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第5章 最適営業で効率良い営業をしよう

「月商100万円は、通過点」
2010年、ぱる出版から刊行された「行列のできる行政書士事務所の作り方」を全文無料公開中。横須賀輝尚の書籍の中で、唯一行政書士事務所経営に絞って執筆された書籍。2019年全文無料公開。

無駄な営業はしない

現在、営業方法には従来のアナログ的なものから、インターネットを使ったデジタルなものまで多種多様です。そのため、どんな営業をすればいいのかがわからないという声をよく聞きます。同業者からは、「チラシが良かった」「ホームページでは仕事が取れない」など、これまたさまざまな情報が入ってくるので迷ってしまいます。

そこで本書では、私の経験を元に、「この方法が行政書士の仕事を取るのに最適」と、あえて営業方法を決めてしまいます。それが、次の2つの方法です。

 ①直接人に会う営業
 ②サイトをつくって広告を出す

この章ではこの2点を深く掘り下げて解説します。なお、②の手法を補完する意味で、「ソーシャルメディアの活用方法」を加えます。

具体的な営業手法の解説の前に、営業がうまくなるコツを先にお伝えしておきます。私自身、営業経験も何もないところからスタートしました。仕事が取れるようになるまで、紆余曲折、試行錯誤の繰り返しでしたが、私なりに営業がうまくなるコツをつかみました。そのコツをお伝えしようと思います。

「悪い話」は鵜呑みにしない
「○○のタウン誌では仕事が取れない」「サイトなんかつくっても無駄」という失敗談を聞くと、自分もうまくいかないだろうと決めつけてしまうことがあります。しかし、本当のところはわかりません。その情報は又聞きだったり、単なる噂話かもしれません。

ですから、誰かが「○○はダメ」と話していても、あなたは「いける!」と思っているのであれば、試してみましょう。私も、「タウン誌はダメ」という話を聞いたときに、情報がありましたが、実際に出してみたら反応が取れたことがあります。このように、やってみないとわからないことも多いのです。

「良い話」は素直に聞く
「サイトをつくったら仕事が入った」「ブログを書いたら問い合わせがきた」など、先ほどとは正反対の情報には、考えずにまず取り組んでみましょう。特に自分自身が尊敬している人からのアドバイスであれば、何も考えずにやってみること。素直に行動することがポイントです。私も「ブログが良いよ」と聞いたのでブログを始めてみたら、またたく間にアクセス数が伸び、仕事が来たという経験があります。良い話には取り組んでみましょう。

全部試してみる
どの営業法が自分に合うかは、やってみないとわかりません。考えが浮かばない場合には、本書推奨の最適営業を実践していただければ問題ありませんが、やってみないとわからないことだらけです。もし営業手法に迷いが出た場合、できることは一通りやってみることです。

私も飛び込み営業、ポスティング、サイト、メルマガ、人脈営業といろいろなことをやった中で、最適だと考えたのが「人に会う営業」と「ブログ&サイト集客」でした。このようにすべて試してみるのもひとつの方法です。

やらないことを決める
一所懸命やっているのに結果が出ないことがあります。その場合、「いろいろなことに取り組み過ぎていて、ひとつひとつが手抜きになっている」ことが原因です。自分なりのパターンをつかむまではいろいろ試していくしかありませんが、注意したいのが適当にやってしまうことです。

私自身、ポスティング、飛び込み営業、人脈営業、サイト、メルマガと、やたら滅多に取り組んでいた頃に、自分自身が得意な営業もわかりましたが、どれも中途半端な結果になっていました。

そこで、やらないことを決めました。飛び込み営業、ポスティング、ダイレクトメール、小冊子などの営業はしない。アナログな営業とデジタルなネット集客の2つに集中しようと決意し、クオリティを高めていきました。その結果、人と会った際のコミュニケーション能力は向上し、ネット集客能力も上がりました。ある程度慣れてきたら、このように集中していくこともひとつのポイントです。

「失敗」は「経験」に置き換えてしまう
失敗は怖いものです。「広告費を払って、もし結果が出なかったらどうしよう……」と誰もが考えます。私も、1、2万円くらいの広告費でさえ無駄になったらと考えると、萎縮していました。この恐怖は広告だけではありません。人に会って名刺交換を拒否されたらどうしようとか、サイトをつくっても反応がなかったらどうしようなど、ネガティブな妄想は膨らむものです。

しかし、もともと経験も何もないのだから、失敗して当たり前です。そこで自分のアクションを「成功」と「失敗」に分けるのではなく、「成功」と「結果」にしました。思うような成果が出なくとも、それは単なる「結果」であり、二度と同じ結果にならなければいいと考えるようにしたのです。

例えば、ダイレクトメールの反応がゼロだったなら、「この方法は成果が出ない」という結果を得たことになります。次は同じ結果にならないようにすればいいだけです。ちょっとした気持ちの持ち方ですが、これからは「失敗」を「結果」と置き換えるようにしましょう。

短期間でものすごい成果を求めない
これから解説する「人に会う営業」というのは、すぐに結果が出るとは限りません。もちろん突発的に仕事がくることはありますが、長期的な戦略なのです。一方で、ネット集客はすぐに効果が出る可能性がありますが、広告などのコツをつかむまでは苦しむかもしれません。

世の中に出ている書籍のほとんどが「すぐに成功できる」とうたうものばかりです。もちろん10年も20年もかかる成功方法では、本としての魅力がありませんから、どうしてもすぐに成功できるとあおる必要があるのです。

しかし、1週間や1か月といった短期間で大成功できるなら、そもそもこのような書籍は必要ありません。本書の手法も短期間で結果を出すための手法ではありませんから、継続する努力が要ります。安定した確実な収入を得るためには、焦る気持ちを抑えつつ、腰を据えてアクションを起こしていくことがポイントです。

良い予感を持って臨む
これは営業だけでなく、ビジネス全体、ひいては人生にもいえることですが、ひとつのひとつのことに良い方向の可能性を持つことです。もちろん万全の準備をして、実行してほしいという前提はありますが、そこまで行ったらあとは良いことが起きるかも、という良い方向の予感を持ってほしいのです。

例えば、人に会いに行ける機会があったとして、それを「どうせなにもないかも」「行っても無駄かも」と考えるよりは「もしかしたら良いことがあるかも」と考える方が、チャンスをつかめます。

初めてセミナーをすることになったとき、出版企画を書いて出そうとしたとき、周りからはネガティブな情報も入ってきました。しかし、自分の持てる限りの努力をして、臨みました。「もしかしたら良い結果が待っているかもしれない」と。結果、セミナーはアンケートの結果も良く、25歳で処女出版することができました。「どうせダメかも」と思っていたら、今の私はありません。最初はこうした良い予感を持って臨みましょう。経験を積んでいく上で、良い予感は自信に変わり、確信へと変化を遂げます。

ですから、小さなことも「チャンスかも」と前向きにアクションすることを心がけてください。

取り扱い業務を絞ることのメリットとデメリット

「取り扱い業務は絞ったほうがいいのか?」これも多く寄せられる質問です。

業務を絞って専門性を持ったほうがうまくいく。これは行政書士業界のセオリーです。実際に私も「会社設立」という業務に特化して仕事を増やしてきました。

しかし、ただ業務を絞ればいいかというとそうではありません。商圏と商品点数の関係、それから人口との兼ね合いから判断していく必要があります。

そこでまずは、一般論から説明します。行政書士業界には、「業務は絞ったほうがよい」という考え方があります。まずは「メイン業務」となるものを決めます。この考えそのものは間違っていませんが、業務を絞るイコールその業務以外は絶対にやらない「専業」は間違いです。

わかりやすい例でいえば、片田舎で「会社設立専門」の行政書士として開業したとしても、そのエリアの会社設立数が年間で100件にも満たないのであれば、収入源となる業務そのものが少ないわけですから、収入も少なくなります。そこで、仮に「この業務一本で」と完全専業主義を取る場合には、対象エリアを広げていく必要があります。

「扱う商品の数が少ない場合は、商圏を広く」というのが、行政書士業務だけを扱う場合のセオリーです。冷静に考えれば「田舎で仕事の数も少ない。それで仕事を絞ったら仕事がない」というのはわかりそうなものです。

しかし、この業界では間違えてしまう人が多い。その原因のひとつが、「ランチェスター戦略」です。

ランチェスター戦略とは、有名な経営理論のひとつです。わかりやすく簡単にエッセンスだけを解説すると、エンドユーザーとできる限り近い距離でやりとりをして、地域と商品をできるだけ絞って営業をするという戦略です。ランチェスター戦略は、多くの経営者や企業が影響を受けていて、行政書士などの士業でも活用されているのですが、これをそのまま行政書士ビジネスに当てはめてしまうと問題が生じてしまうのです。それが、商品点数と商圏の関係を考えないで地域と商品を絞ってしまうことです。

取り扱い業務を絞る前にやるべきこと

行政書士の業務を絞るべきか、それとも絞らないほうがいいのかを考える前に、まずは原点に立ち戻って、あなたがやりたいと思う仕事を書き出してください。そして、その仕事を獲得するために、まずはアナログの営業戦略を考えます。

アナログ営業の基本でもある「人に会う」場合、名刺の記載内容や会話の中で、「自分は何屋です」と名乗る必要があります。そこで、「入り口となる業務はひとつに絞る」と考えます。例えば、私は「会社設立」の専門家として看板を出していたわけですが、会社設立の仕事しかしていないわけではありません。会社設立から許認可の取得、場合によっては内容証明の取得や相続の手続きといった仕事も行います。最初から「すべてできます」というスタンスでは、お客様の印象には残らないのです。お客様の印象に残すためには、「入口をひとつ」にしておくことがポイントなのです。

行政書士の業務内容に詳しいのは、行政書士だけです。一般の方は何も知りません。ですから、「何屋さんなのか」を一度で覚えてもらえるように、自分の看板をつくります。そして覚えてもらってから、いろいろな仕事ができることをお伝えすればいいのです。これを行政書士の出口戦略と呼んでいます。

「何でもできます」とお客様にお伝えした方がいろいろな仕事が来るような気がしますが、ビジネスシーンで出会う人には、一発で覚えてもらわなければ、二度と思い出してもらうことはありません。ですから、「何の人」なのかが対外的にわかるようにしておく必要があります。

私自身、最初は「何でも屋」としていました。そのため、いろいろな仕事がパラパラと入ってはきましたが、増え続ける様子はまったくありませんでした。そこで、一番得意だった「会社設立」の仕事に絞ることにして、名刺にも会社設立専門とだけ記載しました。パラパラと入ってきていた仕事は無くなりましたが、会社設立の仕事は確実に増え出したのです。

その理由は、横須賀てるひさ=会社を作る人というイメージがお客様に浸透し始めたからです。お客様の記憶に残りますから、そのお客様から新しいお客様を紹介してもらえるようになったからです。

私のお得意様には、いまだに私のことを司法書士だと思っている方がいます。行政書士でも司法書士でも、その人にとっては「横須賀てるひさ=会社をつくってくれる人」として認識してもらっているのです。アナログ営業でイメージを絞ってお客様の記憶に残ることで、私は初めて月商100万円の壁を破ることができたのです。

人口が多い都会では、このアナログ営業が特に有効です。前章でお伝えしたとおり、結局こういった専門家の仕事は、身近な人に頼みます。そのため、会ったことある人の中から選ばれることが多いために、人口が多い地域では、アナログな営業が非常に重要です。

さらに首都圏では、インターネットを使ったデジタル営業も熾烈化しています。広告費も他の地域と比べて高くなりますから、人口がいる地域では、ネット営業だけでなく、アナログ営業で地道に人に会い続けることが、将来的に仕事を増やしていくためには効果的です。

取り扱い業務の決め方と考え方

自分は「何屋」なのかを決めるには、「何をしたいのか?」を明確にすることです。せっかく自分が選んで取得した資格なのですから、自分が最もやりたい業務を考えてください。とはいえ、何でもいいわけではありません。あまりにも認知度の低い仕事や仕事数自体が少ないものにしてしまうと、仕事が発生しない恐れがあります。そこで、業務を絞る場合の目安を紹介します。

会社設立
取り扱いやすい業務ですが、その分新規参入も多いために競争が激化していて、報酬金額が下がっているのが現状です。適切な価格で数をこなせるかがポイントになります。

また、会社設立後の融資申請や許認可申請といった仕事につながると考えられますが、実際には思うほど多くありません。

設立後は、社会保険労務士や税理士が必要になるので、こういった複数の士業の人たちと紹介しあえる関係を構築できていると、逆に紹介してもらえる業務です。

許認可事業
会社の許認可関係をメインにした業務です。建設業などが多く扱われています。この分野の仕事は行政書士の真骨頂ともいえる分野で、会社設立より高度な業務だと言えます。そのため、新規参入はそれほど多くありません。報酬は下がっていますが、値崩れしている分野ではありません。

在留許可
ビザや帰化申請の扱いを行う仕事です。これも都心部など外国人が多い地域では、有望な分野です。ただ単にこの手続きを扱うだけでなく、各国(特に日本の場合は韓国、中国)などの言語コミュニケーションができることも重要です。IT企業などは、技術者に外国人を置くケースもあり、専門としておくと紹介が増えやすいといえます。この手の仕事は、一般には知られていないため、他士業からの紹介などを考えていきたい分野です。

民事法務
内容証明などのいわゆる民事法務を専門的に取り扱う場合には、これを専門とします。

しかしながら、この分野の仕事は決して報酬が高くありません。その上相談などに時間がかかり、ビジネス的には費用対効果が良いとはいえません。しかしながら、高額報酬を払えないお客様のために役に立つ仕事をする、ということは価値があることだと思います。そういう意味では、まずは1、2のような仕事を確立させてから、取り扱っていっても良い分野であると言えます。

「身近な人」になることを第一に考える

もう一度簡単にまとめると、行政書士の仕事は、近場から発生します。つまり、あなたがあった人の中から発生するわけです。ですから、ひとりでも多くの人に会ったほうが仕事につながります。これは何も難しいことではありませんので、今日からすぐに実践していきましょう。

一見遠回りに聞こえるかもしれませんが、専門家への仕事は、必ず身近な人に依頼する傾向があります。そのため、量をこなしていけば、必ず仕事は増えていきます。

あなたが行政書士の仕事をもっと欲しいと考えたら、たくさんの人に会うことです。これを実践するだけでも仕事は増えます。「あれはダメだ」「これはダメだ」とあれこれ考えて何もしないことが、最大の失敗要因です。

これを最低でも3年は続けます。そうすることによって、仕事は途切れなくなります。

しかしながら、ただ名刺を集めるだけのような会い方をしていても効果は出ません。私自身、「行政書士 横須賀輝尚」とだけ書いた名刺を配っていたときは、いっこうに仕事が増えませんでした。単に行政書士と書かれた名刺をもらっても、どういう人でどんな仕事を頼めるのかが、お客様に伝わっていないからです。

そこで、「好かれること」がポイントです。なぜ好かれることが重要なのかというと、行政書士の仕事は画一的な仕事だからです。行政書士という同じ資格を持った人はたくさんいるわけですから、同じ仕事を頼むのであれば、好きな人に仕事を頼むのは当たり前の流れです。

実際、事務所の創業理念に共感してくださったという例や、ブログの記事に共感を得たから依頼した、という例は枚挙にいとまがありません。報酬額を除けば、人は好き嫌いで仕事を頼むものです。ですから、徹底して人に好かれる、好印象を持ってもらうことが至上命題になります。

そのための方法は、あなた自身の情報をもっと公開することです。簡単に好印象を持ってもらうポイントは、お客様にあなたとの「共通点」を見つけてもらうことです。同じ都道府県出身のタレントのファンになったり、自分の同僚や上司が同じ趣味を持っていたから仲良くなったといった経験があると思います。私は埼玉県行田市の出身、専修大学法学部の卒業です。本書をお読みの読者の方でも、埼玉県出身や専修大学卒の方はいらっしゃると思います。そうした自分自身の情報公開をすることで、会った人に好印象を持ってもらえるようになります。

つまり、あなたが人に会いに行く前にする準備は、「情報公開」になります。

好かれるための情報づくりは「名刺」からはじめる

情報公開のためのもっとも簡単な方法は、名刺の改良をすることです。行政書士の多くが単に「行政書士、名前、住所、電話番号」という非常にシンプルな名刺を使用していますが、これでは全く覚えてもらえませんし、共感を得ることはできません。

そこで、名刺の改良が重要になってきます。会社案内やA4のチラシなどは捨てられてしまうことも多いのですが、名刺を即捨てるという方は非常に少なく、この名刺の改良をすることによって、お客様の名刺リストで目立つことができます。

まず重要なのは、名刺にプロフィールを掲載することです。私の場合、出身地、学歴、職歴(短いですが)などを書き、名刺交換した方と会話を弾ませました。特にコミュニケーション能力に自信がない方にはこのプロフィール掲載を強くお勧めします。

もし、あなたが社会人であれば、初めて名刺交換した人との会話が全く続かず、沈黙してしまった経験が一度くらいはあるかと思います。これは、あなたや名刺交換した相手が悪いのではなく、「情報がなさ過ぎて話すことがない」のです。

例えば、あなたがエンジニア業界にまったく興味がなく、また知識もなかった場合、ただ「SE」としか肩書きのない名刺を渡されて、どんな会話ができるでしょうか。おそらく会話は続かないはずです。

これと全く同じで、ただ「行政書士」と書かれた名刺を渡されても、相手は話せる情報がなく、困ってしまうのです。ですから、コミュニケーションを円滑にするためにも、好印象を持ってもらうためにも、あなた自身の情報公開が必要なのです。

このようにあなたの名刺を情報満載にするだけでも、効果があります。

次は、さらに反応を高めるための名刺の改良について解説します。

まずはあなたを表すイメージとなる仕事をひとつ選んでください。名刺を渡したときに、「あ! この人は○○屋さんなんだ」とわかるようにするのがポイントです。記載方法がわからなければ、「○○アドバイザー」と肩書きを付けてください。相続アドバイザーでも、会社設立アドバイザーでもかまいません。この○○アドバイザーは最も専門家をわかりやすく表現したひとつの書き方です。迷ったらアドバイザーと記載してください。実際に私は会社設立アドバイザーと記載し、専門性を理解していただきました。

次に重要なポイントとしては、顔写真です。これは恥ずかしがらずに入れてください。顔写真なんか行政書士が入れるものではない、という考え方もあるかもしれませんが、一度お会いしたくらいでは相当顔や服装にインパクトがない限り、覚えてもらえません。ですから、恥ずかしがらずに写真を掲載してください。そして、その写真はとびきり笑顔の写真をつかってください。笑顔の写真はより抵抗があるかもしれません。しかし、いつかお客様があなたに電話をする際に、もう会ったときの記憶が薄れていたらどうでしょうか。もうその名刺しか情報がないのです。その際に、証明写真のような仏頂面と笑顔では、断然笑顔の方に電話をしたくなります。恥ずかしいのは最初だけです。ぜひ、笑顔の写真を名刺に掲載してください。

また、名刺の裏などに「取り扱い業務」などと掲載している方もいらっしゃいますが、この業務の記載についてはできるだけわかりやすい表記を心がけてください。「各種許認可申請」では、何のことかわかりません。「株式会社設立のための書類作成から提出代行までお受けします」のように、できるだけ誰が読んでもわかりやすい表記にすることがポイントです。

行政書士業界に入ってしまうと「各種許認可申請」や「遺言業務」が当たり前になってきます。しかし、それはあくまで業界として「当たり前」なのであって、お客様には関係ありません。誰が読んでもわかりやすく。高尚な書き方は必要ありません。これがシンプルかつ最大の原則です。

次のテクニックとしては、お客様のアクションを促すということ。業務一覧を掲載しても、お客様はどうして良いかわかりません。「このようなことでお困りでしたら、03-××××-××××までお電話ください」など、お客様にしてほしい「アクション」を書くことが重要です。

なお、電話をかける確率を上げるには、営業時間を書いておくことも重要なポイントといえるでしょう。

最後の記載テクニックとしては、「相談料無料」と記載しておくと良いでしょう。相談料を取るか取らないかという議論はありますが、最初のうちはとにかく問い合わせがかかってくる率を上げることです。

有料にするのは、数が多すぎて対処できなくなってからでも十分です。

相談料を取る行政書士事務所も多数あります。しかし、行政書士の仕事は民事法務といわれる部分を除き、手続きが発生する仕事です。つまり、相談だけで解決することは多いとはいえません。最終的には手続きでお金を取ることができるので、相談は無料でも最初のうちは全く問題ないでしょう。

また、数が多くなってきても、時間を短く切ることで、対処は可能です。実際、私自身は今でも相談料は取っていません。手続きでお金をいただくことができますし、何より相談無料で「会いやすい」というのが紹介に繋がるのです。その他の名刺に関するテクニックは、図解で解説してありますので、ぜひ参考にしてください。

具体的に人に会う方法は、都会と地方で異なる

名刺を改良して情報満載にする。これだけでも一定の準備ができたといえます。

次は実際に人に会う方法です。これは都会と地方都市で違いがあります。まずは都会からいってみましょう。

ここでいう都会とは、東京、大阪、名古屋などの大都市です。こういった大都市は、人口が多いので人に会うことが容易にできる地域です。そのため、人に会うというアナログ営業をルーチン化してしまうのがベストでしょう。毎月の目標を決めて人に会う。最初は10名でも20名でもいいでしょう。次第に数を増やし、月間100名を超えるようになれば、仕事は増えていきます。

行政書士の仕事の性質と人からの紹介という要素から考えると安定はしませんが、仕事は確実に入ってきます。過度な期待をせずに長期的に人に会い続けることが、行政書士としての仕事を将来的に増やしていくことにつながりますので、ここは地道に取り組んでいきましょう。

都会で人に会う方法としては、異業種交流会やさまざまな集まりなどがありますが、ベストはビジネス系のセミナーへ参加することです。こうしたセミナーには、意識の高い経営者や起業家が参加していることが多いので、いい人に会うことができます。

実際に、私の場合は東京都内で開催されているセミナーに参加し、参加者と名刺交換しながらひとりひとりと話をして仕事をいただいていました。名刺作成のルールを守り、人に会いにいくだけで、月に40~50万円の売上は維持していました。もちろん月によって30万円を切る月もありましたが、100万円を超える月も出てきました。このように、ビジネス系セミナーへの参加が人に会うという点では最も有効な方法です。

狙い目は「30名前後で懇親会があるセミナー」です。セミナーだけではなかなか名刺交換ができない場合も多いので、その際は懇親会で名刺交換をしました。こうした小さなことの積み重ねが、あなたの人脈と仕事の発生源をつくっていきます。

ただし、気を付けてほしいのが、セミナー本来の意義を忘れてほしくないということです。セミナーを主催されている会社は、あくまでも情報提供の場としてセミナーを開いているのであって、あなたの営業のためではないということを心に強くとめておく必要があります。必要以上に営業活動をするなど、主催者に迷惑をかけることはもってのほかです。ですから、TPOをわきまえて参加しましょう。

また、名刺交換をする相手のことをお金に換算して見ないことです。仕事がほしい気持ちはわかりますが、名刺交換する際に、「この人からあの案件が来たら10万円入る。また10万円候補と会えた」などと相手をお金として見ないこと。相手に失礼ですし、また目が¥マークになってしまっていては、人間として悲しいです。そのあたりの分別は大人としてわきまえておきましょう。

異業種交流会などもありますが、異業種交流会はいい人が集まる会とそうでない会の差が激しく、またそれを見分けるのも至難の業です。そのため、都会ではできる限りセミナーへの参加をお勧めします。

次に地方都市の場合です。地方都市は都会のようにビジネス系セミナーが多く行われているわけではありません。そのため、地方都市ならではの方法を取ります。この方法は都会でも使えるので、都会での開業を考えている方も参考にしてください。

まず、あまりにも人口が少なすぎる地域。ここでは行政書士の仕事をやっていくことが非常に厳しいといえます。人口がない=法人がないという地域では、行政書士の仕事そのものがない場合が多いので、ある程度の人口や法人があることを前提としましょう。

地方の場合、まずは各種の団体に入ることをお勧めします。商工会、商工会議所、同友会などの各地域の団体に所属することで、人と会う機会を得られることが可能になります。私自身は東京ですが、調布市という東京都下で開業した頃は、商工会に所属し、各イベントなどに参加していました。

こういった団体に所属し、人脈をつくることによって仕事は取れるようになるのですが、この地域に属した団体の中でやってはいけないことがあります。それは、「営業をすること」です。特に自分自身が生まれ育っていない地域の団体に入る場合は、より一層注意が必要になります。

こういったいわば血縁・地縁の色が強い団体は、仲間意識も非常に強いのです。そのため、入ってすぐに営業などしてしまうと、文字通り村八分にされてしまう可能性も高いわけです。ここで実践することは、営業よりもやはり「好かれること」です。各団体の飲み会、イベントなどに積極的に参加し、手伝っていく。その中で「仲間」と認められたときに初めて仕事が来るようになります。

私自身も営業することはまったくなく、飲み会やイベントなどに参加し、自分自身を知ってもらいました。期間としては半年。おおよそそのくらいはしっかりとした人間関係づくりをしていくと、自然と仕事が集まってきます。まずは営業をせずに人と人の付き合いをするということが大切です。

なお、こういった団体の中では、「有料相談」はもってのほか。賛否両論あるかと思いますが、仲間なのですから相談でお金を取ることは現実的には厳しいです。会って話を聞き、お友達価格で少し安くして仕事を受ける。だからこそ次の紹介が生まれる。これが成功サイクルです。

実際に私が受けた相談は、お金にならないことも多かったですが、ちょっとしたことでも相談してもらうことができ、仕事を依頼されることにつながりました。このような「人のつながり」を重視していくことがポイントです。

なお、地域とのつながりができたら、あなたも知り合いのお店を使うなどしてみましょう。私も商工会で知り合った方のお店を打ち合わせの場所にしたり、広告会社の方に広告をお願いしたりして自分からお金を使うことで、お客様を紹介してもらったりしました。ただ待っているだけより、非常に効果があるといえます。

そのほかの人に会う手段には、自分自身で勉強会を開いたり、研修会を開く方法があります。参加できそうなセミナーや研修がなければ、自分でつくってしまえばいいのです。ないならつくる、これは起業家として極めて重要な考え方です。

ところで、「あまり人に会える機会がない」「そもそも会える人が限られている」という悩みもあるでしょう。このような場合には、出会えた数少ない人に徹底的に好かれるということが重要です。1000人の無駄な名刺交換より、たったひとりでも徹底的に気に入られたほうが仕事につながります。もしかしたら、そのひとりが100人、あるいは1000人の人脈を持っているかもしれません。

ところで、多数寄せられる相談のなかには、「都会と地方、どちらで開業するのがよいですか?」というものがあります。これに関しては、どちらが有利ということではなく、それぞれにメリットデメリットがあります。

例えば、都会は人口が多く、そのため仕事も多いわけですが、ライバルも多く、報酬は値崩れ傾向にあります。

これに対して地方都市は、都会に比べて仕事数は少ないですが、その分ライバルも少ないです。報酬は都会と同じように値崩れ傾向にありますが、都会に比べればその下降幅は小さいです。

どのような人たちとの人脈を築いていけばいいのか?

人に会うにはどのような人たちに会えばいいのでしょうか。これは重要な問題ですが、答えは簡単です。

それは「自分のお客様になりそうな方」と「仕事を紹介してくれそうな方」です。前者はいうまでもなく、自分自身のお客様になりそうな人に会いに行くわけです。

行政書士の場合、起業家や経営者が主な客層になります。ですから、セミナーであれば「経営者向け」「起業家向け」などのセミナーに参加することです。そこで出会える人たちが、「自分のお客様になりそうな人」です。

後者の「仕事を紹介してくれそうな人」ですが、これは分類すると次のような人たちになります。

①他の士業からの紹介
これは非常に多いです。お客様は行政書士の仕事をすべて知っているわけではありません。そのため「会社設立」専門の行政書士と名乗っていると、お客様に伝わるのは「会社設立」のイメージのみです。入管や相続などの手続きを代行することまでを一気に覚えてもらうのは非常に難しいです。

しかし、他士業、つまり社労士や税理士などであれば、同じ士業であるため、それぞれの仕事の内容を理解しているので仕事の紹介をしやすいのです。

実際に私のところには、「建設業はできますか?」「車のナンバー取得ができますか?」といった専門外の問い合わせもありますが、そのほとんどが他士業からの紹介です。ですから、他士業との人間関係は非常に重要です。具体的にどうつながりをつくっていけばいいかというと、いくつかの方法があります。

まず税理士。税理士は、記帳指導で出会うことができます。開業届を出す際に、税務署から「記帳指導を受けますか?」と聞かれることがあります。この際に「税理士に指導を受けたい」と希望を出すと、地域の当番税理士があなたの記帳を無料で指導してくれます。どんな税理士がくるかわかりませんが、良い税理士に会えれば、一生の付き合いになる可能性が十分にあります。私の場合、この記帳指導の先生が正に当たりで、現在私の会社の顧問もお願いしているほどです。

社労士やそのほかのさまざまな士業に会うためには、ネットで探してメールを出したり、ブログを持っていればそこにコメントを書くなどして、オンライン上である程度のコミュニケーションを取った上で、実際に会うのが良いでしょう。その際、相手の士業が喜ぶような提案を持っていければベストです。

例えば、「今後仕事を紹介したいので、ご挨拶させていただきたい」といったことは最低限必要な提案です。相手は忙しい士業ですから、無理強いはせず、あくまでも「会うことは可能かどうか」を尋ねてください。

これには自分自身の努力も必要です。例えば私には何もなかったので、業務上の情報交換などは不可能でした。そこで、営業やマーケティングを一所懸命実践し、自分の仕事を取りながら、特にブログ・マーケティングに強くなっていきました。その上で、「ブログ・マーケティング系であれば、お役に立てる話ができると思います」と情報を提供するようにしました。自分が欲しいからといって、相手は会ってくれません。相手に提供できるものがあって、初めて会ってもらえると思っているくらいのほうがいいでしょう。

②会員組織や団体組織のトップ
次に会うべき人は、会員組織や団体組織のトップです。いわば、すでに人脈を持っている人たちです。こういう人達と仲良くなれると、次々に仕事を紹介してもらえます。ポイントは、これらの人に出会えたら、ためらわずに安く(もしくは無料で)仕事を引き受けて、満足してもらうことです。満足してもらえれば、今度はお客様を紹介してくれます。

私の場合も、ビジネススクールの経営者などに安価で満足してもらえるサービスを提供した後に、そのスクールから起業する方々の設立手続きの仕事を紹介してくれました。このように、人脈を持っている人からの仕事は、迷わずに引き受けることが重要です。

③コンサルタントや法人向けに仕事をしている人
経営コンサルタントなどの場合、ほとんどのクライアントが法人や起業家です。

コンサルタントはビジネスの問題解決をすることを主な仕事にするわけですから、こういわれれば当たり前かもしれませんが、あなたのお客様候補となる人を多数知っている人たちです。こうしたコンサルティングの仕事をしている人たちと人脈をつくることも、あなたの仕事を増やすことにつながります。

また、法人を相手に仕事をしている人たち、例えば会社のロゴデザインを手がけたり、ウェブサイトなどをつくるデザイナー、あるいはシステムをつくるエンジニアなども、仕事を紹介してもらえる候補として挙げられます。

好かれるためのキーワードは、ハガキ、情報、役に立つ

会った人から仕事を依頼されるために、自分自身の情報を公開し、共通点を見付けてもらうことが重要とお伝えしましたが、それに加えて実践してほしいことがあります。

それは、「感謝を行動で示すこと」「親切にすること」です。文字にしてしまうと当たり前過ぎて、ノウハウとはいえないかもしれません。しかし、行政書士で開業する多くの方が、自分の仕事が欲しいために、ただただ自分の話だけをし、会った人に営業してしまっているのも現実です。

結果としてその行為は悪印象になり、仕事はおろか縁まで遠くなってしまいます。過度な期待を求めることなく、感謝を伝え、親切にすることが仕事を増やす最大の要因となります。

正直、地味です。劇的なノウハウではありません。しかし、半年、1年、3年と続けることで、仕事は口コミだけで広がってきます。こうした「感謝」「親切」の実践をしてほしいのです。

私は会社をリストラされ、何もない状態からスタートしました。ハッキリ言って、「社会人失格」の烙印を押されたと考えていました。行政書士で開業することを決めたものの、こんな若造の言うことなど誰が信用するだろうか? 名刺を受け取ってもらえるだろうか? と不安で仕方がありませんでした。

しかし、いざビジネスシーンに出てみると、年齢や実績などからひとりのビジネスマンとして扱われないケースはあったものの、想像以上の多くの人たちから、ビジネスの相手として扱ってもらうことができたのです。私は心底感動しました。そこで、何かこの気持ちを伝えたい、感謝したいと思っていました。そんなときに「お礼ハガキ」を出すのが良いと知り、「名刺交換のお礼ハガキ」を出すようにしました。

そのハガキを手書きにしたのは、単純に感謝の気持ちを伝えたかったからなのですが、予想以上に反響が多く、そのハガキを受け取ってくださった方から仕事を依頼されることが増えました。これは今でも継続してします。

おかげさまで仕事も多くなり、人に会う機会も増えたために、会ったその日にハガキを書いて送る「即日ハガキ」は実践できなくなってきていますが、どんなに遅れても必ず出すようにしています。

また、それだけでなく、「何か少しでも役に立ちたい」と考えました。本来、行政書士の仕事上の知識や経験からお客様の役に立つことが最高なのですが、当時は業務知識もマーケティングの知識もありませんでした。そこで、「とにかく何でもいいから役に立つことをしよう」と考え、お客様の役に立ちそうな新聞記事やネットニュースなどを、FAXやメールで送ったりしました。またネットが苦手な方には、メール設定のアドバイスなどをしたりして、行政書士の仕事とは関連のないことでも進んで行いました。

その結果、仕事を依頼されたりお客様を紹介されたりしました。

私は23歳で開業したので、どんなことでも抵抗なく手伝うことができました。それまで持っていた小さなプライドは、リストラされたことによってキレイさっぱり消滅していましたので、どんなことでも進んでやりました。

もし、あなたが40代、50代から開業するのでしたら、こういったことに抵抗があるかもしれません。あなたより若いお客様もいらっしゃるでしょう。「なぜ私がそんなことまでしなければいけないのか……」と思われるかもしれませんが、お客様はあなたのことをしっかりと見ています。仕事は親切な人に頼むものです。これを忘れてはなりません。

このように、会った方々に感謝の意を伝えること。そして親切なことをすること。人脈をつくる上で王道中の王道です。

これはすぐに芽が出ず、時間がかかります。しかし、確実に数年後に返ってくるものです。

仕事を口コミで増やす方法の大原則は、「良い仕事をする」こと。そして、感謝の意を伝え、親切なことをすることです。このことはお金も必要ではなく、すぐに実践できることばかりです。

今すぐに実践していきましょう。

出会った人をつなぎ止める方法

一度お会いした人に好印象を持ってもらったとしても、仕事の付き合いがなければ、縁は切れてしまいます。そこで「忘れずにいてもらうこと」が重要です。

そこで役に立つのが、いわゆる「ニュースレター」というものです。本来、ニュースレターは「既存客」に送るものとされていますが、行政書士の仕事は、お客様に左右されるものですから、一度お会いした方には何らかの形で、定期的に接触することが重要です。

方法としては、ハガキで行う、FAXで送る、紙媒体でつくって郵送する、メールマガジンを出すという方法がありますが、私の場合はFAXとメルマガで実践しました。

「FAXニュース」として役立つ法律の情報をわかりやすく書いたものを送りましたが、FAXが一方的に送られてくることは、あまり気持ちのいいものではありません。お叱りを受けることが増え、途中で断念。

そこで名刺交換した方にメールでニュースを送るようにしました。メールが不要な場合は配信アドレスを削除すればいいだけなので、大きなお叱りもなく、定期的な接触ができました。

ニュースレターは必ずやらなければならないものではありませんが、余力がある限りは続けてください。行政書士の仕事は、いつどのように発生するかわからない仕事です。そのときまで、出会った人をつなぎ止めておくことが重要なのです。

インターネットから集客する方法

行政書士の最適営業の第二弾は、インターネット集客です。もしかしたら、あなたもすでに取り組もうとしているかもしれません。インターネットを使って集客する方法は、ほかの開業本にも出ていることが多いので、実践している方は非常に多いことでしょう。

まず前提となるのが、古い開業本のインターネット関係の内容はすべて忘れてください。なぜなら、過去に出ている開業本は、時代の推移とともに使えないノウハウになっていることが多いのです。これは行政書士の開業本に限らず、すべての業界にいえることでもあります。

どんなにベストセラーになった書籍でも、インターネットに関する内容に関しては、時代とともに使えなくなってしまうものがほとんどです。ネット関係の情報は、とにかく最新のものを手に入れるようにしてください。

本書では、ネットはネットでも集客に関する考え方を中心に解説しますので、ある程度長く使えるノウハウといえます。それでもネットの未来は、いつ何時革命的なことが起こるかわかりません。広告の仕組みや規制など、本書が出た後に何が起こるかわかりません。この章の最後に紹介する「twitter」や「facebook」などがなくなることも十分考えられます。本書を基本書として、最新情報を常にセミナーやネットなどで把握するようにしてください。これが前提です。

次に重要なのが、ネットマーケティングを難しく考えないことです。twitterやfacebookをはじめとして、ブログ、SNS、SEO、メルマガ、ポッドキャスティング、ビデオキャスティング、リスティング広告、バナー広告など、インターネットマーケティングを勉強すると、さまざまな専門用語が出てきます。

専門用語が出てくると非常に難しいものと思われがちですが、実際のところはさほど難しくありません。なぜなら、重要なのは「検索エンジンで検索したお客様が、あなたのサイトを見付けて依頼できること」だからです。

つまり、極端な話、サイトを制作し、検索エンジンで広告を出すことができていれば十分なのです。ブログもメルマガもSNSもポッドキャスティングも、「業務を取る」ということに関していえば、不要です。

もちろんないよりはあったほうがいいのですが、あくまでもサイトと検索エンジンで広告を出すこと以外に関しては、補完するくらいの意味です。twitterでつぶやくだけで仕事が取れるなんてことはありえません。時代のツールにただ踊らされては、仕事は取れないのです。

もう一度重要なのでお伝えしますが、ポイントは、「仕事を取るためのサイトをつくること」と、「検索エンジンで広告を出すこと」この2点にのみ特化して準備をしてください。あとは優先順位を低く考えて構いません。
「そんなシンプルなことで仕事が取れるの?」と思われるかもしれません。しかし、お客様の導線を考えれば極めて明瞭です。

仕事をお願しなければならない状況になった。仕事を頼める人が周りにいない。そこでインターネットの検索エンジンで探す。ヒットしたサイトを見て問い合わせる。これが仕事を依頼する流れです。わざわざ仕事をお願いするのに、twitterやポッドキャスティングを見たり聞いたりすることはありません。

もちろん、ポッドキャスティングを聞いたことがあって、その後依頼になったというケースもありますが、優先順位としては、「サイト」と「検索エンジンの広告」なのです。

ネットでは業務特化型サイトをつくる、これを量産していくことです。

次にサイトの考え方ですが、多くの場合、「○○行政書士事務所」と行政書士事務所を全面に押し出し、「取り扱い業務一覧」を掲載したサイトをつくる場合が多いようです。

しかし、そういったサイトでは、仕事を取ることは難しいといえます。なぜなら、行政書士という資格は知名度こそ上がってきているものの、「行政書士」をダイレクトで探しにくる方はまだまだ非常に少ないのです。

お客様は「行政書士」を探しにくるのではなく、「仕事を受けてくれる人」を探しています。結果、その仕事ができるのが行政書士ということなのです。

「行政書士」で全てが通じるのは行政書士だけです。お客様が一見して何をしてくれるのかがわかるサイトである必要があります。
 私の場合は、「会社設立」に絞ってサイトをつくりました。そうした見せ方をすることによって、はじめて来たお客様でも、何をしてくれる事務所か一瞬で理解できるのです。このように、業務に特化したサイトをつくっていく必要があります。

ところで、このような業務特化型サイトは1つしかつくってはいけないわけではありません。「ホームページ=1つ」と考えがちですが、ひとつでなくてもいいのです。

むしろ、業務ごとにサイトをつくっていき、さまざまな仕事を総合的に取ることが、行政書士のネット集客では重要になります。

会社設立のサイトをつくったら、次に建設業許可のサイトをつくる。こうして業務特化型のサイトを量産していくことが、行政書士の仕事を集めるポイントのひとつなのです。

仕事が取れるホームページのレイアウト

業務に特化したサイトをつくるわけですが、一般的に仕事が取れないサイト、反応が悪いサイトは、何でもかんでも情報を入れてしまって、結局は何のサイトなのかがわからなくなっていることが多々あります。

いろいろ書いてあれば、いずれかのキーワードに引っかかって仕事が取れそうな気もしますが、実際のところごちゃごちゃしたサイトは、すぐに「戻る」ボタンを押されてしまう可能性が極めて高いといえます。

なぜ、このようなことがいえるかというと、お客様の立場に立って考えれば一目瞭然です。例えば、あなたが業務用のデスクを買いたいと思ってサイトを検索しているとき、検索エンジンで発見したサイトの中で、「総合会社什器販売サイト」と「ビジネスデスク専門販売サイト」では、どちらのほうに目がいくでしょうか。

間違いなく後者になるはずです。人は、どうせ買うなら、どうせ仕事をお願いするなら、「プロ」に頼みたい、「専門家」に頼みたいと思うものです。ですからあれもこれもという下心は捨てて、専門性の高いサイトを構築してください。

次は、サイトレイアウトのポイントを具体的に解説していきます。

○サービス名は大きく、1回で何の事務所かわかるように
間違っても「行政書士事務所」という文字を一番大きくしてはいけません。重要なのは、何のサービス会社なのかがわかること。つまり、「建設業許可ドットコム(.com)」や「会社設立ドットコム」など、ベタで構わないので、わかりやすい表現を心がけることです。

○お客様の声を掲載する
サイトだけで信頼を得るには、あなたがどんなに自分のすばらしさを主張しても、それがあなたの声だけではお客様に届きません。あなたの信頼を保証してくれるのは、「あなたのお客様」です。そこで、お客様の顔写真、名前、住所(特定されるのを防ぐため、最小行政区画まで)、メッセージを載せた「お客様の声」を掲載しましょう。その「お客様の声」を見ることで、はじめてあなたのことを信頼してくれます。

○電話番号、問い合わせメールは大きく
電話番号は、これでもかというくらい大きく表示させてください。電話をかけたいときに番号が見つからないのは、お客様にとってストレスです。少々派手なくらいに電話番号を大きく記載してください。

なお、インターネットだからといって、問い合わせはすべてメールでくるわけではありません。営業時間外を除けば、電話で問い合わせが来ることがほとんどです。そのため、電話番号がすぐに見付けられることは非常に重要なポイントになるのです。

○プロフィールを詳細に書く
行政書士を選ぶ条件を思い出してください。あなたに良い印象を持ってもらうことが大切でした。そのためには共通点です。あなた自身の出身地、学歴、職歴などの他にも、バラエティに富んだプロフィールを掲載しましょう。当然写真も掲載します。これも名刺の場合と同じく、証明写真のような写真ではなく、笑顔の写真にしましょう。

○よくある質問と依頼の流れを書く
お客様は、依頼する前や問い合わせをする前に、気になることが必ずあります。料金は前払いなのか、地域はどこでも受けてくれるのかなどの疑問を抱えているものです。そこで、よくある質問はまとめて記載しておきましょう。そうすることによって疑問を解決することができ、安心して電話をかけることができます。

同様に、実際に依頼する場合には、どのような流れになるのか、その流れを掲載しておくことによって、問い合わせが増えます。

○専門家提携の声をつくる
提携専門家のホームページへのリンクだけを貼ってあるサイトがありますが、それだけでは提携しているように見えません。お客様の声と同じように、顔写真、名前、住所などを掲載する必要があります。行政書士に仕事を頼んだ後、ほかにもさまざまな手続きがいるような場合、いろいろな専門家と提携していることによって、サイトからの仕事成約率が高くなります。ですから、専門家との提携の項目もつくっておきましょう。

○報酬は必ず記載する
「報酬額を出すと、その金額でやらなければならなくなる。イレギュラーなケースは値段が違うので、報酬額は出したくない」といった意見もありますが、値段の書いていない商品を買うことはできません。

「時価」と書いてある高級寿司にはなかなか手が出せないように、報酬額が記載されていないサイトへは問い合わせができません。この場合、「○○万円~※お客様の状況に応じて、この価格より安くなるケースも、高くなるケースもございます」と記載しておくことで、イレギュラーなケースにも対応することができます。

このように、必ず報酬額は記載してください。

概ね守っていただきたいレイアウトの条件はこのような条件です。その他の細かい要点につきましては、129ページの図をご参照ください。

SEO対策は、本当に必要なのか?

SEO対策とは、検索エンジンで検索したときに、上位表示させるための対策をいいます。例えば、「行政書士」で検索すると検索結果が表示されたときに、1ページ目のできるだけ上位に表示されるように、サイトの中身を工夫することです。これはある程度の技術的知識が必要になります。

「サイトをつくったらSEO対策が必要」。数年前まではこれが鉄則でした。しかし、これは競合が少なかった、サイトが少なかった時代の考え方です。現在はサイトの数も多く、またSEO対策を専門的に扱う会社がありますので、正直素人では手に負えません。そして、この戦いに勝つには多額の投資が必要になります。

よって、SEO対策は優先順位が低く、やらなくても良いものといえます。特に都心部は競争が熾烈です。それよりは広告で勝負したほうが勝ちやすいので、SEO対策は余裕が出てきてからで十分です。

ただし、ある程度の地方都市で、競合がいない場合にはSEO対策は有効です。例えば、「○○市 行政書士」のキーワードで検索しても、行政書士事務所のサイトがほとんどヒットしないような地域では、SEO対策は有効です。

ちなみに、私が東京都調布市に事務所を構えていたときには、競合がほとんどいなかったので、「行政書士 調布市」のキーワードで検索すると、いつも一位表示でした。そのため、インターネットで検索してくれた調布市界隈にお住まいのお客様の数は、想像以上の数になりました。

もっとも効果があるネット広告は、リスティング広告

行政書士は専門家。専門家は探される存在。そのため、ネットでは検索エンジンの表示結果の前の方に表示させる必要があります。これを「上位表示」と一般的に呼びますが、上位表示させるには2通りの方法があります。

ひとつは前出の「SEO対策」。もうひとつが「リスティング広告」です。

このリスティング広告とは、検索エンジンで検索する際に、入力したキーワードに応じて検索結果に表示される広告のことです。例えば、「建設業許可手続き」のキーワードで表示されるように決めて広告を出稿すれば、お客様が「建設業許可手続き」で検索した場合に、上位に表示されるようになります。表示されるだけでは広告料はかからず、クリックされたときに初めて広告代金を支払う仕組みなので、費用対効果の高い広告です。サイトをつくったときには、このリスティング広告を出稿するのがネット集客上もっとも効率的です。

このリスティング広告には2種類あり、ヤフーの「ヤフーリスティング」と、グーグルの「アドワーズ」があります。理想は両方の検索エンジンに出稿する形がベストですが、まずはヤフーリスティングから出稿してみましょう。

キーワードは、「お客様が行政書士を探す際に入れそうなキーワード」にします。「さいたま市 建設業許可依頼」ですとか、「調布市 会社設立」などです。どのキーワードにすれば問い合わせが取れるかは、地域の専門業務ごとに変わってきますので、広告を出稿し、アクセス数とクリック率、電話がかかってきた回数などから、何度かテストしてみることが重要です。

キーワードを決めるとき基本ルールとしては、「地域+業務名」「業務名+地域」「行政書士+地域」「地域+行政書士」などです。これらを中心に、お客様が入れそうなキーワードでテストしてみましょう。

さて、キーワードを決めた次に考えるのは広告文です。リスティング広告もその名のとおり広告なので、広告文を考える必要があります。広告文には文字制限があり、大見出しとして○文字、説明文として○文字表示させることが可能です。これもこの言葉を入れれば成功というものはありませんが、これにも一定のルールがあります。そのルールは、「キーワードが大見出しに入っていること」と「顧客対象をハッキリさせること」、そして「信頼感を持ってもらうこと」などが挙げられます。

広告にかける費用の基本的な考え方

広告を出して仕事の問い合わせが入り、実際に仕事が取れたら、広告料を上げていくことを考えましょう。広告を出して売上が伸びたら、その伸びた売上げの一部を広告にまわします。この「再投資」を繰り返していくことで、仕事は継続的に集まってきます。

一般的に、「販促費ゼロ」「広告費かけずに」やることが行政書士業界では美徳のように思われている節がありますが、大きく売上を伸ばすには、果敢に広告費を投下していく必要があります。

ひとつ例を挙げましょう、広告費ゼロで売上1000万円と、広告費3000万円で売上4500万円だと、どうしても前者のほうがいいような気がしますが、後者のほうが利益は多いのです。あなたが行政書士事務所の売上をもっともっと伸ばしていきたいと考えているのであれば、広告費として使う金額を上げていかなければなりません。

ソーシャルメディアを活用してネット集客を補完する

原則として、仕事をネットから取るにはサイトとリスティング広告で十分ですが、その成約率を上げるためのツールとして、「ソーシャルメディア」は有効です。

ソーシャルメディアとは、ブログやtwitterなどの個人が情報を発信するツールのことです。行政書士に仕事を頼む場合、あなたの個性をお客様は重視します。そのため、個人の情報発信であるソーシャルメディアは、ネット集客を補完する役割を果たすのです。そこで、その活用方法について簡単に解説します。

○ブログ
ブログはもはや当たり前のツールとなりました。あなたのことをよく知ってもらうためのツールとして、ブログは有効なツールです。ポイントは、「アメブロ」を使用することと、プロフィールを充実させること、そして「依頼したい」と思ってもらえるような記事を書くことです。

「アメブロ」は、日本最大級のブログサービスです。以前は「楽天日記」や「ライブドアブログ」が隆盛だった時代もありましたが、今後はこのアメブロが中心になるでしょう。

単にアメブロを使用するだけでも、いろいろな交流があります。

次に、サイトの原則と同じで、ブログのプロフィールを充実させます。特にアメブロは細かい趣味なども掲載できるようになっているので、細かく記載することで共感を得られやすくなります。

最後に記事の内容ですが、これは「実践型ブログ」といって、日々仕事を一所懸命やっている姿を書くことをお勧めします。お客様は、一所懸命に働いてくれる人に仕事を頼みたいものです。日々仕事をしている姿を書くようにしましょう。

○SNS、twitter、facebookなど
これらのソーシャルメディアは、最近は登録者数が多いので、はじめてみるのもいいでしょう。これだけで仕事がくることはありえませんが、事前にソーシャルメディアを見てから仕事を依頼するケースもあるので、意外と侮れません。

登録しておくものとしては、SNSなら「mixi」に登録しましょう。そして今後は普及が予測されるtwitterやFacebookにも、登録だけはしておきましょう。

使い方はブログと同じく、プロフィールを充実させることです。余力がない方は、ブログと同じプロフィールで構いません。あくまでもネット集客の補完ツールですので、まずはサイトとネット広告に力を入れていきましょう。

このことを実践することによって、あなたに行政書士の仕事の問い合わせがくるようになります。しかしながら、これはまだ第一段階です。次に新人行政書士が超えられない第二のステップを超える方法について解説します。

※掲載されている内容は、作品の執筆年代・執筆された状況を考慮し、書籍販売当時のまま掲載しています。

本書「行列のできる行政書士事務所の作り方」は、当初「Marketing Grip」と改題し、POWERCONTENTSPUBLISHINGより加筆編集の上再出版される予定でしたが、現在の刊行が未定となったため、現在は横須賀輝尚オンラインサロン四谷会議でその改変原稿を読むことが可能になっております。

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