内部通報者の保護
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内部通報者の保護

弁護士檜山洋子

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 私のnoteもあと少しで1年が経ちます。

 特定の分野で第一人者になろうとすれば1万時間を費やす必要があると聞きました。毎日2時間を使って労務問題について書いたとしても、1年で1000時間にも及ばない・・・1万時間に達するには約14年かかる計算・・・

 1年間書き続けると重複するテーマがチラホラ出てきて、最初のうちは「これはもう書いたな」などとテーマを選別していたのですが、そのうち何度書いても良いかもしれないと思い始め、最近では過去に書いたかどうかにかかわらずその日の気分によって書くようにしています。

 しかし、これをあと13年間続けると、同じことを何度も何度も書いてしまいそうで。2年目は労務以外にも対象を広げようか・・・それとも第一人者への道を進んで行くか・・・2年目を目前にして悩んでいます。

 ということで、最近コンプライアンス窓口から会社の体制改善につながるとてもいい通報を受け取ったので、今日も過去のnoteと重複するテーマですが内部通報者の保護について軽く説明します。

公益通報者保護法

 企業の不祥事は、企業内部にいる従業員からの内部告発によって発覚することが少なくありません。日々の業務に従事している従業員が、社内の実情を知りえる機会が多いからです。

 しかし、従業員は、会社に雇われていますので、会社の中にある不祥事を正々堂々と公にすることに抵抗を覚える人もいるでしょう。会社側からすれば、会社の内部事情を公にされてしまうと、存続の危機にさらされることもありますから、内部告発をする方もされる方も必死です。

 そこで内部告発者を保護して、企業の不祥事を早期に発見できるようにしたのが、公益通報者保護法です。

保護の対象

 公益通報者保護法で保護される通報は、特定の法律に規定された犯罪行為に関する通報です。

 “特定の法律“といっても、保護の対象となる法令は個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律ですから、かなり多くの法律が対象とされています。

 具体的な法令名は、公益通報者保護法の別表に、以下のように定められています。

一 刑法(明治四十年法律第四十五号)
二 食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号)
三 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)
四 日本農林規格等に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五号)
五 大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号)
六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号)
七 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)
八 前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの

 第8号には、「前各号に掲げるもののほか、個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護にかかわる法律として政令で定めるもの」とあり、「公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令」において、458個もの法律が定められています。

 ほぼ全ての犯罪についての内部告発が保護されると思っていいと思います。

保護の対象となったらどうなるか

 会社が内部告発をした人を解雇しても、その内部告発が公益通報者保護法で保護される対象となるものであれば、その解雇は無効となります。

 また、会社は、保護される内部告発をした人に対して、降格、減給その他不利益な取扱いをしてはなりません。

保護の要件

 内部告発は、告発先によって、その保護の要件が以下のように定められています。

1 告発先が企業内部の場合

 コンプライアンス相談窓口等の相談窓口、ホットラインだけでなく、社外の弁護士に依頼して設置している内部通報窓口もここに含まれます。

 これらの窓口に通報する場合は、①不正の目的でないこと、及び、②法令違反が生じ、または正に生じようとしていると思ったこと、が必要です。

 実際にその法令違反が存在していることや、法令違反があると信じることについて相当な根拠があることは要件とはされていません。

2 告発先が行政機関の場合

 行政機関といっても、処分や勧告等をする権限のある行政機関です。

 このような行政機関に対して内部告発をする場合は、①不正の目的でないこと、及び、②当該事実が真実であるか、真実であると信じるに足りる相当な理由があること、が必要です。

3 それ以外の第三者の場合

 マスコミなどに内部告発するような場合です。最近は、意外とこれが多いかもしれません。

 このような第三者への内部告発が保護されるためには、①不正の目的でないこと、②真実であると信じるに足りる相当な理由があること、及び③企業内部等への通報では解決できない事情があること、が必要です。

 告発先が内部であれば、できるだけたくさんの情報を収集するために、法令違反の恐れがあるかもなという程度の不確かで些細な情報でもそのような情報の提供者は保護されるのに対し、会社の外部に情報が出される場合は、会社の社会的な評判が不当に傷つけられることのないよう、要件は厳しくなっています。

法律改正

 公益通報者保護法は2020年6月に改正され、従業員数が300人以下の中小事業者を除く事業者には、2022年6月までに、内部通報に必要な体制整備等、例えば窓口設置、調査、是正措置等をすることが義務付けられました。

 ただし、300人以下の中小事業者であっても、完全にフリーというわけではなく努力義務はありますので、これを期に積極的に導入してみましょう。

 内部通報に必要な体制の整備は、結局は会社自身を守ることに繋がりますよ。


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弁護士檜山洋子
ヒヤマ・クボタ法律事務所共同代表/ 弁護士・米国ニューヨーク州弁護士・MBAホルダー/ 業務は企業法務と社外役員/ 現在、神戸大学大学院で知財を勉強中/ 愛・誠実・楽しみ・挑戦の人生を生きています。