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クビの配達引き受けます #8

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 直角の連続する、電子回路じみた奇妙な稲妻。曇天に閃くそれを頭上に、ヘカトンケイルmk-Ⅵは突撃する。巨大四本腕を器用に組み合わせた、大質量かつ大推力のハンマーパンチ。
 標的は無論、電柱上のアーマード・パルクールだ。

DOOOM!

 轟音。爆ぜ飛ぶ電柱先端。ヘカトンケイルはなお勢い止まらず、ビル壁へと突き刺さる。

DDOOOOOMM!!

「わおド派手」
「ミサイルさながらだね」

 各々雑感を述べるザジとモリス。当然と言うべきか、突貫はAPに当たっていない。激突直前で横っ飛び回避したのだ。

「いやはや遠目で見た時から薄々そんな気はしておりましたがにんともかんとも乱暴なAIでございますねえ戦闘用のプロトタイプとなればそれが正解ではあるのでしょうけれどもいやはや」

 重力制御装置を調整するサンジュ。アンリミテッド・アーマーは今、反対側のビル窓へ、垂直に立っている。足下にはラティナ家からの映像を中継する巨大モニタ。映りだしているのは、脂ぎった、不自然な頭髪の中年。口角泡を飛ばしながら主張を熱弁するその顔に、モリスは覚えがあった。

「ああ、誰かと思えばガヤリ叔父殿じゃあないか。成程成程」
「何か心当たりが?」
「ああ、色々とね。けど今は」

 ばごん。ビル壁面へ腕の二本を突き刺し、豪快に反転するヘカトンケイル。胴体中央、赤い防護シールドに守られたモノアイが、ぎょろとザジを見上げる。
 そのレンズに映り込むのは、影を固めたような色のアンリミテッド・アーマー。

 ターゲット確認。残りの二本腕を構えるヘカトンケイル。その先端が展開し、大型のガトリングガンが顔を出す。
 照準、を合わせるより先にターゲットは動いた。砲身が回る。

 たちまち吹き荒れる銃弾、銃弾、銃弾、銃弾の嵐。ビル壁が、巨大モニタが、映っていたガヤリ・ラティナが蜂の巣となる。

 だが射線上にターゲットは、ザジは居ない。スラスターを噴射し、弾雨の下へ回っていたのだ。そしてザジの直下には、背が低い雑居ビルがあり。
 その屋上へ備え付けられた水タンクの縁を、ザジは滑らかに蹴る。サンジュの重力制御により、ベクトルは鋭角に転換。ガトリングガンがそれを追おうにも、既にザジはヘカトンケイルの目前に迫っており。

「接敵確認。モード変換」

 ヘカトンケイルは素早くガトリングガンを収納、再び鉄塊と化した両腕を、APへ振り下ろした。

 右拳。ザジはスラスター推力で回避。
 左拳。ザジは、あろう事か手甲上に着地。

 振り抜かれる遠心力を、重心制御とスラスター推力でねじ伏せる。ねじ伏せながら、ザジは腕を這い上る。猿《ましら》のように。

 瞬く間に、APはモノアイ正面でぶら下がっており。
 右手には、一挺のハンドガンをぴたと構えていて。

「では、まずご挨拶をば」

 ゼロ距離、AP弾、全弾発射が、ヘカトンケイルの目を撃った。

【続く】


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