ザンダレル王国崩壊記
「ここに封筒が二枚ある」
一目見て、解った事が二つ。
この女はクズだ。とびきりの。
そして美人だ。とびっきりの。
「青い方には五万、白い方には十万ゾル入ってる。どちらかあげる、っていわれたら、どうする?」
指差す。白。
「だよね。でも」
青い封筒をふり、女は笑う。その口端は、引き絞られた弓に似ている。
「こっちの封筒。実はコレは何故か毎朝五万ゾル入ってる不思議な封筒だとしたら。どっちを選ぶ?」
「寝言が趣味なら酒場に行け。ご同輩が幾らでもいる」
女は肩をすくめる。笑顔が、弓矢が、狙いを定める。
「カネは確かに重要よ。でもそれ以上に重要なのは、カネを生み出すチカラそのもの。私は、それがどうしても必要でね」
そして、放たれた。
刀剣。呪毒。権謀術数。今まで幾度の暗殺を躱して来ただろう。
「廃太子。呪われし弟君。生けるこの国の恥部殿。アナタの血筋が必要だ」
だがこの日。俺は至近から放たれたその矢を、甘んじて受けた。
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