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世代を問わず、世界から受け入れられる書道を。中友香さんが巻き起こす新たな書道のかたち



ご自身のこれまでの経験をもとに、ファッションと書道という異色の掛け合わせを通して、書道の魅力を世界中に届けている書道家の中友香さん。今まで誰も見たことのない、新たな書道の魅力をご本人にお聞きしました。



些細な出来事が運命的な出会いに

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ー書道との出会いは。

凄く些細なことで、小学一年生の頃にクラスメイトに誘われ、教室に通い始めた事がきっかけです。

当時は、書道が大好きという真っ直ぐな気持ちだけで、お稽古に通ってました。学校終わりのお昼過ぎから、日が暮れるまでひたすらに書き続けてましたね

没頭し過ぎて、先生に「もう今日はお稽古終わりましょうね。」と何度も言われていました。
それでも楽しくて、高学年の生徒に混じってやめられずに残っていました。
書道が大好きすぎるが故に、遊びの誘いも断ったりなんかもありましたね。

普通は今日はお稽古休みたいとかって時もあると思うんですけど、私の場合は、友達の誘いを断ってまでも筆に触れていたい、字を書きたいって思いが強かったみたいです。。。
今思えば、その頃にはもう出会っていたんだなと。

ーなるほど。小学1年生の時に既に運命的な出会いをされていたんですね。その頃から、書道に対する考え方に変化はありましたか。

今でも純粋に、書道ができることに対して凄く幸せを感じています。
当初は楽しいから続けてきたことなのですが、そこから、書道を通して、日本が誇る伝統文化を一人でも多くの方々に届けたいという思いにシフトしてきました。
私自身が感じている書道の魅力を、他の人にも感じてもらえたらなという。

私が感じているものと一般的に抱く書道に対するイメージにはギャップがあるなと自負してます。
世界に誇る伝統文化であるからこそ、身近に感じられる存在であってほしいと思っているんです。

書道と現代的カルチャーを掛け合わせることで、私が思う新しい価値観を創造したり、日常の中で書道に向き合えるようなキッカケ作りをしていける書道家として活動していきたいと思っています。

現代のカルチャー、ファッションと書道という異色の組み合わせを通して、書道の魅力を世界中に発信する理由とは

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ーファッションと書道を融合させようと思ったきっかけは。

書道家として活動する前は、アパレル業界にいたこともあり、ファッションも凄く好きです。毎年ファッションウィークが開催されていることは知っていたので、ファッションというフィルターを通して、少しでも書道の魅力を伝えられたらなと思い、去年、ニューヨークの会場へ行ってきました。
そこへ、私がデザインしたTシャツを現地で着用していたら、参加者の方々から「そのTシャツめちゃくちゃかっこいいね。いけてるね。」なんて声を沢山かけていただいて。そんな想像してしてなかった展開を実感して、素直嬉しかったですね。

私は英語を話せる方ではないので、言葉で繋がることって難しいなって思ってたんです。
でもその時に、書道をキッカケにこんなにも一つになれるんだっていう、書道の可能性、大きく言えば偉大な力があるんだと改めて気づかされましたね。

沢山の方々が声をかけてくださったので、楽しくて嬉しくて。。。
日本の伝統文化である書道に、時代と流動するファッションっていう相反する文化を掛け合わせることで、何か新しい価値観を創造できるんじゃないか、創造したいと強く感じた瞬間でもありましたね。

今でも海外の方からのメッセージを多くいただいていて、書道に対しての興味関心を実感しています。日本人はどちらかというとアートに馴染みがある印象なので、もっと書道をアートと捉え、幅広い視野で見ていただけたらより日本が誇る伝統文化を広めていけるんじゃないかなと。

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ーアパレル業界以外に、ブライダル業界でも働いていらっしゃったそうですね。その時の経験が、今に生かされている部分はありますか。

ブライダル業界は長く勤めていました。お客様の幸せをお見送りするお仕事として、とても素敵な時間でした。当時は書道との関わりなど感じなかったわけなのですが、ここ最近はお世話になったお客様からの命名書のご依頼等も沢山いただいていまして。年齢が近いこともあって、素直な意見を言いやすいのですかね。

ブライダルの時にお見送りさせていただいたご夫婦の赤ちゃんの命名書を今まさに書かせていただいているっていう感じですね。業界にいたからこその表現の仕方や、当時の打ち合わせ中での、お二人の熱い想いを現場で感じていたという経験があったからこそ、今再度、命名書の作成に携わらせていただいているのかなと。今の私があるのも、ブライダルのお仕事があったからこそだなと思っています

ー色々が繋がっていますね。

そうですね。凄く繋がっていると感じることが多いです。
人生において「今までの経験が今に全て生きている」「無駄なことは何一つなかった」ととてもい感じるんですよ。

ファッションに関しては、アパレル業界にいたからこその、色彩感覚とか、組み合わせ、幅の見せ方っていうのもありますし、Tシャツ全体の雰囲気を想像できるといいますか、ファッションの中で自然と身についた感覚を、今の仕事に生かせられているなと感じますね。

そもそも、アパレル業界いなかったら、書をTシャツに落とし込むなんて発想自体出てこなかったと思うんです。Tシャツにしたことで、ファッションウィークで活動をし、コミュニケーションツールとして結果的に書道を発信することに繋がりました。私が通ってきた業界に対して、今とても感謝していますね。

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日常生活のなかで常に書道を意識されている

ー普段イメージをされてから、筆を取られるんですか。

作品によってそれぞれなんですが、例えば、「愛」をテーマにした作品が多いのですが、筆を持った瞬間に表現が変わる、もともとイメージしていたものとは違う形になっていくこともありますね。
書いていくうちに、ここに入れたいとか、この色で書きたいとか、新しい発想が浮かんできて、結局仕上がった作品が全く新しいものに、なんてことは多々ありますよ。
私自身も不思議に思う感覚です。

作品って、本当に最後の最後まで姿を見せないものなんですよ。全部「愛」という漢字で敷き詰めた半紙があったとしても、最終それを塗りつぶしちゃう時もありますし。何十時間もかけたのに。それでも、完成が見えない未知の世界が、私にとって書道の魅力の一つですね。日々感じ方が変わったり、勉強させられることが多くて面白いですね。

私にとって作品は、出会いなんです。自分の作品と出会いたいからこそ、筆が動くといいますか。朝起きた瞬間に「今日の自分の作品に凄く出会いたい」みたいな。少し奇妙な感覚かもしれないんですけど、私はそんな感じで作品と向き合ってます。

出会いから学ばせていただくことも多いです。私の作品に関しても、捉え方は十人十色で、目にした時の感情一つで違った表情に見えますし、本当に様々な表情を作品そのものが持っています。
そういった意味では奥深く、楽しいものに仕上がっているのではと思います。

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ー普段から日常生活の中で書道のことを考えたりするんですか。

そうですね。凄く考えます。書道家として活動を始めてからは、休みっていう感覚はなくて、むしろ休みはいらないんです。本当に好きなことを仕事にできているので。

日常の中にも、作品に通づるヒントっていうのが沢山かくされていて。なので街を歩いていて見かける、漢字の看板やグラフィックアート、また人の感情にインスピレーションを受けることがありますし。書きたいものが降りてくる瞬間があって日常そのものが私に力をくれていると感じてます。
出かけるときは「今日はどんなパワーに出会えるんだろう」みたいな、ワクワクする気持ちになりますね。こういった冒険心に近いものに、常に奮い立たされています。

ーまさに、身近なものからヒントを得て、身近なものと書道を掛け合わせているという感じですね。

今回、我々が「極上プリン」のロゴをお願いさせて頂いたように、リクエストから書を書かれることも多いんだそうで…


ーリクエストを頂いたときに、大切にされてることはありますか。

お店のロゴであれば、そのお店のイメージであるとか、コンセプト、こうしたいというお店の方の想いを、一番に表現させていただいています。ロゴは、お店の顔となる存在なので、見る側の立場でどういうものをそこから想像するか、商品、お店に込められた想いが反映されるようなロゴ作成を心掛けています。

そんな中、妥協はしたくないので、締め切りの最終日まで、「もうこれ以上の作品は書けないわ」と思った作品が仕上がったとしても、そこで終わらず最後の最後まで書ききるっていう感じですね。

今降りてきたこの瞬間がベストだと思っても、妥協できない自分がいるので、もっと良いものに出会えるんではないかっていう。ここでも、冒険心が奮い立たされるんですよね。ベストを尽くしたと思った先に見せる、自分の本領といいますか。

最上級の作品って、上を目指せば目指す程、きりがないですよね。自分が最上級って勝手に決めているだけなんじゃないかなと。その先にある可能性の為にも、絶対に妥協はしないって決めてます

日々、新たな書道のかたちを探し求め続ける中さん。彼女が目指す未来の書道のかたちとは


ー今後の抱負をお聞かせ下さい。

私だからこそ伝えられる、書道の新しい価値観を創造して、私なりの方法で、次世代、そして世界へと書道の魅力を発信していける、そんなアーティストでありたいと思います。
この仕事と出会えたこと、この仕事で自分が活動できているということは、本当に幸せなことですし、生涯死ぬまで筆を握り続けているだろうと思いますよ。死ぬ直前まで墨を使って、自分の表現できる書道アートというものの限界に挑戦していきたいですね。

ファッション以外にも、書道との相反する掛け合いっていうものには広い視野を持って挑んでいきたいですね。今はまだ未知の世界ですけど、どんどん挑戦していきたいですね。
それがアーティストとしての宿命といいますか、それがないと楽しくないですよね。
これからも新しい挑戦に、日々発見、それが刺激となって仕上がる私の作品が人々を魅了する、そんな書道家として活動していきたいです。

中 友香
書家/アーティスト
1991年 大阪府出身大阪府出身。
小学一年生で正筆会に所属。
中学高校は陸上に熱中し、インターハイ出場。
社会人として、ブライダル、アパレル業界を経験する中で、
自分らしくいれる時間=書道と向きあっている時であると再認識し、
正筆会師範を取得。同年、更なる活動の場を求め、拠点を東京へ。

伝統的な文化である書道をより身近な存在へと感じてもらえるよう、
ファッションというフィルターを通し、独自の書風で表現する。
https://tomokanaka.com/

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