【紹介】前田裕二『メモの魔力』【文学と関係あり?】

 なぜ僕は、ここまで狂ったように「メモ」にこだわるのか。
 それは、この「魔法の杖なんてない」と言われる世知辛い社会において、メモこそが自分の人生を大きく変革した「魔法の杖」であると直感しているからです。

はじめに

 言わずと知れた、モンスター級に売れているビジネス書です。

 一見価値のなさそうな日常的の物事でさえ、前田流メモ術を使うことでアイデアに生まれ変わると著者はいいます。SHOWROOMという動画配信サービス事業で大きな成功を収めている前田社長が言うのだから信憑性は高いですね。実践に基づいた知識ほど強力なものはありません。

 まずメモには2種類あります。ひとつは一般的に用いられている「記録としてのメモ」。そしてもうひとつが本書のメインコンテンツ「知的生産性を上げるメモ」です。

前田裕二流メモの取り方

 では、具体的にどのようにメモを取ったら知的生産、つまりアイデアを生むメモになるのか? やり方は以下のスリーステップとなります。

①ファクト
②抽象化
③転用

①「ファクト」というのは一般的なメモと大差なく、見聞きして記録しておきたい事実を書きます。メモというよりノートに板書するイメージに近いかもしれません。

②「抽象化」とは、そのファクトが持つ「他の分野にも応用できそうな気づき」を書きます。イメージしにくいかもしれませんので、ここに関してはあとで具体的な例を「なぜ文学?」の章でお話しします。

③「転用」では、抽象化で得た情報を自分のビジネスや行動に落とし込み、実行できそうなアクションに変換する作業です。「メモを取っても抽象化で終わってしまうと評論家になってしまう、転用までして初めて効果を発揮する」と著者は言います。

 これらを下の画像のように、ノートを見開きで使い、左側にファクト、右側のページの真ん中に一本線を入れて、その左側に抽象化した気づき、右側に転用(アクション)という形で書き込んでいきます。

ノート

 たったこれだけで、劇的に生産性が上がると著者は言います。もちろん、人生の指針をはっきりさせて、熱意を持ってメモに取り組んだ場合だけですけどね(抽象化のやり方やメモ取りで生まれる副産物、言語化の効能など、もっと詳しく知りたい方は本書を読んでみてください)。

 そういえば、アマゾンのレビューを見たら本書に対しての酷評があり、「既存のメモ術と変わりない。ビジネスマンには当たり前」と書かれていて笑ってしまいました。このレビュー書いた人は、本書がどうしてここまで売れているかを抽象化できていない、あるいは抽象化だけで止まってただの評論家で終わっているのだと思いました。
 何事も行動に移さなければ意味がないのです。

文学作品でも

 じつは文学作品を読むという行為は、自然とこのスリーステップを実行しているようなものだったのです(今回は、これが言いたかったのです)。

 以前紹介したカフカ『変身』を例にとってみると分かりやすいと思います。

 カフカの『変身』にはある日突然虫になってしまった主人公と、その事実に苦しめられる家族の様子が描かれていました。これが「①ファクト」にあたります。
 そしてこれは大きな不条理を意味しています。不条理は大きな口を開けてそこら中に潜んでおり、ある日突然、平穏な日常を突然奪ってしまうこともあるのだ、という比喩でした。また不条理に直面した時にこそ、その人の本性が垣間見え、側から見ると非合理的で理屈に合わない行動をとってしまうこともあるのだという教えがありました。この部分が「②抽象化」にあたります。ご存知の通り、ここまでやって初めて文学が意味を成します。
 さらに進んで、不条理(たとえば新型コロナウイルスとか)に直面した私たちは、側から見ると滑稽な行動をとっていませんか、どこかに怒りの矛先を探したり、冷静さを欠いてはいけないよね、という自分行動指針に「③転用」するわけです。
 図にすると以下のようになります。

変身ノート4

 まさに、文学作品というのは、著者が世の中に転がる抽象的な概念を寄せ集め、分解し、再構築して作り上げられているのです。いわば、凝縮された抽象概念の塊なのです。学びがないわけないのです! 読者はそこに潜んだ無数の教訓を②で抽出し、③で自分の人生の糧とするのです。

 ただ作品を読んだだけでは簡単に忘れてしまうし、せっかくの学びを抽象的なまま持て余してしまいます。なので私はnoteに言語化したり、YouTubeで映像化したりして、自分の中に落とし込もうとしているわけですね。これは、言ってしまえば壮大なメモだったのです。

まとめ

・メモは著者の人生を変革してきた魔法の杖である。

・前田裕二流メモ術は下記のスリーステップ
 ①ファクト(事実)
 ②抽象化(他分野に応用可能な気づき)
 ③転用(自分の人生に落とし込む)

・文学を読む行為は『メモの魔力』そのものだった!

最後に

 本書を読んで、私はすっかり前田裕二ファンになってしまいました。同著者の『人生の勝算』は涙なしには読めません(個人差があります)。彼と同じモレスキンのメモ帳を買って、一歩でも彼に近づけるように今日もメモに励んでいます。ちなみに、蓬生が一番最初にこの形式でメモしたのは本書のことでした。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?