す可能性もある。

まあ、令和2年1月で実験は終わるので、何かの動きがあると思いたいです。でなきゃ、私の100冊の本は跡形もなく消えてしまう。そこに込めた思いも、読者の皆さんが愛してくれたキャラも、抹殺される。

国会図書館がどう判断したか、注目してます。というかモタモタしてると大きな揉め事になると思うんだけどなあ…。揉めてから対応するってのが役所かもしれないけど。



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