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ふてくされる鳥居

鳥居『どうせワシは千本鳥居よりも地味ですよー。』

狛犬弟『兄ちゃ~ん、さっきからずっとあの状態だよ。』

狛犬兄『ほっとけ。どうせ参拝客に千本鳥居も地味って言われただけだろ。いつものことや。』

鳥居『いや。今回は厳島。』

狛犬兄『厳島かぁ。確かに比べると地味やな。』

鳥居『あぁん?』

狛犬弟『確かに家と比べると色派手やし、海の上にあるから神秘性を感じるなー。』

狛犬兄『祈ったら海から神様が現れる雰囲気やな。』

狛犬弟『それに比べて家はどこにでもあるし、来るのは散歩コースの寄り道に訪れるご年配の方とお祭りぐらいだもんなぁ。』

鳥居『いや。お前らどっちの味方?そこはフォローはしろよ。俺、今ナイーブ何よ。』

狛犬兄『鳥居がナイーブとかいうなよ。』

鳥居『どうせおまえ等も家よりも厳島のほうがええんか?町内会よりも神秘の絶景ライトアップのほうがいいんか?銭を投げるよりもイイネを投げたいんやろ?』

狛犬兄『そこは知らんよ。言い分めちゃくちゃだし。』

鳥居『はぁ~。どうせワシは色が地味で何も取り柄がない。ただの鳥居ですよー。』

狛犬兄『おい~。まだ愚痴ってるぞ。お前なんとかしてこい。』

狛犬弟『ええ~俺~?』

狛犬兄『口閉じてないでなんとか言えや。このままだと気分悪くなるだけやわ~。』

狛犬弟『はぁ~~。』

狛犬弟『なぁ鳥居さん。』

鳥居『なんや?』

狛犬弟『確かに厳島よりかは地味だけど、あんたにはあんたのええところがあるんや。』

鳥居『なんやそれは?』

狛犬弟『それは親しみやすさがあることや。厳島はちょっと荘厳過ぎて、近寄難いけど、あんたといると何故か落ち着くんや。ひさしぶりに故郷に帰ってきた懐かしい気分を感じるや。確かに地味や言ったけどあんたにはあんたの魅力があるんや。だから気にせんとき。』

鳥居『はぁ。そうやな。確かにそうやな。よし、いつまでもウジウジしてる場合じゃない。俺らには俺らの良いところがあるんや。』

狛犬兄『その息やで。おっちゃん。』

子供『ねぇ~ママや~?』

母親『なぁに?』

子供『あの鳥居全く赤くないね。』

母親『だめよ。そんなこと言っちゃ。』

鳥居『はぁ~~。』

狛犬兄『またか。』




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