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大人世代の「似合うものが分からない」の処方箋

「自分に似合うものが分からない」と、ファッションイベントなどで読者の方によく相談された。主にファッションコンテンツを中心とした40代の女性の方のためのwebマガジンだったため、「ファッションがずっと好きだったのではないのですか?」と驚いていた。

「好きなもの」をなぜ着ない!?

TPOを気にしないシチュエーションならば、「好きなもの(自分の気分が上がるもの)を着れば良い」というのがそれまでの私の持論だった。ある時、正直にそう答えたら、「大森さんは自分に自信があるから」と言われ、そんな風に考えてはいなかったので意表をつかれた。

自分の周りで自分のようにおしゃれを楽しんでいる人がいない」という悩みを打ち明けてくれた読者もいた。「ならば、自分だけで楽しんでいればいいんのではないですか?」と返したら「浮いてしまう。おしゃれをすると、派手だど後ろ指をさされてしまう」と。まわりに着道楽が多い生活をしてきていたので、その言葉を聞くまで考えてみたことがなかった。

「おしゃれの正解」に万能はない

さまざまな「似合うものが分からない」という意見と対峙した。金銭的ではなく、精神的に縛られ、自分の好きな物を自由に着られないという悩みがある方々の存在を知った。

それからは企画で「これを買えば正解」という切り口の提案をできるだけ避けるように意識した。正解を提示することで、たとえば安心して買い物ができるようになるかもしれないが、鏡を見つめてふと「これって、本当に似合ってるのかな?」と思う。そんな無限ループに入ってしまうのではないだろうか、と。おしゃれの正解は時に万能ではない。「似合う」とはサイズだけではなく、テイストや色だけでもなく、ライフスタイルや考え方など、その人のすべてが包括されて導き出されるものだと思うから。

「褒められる場所」を探す

前置きが長くなってしまった(苦笑)。

「似合うものの探し方」の現時点での私の結論は、「自分が好きなものを着て、褒められる場所を探す」だ。コミュニティに合わせて「好き」を我慢し、「自分の似合うがわからない」と逡巡するくらいなら、とにかく自分の好きな服(自分が着たい服)を着て、「それ、可愛いね」とか、「なんか、今日、いいじゃん」と言ってもらえそうな場所を。つまり、自分をいつわらずに褒めてもらえる場所を探すことをオススメする。

現に、その媒体で集まった読者の方同士、キャイキャイとおしゃれ談議をしていてとても楽しそうだった。何回も足を運ばれていた方がどんどん垢抜けていったケースを幾度となく目の当たりにした。「新しいバッグを買ったら、いつも近所では隠しているけど、ここなら堂々と見せられるし、可愛いって言ってもらえるし、嬉しい」という言葉も聞いた。おしゃれすることに、罪悪感のようなものを覚えていまう人がいる。日々、いろいろな役割を生きる女性たちは、役割から解放され気軽におしゃれトークができ、軽妙に褒め合える場が圧倒的に足りないのだと言うことも知った。

「1回の褒められ」のインパクト

ファッションブロガーのMBさんに取材をした時、「人里離れた場所ではおしゃれになれない。なぜなら、どんなにおしゃれを頑張っても褒めてもらえる可能性があまりにも少ないから」と。

100回の試行錯誤より、1回の褒められ、が効く。わざわざ褒められにいく。全身じゃなくてもいい、鞄につけたキーホルダーでもいい。スカーフの巻き方を工夫する、でもいい。とにかく手堅く。ホームランではなく、セイフティバントを狙う。

自分の仕掛けたものに反応があると、確実に自信となる。

しばらくするとボールをあてにいくだけではつまらなくなり、大きくスウィングしたくなるかもしれない。空振りするかもしれないけれど、それでも清々しさが上回る。失敗もまた、「似合う」への近道である。繰り返せば、ある時、間違いなく芯でとらえた感覚を引き寄せる。そうなれば打率が上がる。もう、「似合う」を考える必要はなくなる。

誰かに「似合う」をずっと決めてもらう人生もアリだが、最終的には自家発電を。おしゃれは、毎日、自分で自分のご機嫌をとれる最適なツールと考えるなら、自分のご機嫌はいつでも自分でコントロールできた方が良いに決まっている。

「褒められトラップ」上手に

自分の「好き」を褒めてもらえる場所を探そう。誰か1人でいい。そこにいるその人に褒めてもらうことを目指すだけでいい。手堅く褒めてもらえる罠(⁉︎)を仕掛けよう。そして、褒められたなら、相手のことも褒めてあげよう。なぜなら、もっと褒められやすくなるから(笑)。

作為的すぎると思われるかもしれないが、「これが私には似合う!」と自信をつけるにはこれが確実で手っ取り早い方法だと思う。

最後に、ファッションに向き合う気力が湧かないのなら、ファッションから思い切り遠ざかることも必要だということも念を押したい。真正面から向き合わないことで現状を打開できることは多い。ファッションはライフスタイルの一部だから尚のこと、だ。

自分の「似合う」は他人が決めることではなく、最終的には自分でそう思えるかどうかにかかっている。「青い鳥」と一緒。案外近くにあるものなのに、遠回りして初めて手に入るものなのかもしれない。

とにもかくにも、まず、いつもと違う場所に出かけよう!







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