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パリでこっそりお茶をする


お茶するのが大好きだ。
お茶と言っても私の場合はエスプレッソが多いけど。
ただ白状すると子供のときは両親が東京の下北沢でお茶屋さんを営んでいて、朝から晩まで緑茶ばかりだったので子供の頃は「コーラ飲みたいよう。」と思っていた。

でもフランスに来てからは日本に帰国するたびにお茶をどっさり買い込んで、フランスでも頻繁に飲んでは元気つけていたっけなあ。

逆に日本に行くと、エスプレッソが無性に飲みたくなる事があり、一度確か日本橋の<イリー(Illy)>に行って注文したときに、「お客様、エスプレッソって何のことかご存知ですか?」と突然つっこまれて面喰らったのを覚えている。

15年位前のことだったか。
確認しておかないで後から「何だこれは。」とでも言われた事があったのか。

今ではもうそんな事ないだろうけれど。


フランスで暮らし始めてから、特に仕事を始めてからはエスプレッソは私の生活にとってなくてはならないものになった。朝早くに家を出て、カフェ(喫茶店、或いはコーヒーハウスの事)にて目を覚ます為にカウンターでエスプレッソを注文する。


物書きをするためによく行く近所のカフェのサーヴィス担当のマリーさんはもう私がエスプレッソしか頼まないことを知っていて、他にも常連客(大抵は新聞を読みに来る人)に対しては目が会うと何も言わなくてもエスプレッソを持って来てくれる。

これって何か特別感があって気分良かったりもする。

しかもここのカフェはガラス張りで室内とテラスが仕切られていて、天候によって閉めたり開放したり出来るので、閉めていても外は見えるし、晴れた日に開ければ空気が肌に染み透る様で気持ち良い。
私のお気に入りの席は窓際で外向きなので作業する時は集中できるし、目が疲れたらぼ〜っと外を眺めることも可能である。

ただし常連でツーといえばカーというのも時々困ったことがある。

ここのエスプレッソは以前は2、4ユーロであった。
マリーさんだとレシートはくれないので、大抵はテーブルの上に置いておくと取りに来てくれるか、帰り際に渡しに行く。
フランスのカフェでは各テーブルごとに担当者が定まっており、例えば会計して欲しいときに誰にでも頼めるのではなく、担当者を呼ぶか、或いはレジまで自分が出向くかしなくてはいけない面倒なシステムがある。 

それは店によって様々である。慣れてくればおよその検討がつくが、最初は戸惑う場合もある。

ところがある日、ピッタリ小銭があったのでテーブルに置いといたら、近くに来ても取ってくれない。
仕方がないので帰りに直接渡しに行くと、「そういえばエスプレッソは2,7ユーロになったのよ。」と彼女なりのさりげない言い方で、私の方も「きゃー、やだー知らなかった〜。」と、お互いに気まずい雰囲気にならずに済んだ。

マリーさんでなかったらちょいと恥ずかしい思いをしたかもね。

値上げに関してはこのご時世だから仕方ないことだと理解できるし、その後ここのカフェは界隈で一番高いエスプレッソになってしまって小銭でも積もると財布が痛いなあと思う事もあるけれど相変わらず通っている。

私にとってカフェは生活の一部だからね。

しかし、友人と喋りこむときなどにはちょっと気に入っている<隠れ家的なスペース>を選ぶことが多い。

最近お気に入りの一つはrue du Bac (バック通り)近くのボー・パッサージュと言う空間の中の<ピエール・エルメ>。
このボー・パッサージュのボー(beau)とは、フランス語で美しいと言う意味で、ここの室内はともかくテラス席も外側の道路からは見えないようになっていて、他にはない雰囲気、俗世界から脱出したような気分になれる。
写真のように美しく、また優雅と言う表現がまさに当てはまる。

ここのコーヒーはとても美味しいが、やはりピエール・エルメだとマカロン付きのセットを注文してしまう。
お昼をここでとる場合でもクラブハウス・サンドよりマカロンを頼む。
ここのマカロンは特に味わいが奥深いと思う。
 
私は元来あまりマカロンのヒトではないのだけれど、ここと<カレット>のマカロンは好きである。
<カレット>と言うティー・サロンも私はロケーション的にヴォージュ広場しか行かないが、そのクォリティー(と値段)の高さは絶賛している。

こことボーパッサージュの(限定。同じピエール・エルメでも他の場所は今回は対象外)ピエール・エルメを比べると後者に軍配が上がる。

ピエール・エルメ


何故かというとカレットのテラス席は通行人が真横を通ったりして騒がしいのが私の唯一の問題点だが、ボーパッサージュのピエール・エルメではそれがない。

以前はこのスペースには修道院があったそうで、と、ギャラリーを覗き見していた私に一人の奥様が話しかけてきた事がある。
はあ、だからこのスペースからは隔離されたような雰囲気が漂っていたのか。
限られた空間のテラスをおよそ8〜9店舗程の飲食店(と言ってもオープン当時は三ツ星レストランのシェフの店が集まって話題を呼んだ)で分け合う。
大通りからは見えないし、かと言って、狭苦しい感が全く無くて空気を充分吸っている感がある。

私は閉所恐怖症ではないが。

ピエール・エルメがここに店を出した時から私の気持ちは変わっていない。

それ故にその考えを保ちながらもごく最近であるが、さらに新しい発見があった。

カフェ・グリフォン 中側。


場所はマレ地区のど真ん中。
なのにずっと気がつかなかった。
すぐ外はあの<フラン・ブルジョワ通り>であり、今こそはマレ地区のシャンゼリゼと言われたりもするが、13世紀のフランス王のフィリップ・オーギュストの時代にパリの中心にあった城塞の一部が通っていたところ。
その一角にあった<ラ・タニエール(隠れ家のフランス語)>が現在の私のお気に入りのカフェ・グリフォンである。


ここは室内もあるが、まさか通り抜けると隠れ家テラスがあって、屋根はないから雨がふったら駄目だけれど、スペースも広いのでソーシャル・ディスタンスもバッチリといった、しかも通りからは全く見られずにお茶やアペリティフが出来るとはとは誰も思わない。
パラソルもあるので無駄な日焼けの心配もない。
昔は貴重品を隠したり、お偉方の休息場所に利用したそうだ。

食事は冷凍ものなどを一切使用していないとのこと。クロック・ムッシュにはバジリコペーストやパルミジャーノが入っていて美味しいので要チェック。

奥がクロック・ムッシュで手前は単なるサラダ。


値段は決して高くない。
ただ私的には昼の12時からの営業なので朝カフェが不可能なのが唯一の欠点。
そのかわり夜は結構遅くまで営業しているので室内のバーやラウンジで飲んで騒ぐのもイケるかも。
勿論ティータイムの為に来るのもO.K.

前回のブランチ編でもやはりこれからのパリの飲食業界立て直しに期待すると声を大にして訴えた私だが、その気持ちは益々強くなりそう。
例え一見美しく美味しそうであっても、客の期待に答えられないと長持ち出来ないかもしれない。

その点今回紹介の店はいずれも、店員の接客態度も感じ良かった。
高級ホテルのラウンジでお茶も良いが、滅多に味わえない雰囲気、特にフランスの歴史を肌で感じながらの午後の一時もなかなか価値あるものかと思う今日この頃。








 

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