解雇が「無効」ってどういうこと?
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
先週ひねった首の痛みが未だに続き、右腕もジンジンと痛みます。
首を傾けると少し楽なのですが、ずっと傾けていると今度は背中が張ってくる・・・
体って全体的に繋がっているなぁと実感しつつ、とにかく早く治って欲しい気持ちでいっぱいです。
さて、首といえば「クビ」。
ということで、今日は、解雇が無効になるとはどういうことか、についてです。
私の首の痛みも無効になればいいのに・・・
解雇の要件
期間の定めのない労働契約をしている労働者を解雇するには、少なくとも30日前に解雇の予告をするか、即時解雇をしたい場合は平均賃金30日分の予告手当を支払わなければなりません。
さらに、解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効です(労働契約法16条)。
無効になったらどうなる
法律上「無効」というのは、最初からなかったことになる、ということです。
無効だと判断された時から消えてなくなるのではなく、最初から存在しなかったことが確認される、ということです。
ですから、言い渡した解雇が無効だと判断されれば、解雇を言い渡してから無効と判断されるまでの間も従業員としての地位があったことになり、その期間に相当する賃金も支払わなければならないことになります。
無効の主張はいつまでできる?
無効の主張と比較されるのが、「取消し」です。
取消しの場合は、取り消した時から取消し対象の法律関係がなくなります。
また、取消しができる期間にも制限があります(民法126条)。
これに対して、無効の主張に時間的制限はなく、いつでもできます。
では、解雇の無効についてもそうなんでしょうか。
解雇された従業員が退職金を受領して、他の会社に再就職して平穏に生活していると思ったのに、突然、当初の解雇が無効だったと主張することは可能なのでしょうか。
確かに、法律上は無効の主張に期間的な制限もないし、状況も限定されていません。
しかし、裁判上は、「権利失効の法理」(民法1条2項、労働契約法3条4項「労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない」)により、あまりにも酷い無効の主張を制限しています。
つまり、解雇された労働者が異議を留めずに退職金を受領して他の会社に再就職し、かつ解雇処分から長期間が経過していて、どうみても解雇処分を承認していたとみられるケースや、解雇処分を承認していたかどうかはわからないものの解雇後長期間が経過しているケースでは、解雇無効の主張は信義則上許されなくなります。
ただし、どこまでいけば「長期間」といえるのかについては、ケースバイケースです。おそらく、期間の長さだけでなく、他の様々な事情も考慮に入れた上で判断されているものと思われます。
不安定であることは変わりない
やむを得ない事情で解雇せざるを得ないことはあるでしょう。
しかし、解雇はいつその無効を主張されるかわからないという不安定さがつきまといます。
解雇相当事案であっても、できるなら合意退職という方法を取り、合意書の中に、今後退職の有効性や未払賃金の存在を争うことはしませんし一切の債権債務は残っていません、という文言を入れておけば、後々訴えられるのではないかという不安がつきまとうことはなく、安心できますね。
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