ギガントアーム・スズカゼ 第八話 製作途中版②

この記事はギガントアーム・スズカゼ第八話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
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「……いや」

 目を細めるトーリス。
 彼が目を止めたのは、スズカゼの右足に装着された召喚武装だ。地面に突き立ち、機体を強固に固定している。先の戦闘で用いられた武装の一つ、パイルバンカーだ。察するに、先日のような白兵戦での使用がむしろイレギュラーだったと見るべきか。

「そもそもアンカータイプの性能があれば、あんな姿勢制御用の装備は不必要の筈。全く別の機体の武器を流用している情報は正確、という事か」

 独り言ちながら考えるトーリス。一体どういうことなのか。スパイが裏切ったのか? それとも正体がバレたのか? あるいは正体を承知で泳がされているか?
 ブランケイドに降り注ぐ何撃目かの爆発が、トーリスの思考ループを断ち切る。

「まあいい。今すべき事は決まっている」

 即ち、迎撃である。ウォルタールにいるスパイの事は考えない。申し開きがあるなら向こうからやって来る筈だ。そのように思考から切り捨てて、トーリスはモニタを切る。改めて窓辺へ足を運ぶ。
 さて、どう反撃したものか。腕を組み、トーリスは状況を見渡す。
 着弾し続けるブランケイドは、しかし全く傷ついていない。衝撃で浮遊体勢が少しぐらつく程度。アンカータイプへ抗するにはアンカータイプ。良い判断ではあるが、使う武装が少し強めの武器なのでは、結局痛くも痒くもない。あと百発食らったところで致命傷には到底なるまい。
 さりとて簡単に攻められる位置でもない。いうなれば、今のスズカゼはスナイパーだ。座標自体は把握できているが、当然その位置は相当に遠い。何せ六角形を挟んだほぼ反対側だ。アクンドラ国境から直行して来たのだろうから、当たり前の位置ではあるが。
 そんな場所へグラウカを出撃させたとて、辿り着く前に逃げられるのがオチだろう。あるいは近づく傍から撃墜されるかだ。

「ならば許可が下りたばかりのブランケイドで向かうか……?」

 悪くはない。が、確実に撃破出来る確証はない。逃げる敵を倒すのは、強い敵を倒すよりも厄介である。トーリス・ウォルトフは経験として良く知っている。
 そもそもブランケイドはこのザントイル国に広がる六角形と静寂を維持する要だ。あまり遠くへ動かせば、仮に撃破したとて後から突き上げを食らうだろう。やるとしても最後の手段だ。

「と、なれば」

 方法は一つ。トーリスはプレートを操作し、ブランケイド経由で六角形へコマンドを入力。平坦で無表情だったオレンジ色に、呼応する光の波紋が一つ走る。その上空、またしても撃ち込まれたスズカゼの長距離射撃がすれ違う。狙い過たぬ超音速弾は、しかしブランケイドに届かない。直下のオレンジ色から、突如現れた巨大な防護魔法の壁。それが弾丸を受け止めたからである。

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