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美容室とアメリカのレストランと私

先日友人とオンラインでお茶会をしていたら、彼女が「担当の美容師さんが産休に入る」という。だから、彼女も髪の毛を伸ばすのだと。聞くと同じ美容師さんに10年もお願いしているらしい。美容師さんの産休とともに髪を伸ばす、という話を聞いて、私はびっくりしてしまった。私は、美容師さんに対するこだわりがあまりない。正直、どなたにお願いしてもめちゃくちゃに失敗されたと思ったことがない。ぶっちゃけ、髪の毛は伸びるのだから「なんかちょっといまいちだったかな」と思っても、次の月に行った時にまた切って貰えばいい。要は、私は髪型に対してこだわりがないのだろう。


なので、選ぶ美容室の基準もいつも適当である。働いている時は、「仕事場から近い」または「駅ビルに入っている」と「チェーン店で値段が手頃」であったし、専業主婦である今は「家から近い」と「チェーン店で値段が手頃」の2つである。書いていたら、なんだか牛丼屋さんを選ぶ基準みたいに聞こえてきた。それでも「美容室選び、失敗した」と思うことは、ない。そんな私が最近モヤモヤしたことがある。「指名制度」である。


美容院をネット予約する際に、追加料金を払って美容師さんを指名することができる。美容師さんのランクによって500円だったり、1000円だったり、はたまた店長さんだったりすると1500円だったりする。この指名料が今回の私のモヤモヤポイントなのである。


もちろん、こだわりのない私は同じ美容室に通っても、特に誰かを指名することはない。指名料をケチりたい訳ではない。でも「○○さんに指名」して500円払ってしまうと、その方からしかサービスを受けられないのである。そうしたら今度は、別の美容師さんと出会うチャンスがなくなってしまうのだ。指名しなければしないで、毎回違う美容師さんとお話できたり、別のアドバイスをもらったりと、新しい出会いがある。それも楽しみたい気持ちもある。


でも、いくらこだわりはなくても、美容師さんによってサービスのレベルが違うな、とは感じる。前回担当してもらった若手のSさんは、おしゃべりが楽しかった。私が見ている雑誌を見て話題を振ってきた美容師さんは初めてだった。ちょうど、コロナウイルスでのステイホームがあけてしばらくたった頃だったので、家でどんな料理をしたかで盛り上がった。ブロードライのコツもアドバイスしてくれた。その日は楽しく家に帰ったのだが、実はその2、3日後「なんだかカラーの持ちが良くないな」と感じたのだ。今回は、Sさんよりもちょっと年上のMさんが担当してくれた。それほどおしゃべりではなかったが、帰り際に「今の頻度で美容院に行かれるのであれば、次回のカラーは根元だけでいいですよ」と、私の髪の毛を気づかうアドバイスをくれた。あれから1週間ほど経つが、根元のカラーの持ちも前回よりも良い気がする。


今回担当してくれたMさんの腕は、きっとSさんよりも上に違いない。さりげない気づかいも素晴らしい。でも私には、これで感動して「じゃあ、Mさんを毎回指名しよう!」とまでは思えないのだ。SさんもMさんも、それなりに味がある。他にも美容師さんはお店にいるので、毎回担当になってくれる方は、固定じゃなくても構わないのだ。でも指名しないと、Mさんにプラスアルファの感謝の料金は入らない。もちろん、口コミ投稿での称賛で感謝を表すこともできる。でも、Sさんの時も楽しかったし、アドバイスには感謝したので、担当してもらった方には全員に、それなりに良い口コミは書いてしまっているのだ。


数日間モヤモヤしていたのだが、ある日夫と話していてハッとした。それがアメリカでレストランに入った時の経験と似ていたのだ。アメリカでレストランに入ると、ウエイターやウエイトレスのサービスに応じて客がチップを決める。大まかな基準はあるが、サービスが良くなければ全く払わなくても構わない。時に、本当に気が利く担当には、多めに払うこともある。でも、レストランに行く際に、ウエイターやウエイトレスをわざわざ指名することはない。もちろん常連客でオーナーや従業員とも顔見知りであれば別だろうが、一般的にそこまでする人はいない。今回私が美容室で感じたモヤモヤは、受けたサービスに応じて感謝をチップで表す、という形にできれば、スッキリするのではないだろうか。

日本は、チップ制度がない国として外国人旅行客に有名である。チップがなくとも、サービススタッフは全員一定のサービスを提供できるとされているからだ。サービスがマニュアル化されているのも一因だろう。でも、実際にサービスを受けてお金を払う段階になると、スタッフ一人ひとりが全く同じサービスを提供できていることはないし、そんなことできるわけもない。気が利くサービスをさりげなくできるスタッフもいれば、渋々仕事をこなしている様子のスタッフもいるはずだ。これは、普段お金を払って物を買ったり、サービスを受けたりする誰しもが、感じたことはあるのではないだろうか。

私が通っている美容室では「指名料」という名称で、美容師さんのランクによって、サービス料が決まっているのだろう。でも、私のように特定の人にはこだわらないが、気持ちの良いサービスを受けたらチップを残せるようなシステムがあれば、また新しい美容室の楽しみ方ができるような気がする。そして私は、また次回も指名はせずに美容室を予約する。また新しい出会いを期待しながら。

#美容室 #美容院 #サービス #チップ #レストラン





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