子犬を迎えたらすぐにすべきことって?

子犬を迎え入れるとき、ペットショップで、ケージやトイレシーツなどを準備し、住環境を整えますよね。それから、ドッグフードを選んで、フードボウルやドリンクホルダーなど、食べ物に関する環境を整えると思います。

そのあと、健康診断を受けたりしますが、そのとき獣医師さんから、「狂犬病」と「混合ワクチン」が終わるまで、お散歩しないようにと言われることがあるかと思います。ですが、実はその時期は非常に犬にとって重要な「社会化期」なんです。

今日はその「社会化期の過ごし方」について、ご紹介します。


犬の社会化とは?

社会化とは、飼い主やその家族と社会的な絆や愛情を形成し、社会的な行動パターンを学習していくことを指します。

犬には、生まれてからいくつかライフステージがありますが、そのライフステージのうち、生後20日~14週目(3.5か月目)頃までを「社会化期」といいます。この社会化期では犬の探索行動が増加し、新しい刺激に対して興味を持って、触れていくようになります。また、その行動の結果も学習し、その後の人生におけるおおよその行動パターンを形成し、すべての社会的なやり取り、刺激、状況への反応の仕方に影響していきます。また、社会的に接触する人間や他の動物への愛着も形成されるといわれています。

つまり、この時期に「お散歩=楽しい」「飼い主=楽しい」と認識されると、犬の残りの人生において、ずっとその反応が継続するんです。

一方、8週目くらいから徐々に恐怖心が芽生え始め、新しいものへの興味を上回っていくようになります。12週目頃から徐々に社交性が減少し、新しいものへの「警戒心」が高まってくるようになるんです。いよいよ社会化期が終わると「警戒心」が興味を完全に上回り、新しい刺激にしっぽを振ってとびつくのではなく、例えば新しいおやつなどでも、十分に匂いを嗅ぐなど、警戒しながらまず接します。これは、犬にとって危険を回避するための重要な機能として働き始めます。

このようなライフステージをうまく利用し、新しいものや人間の生活環境に慣れさせていってあげることが、犬にとって社会に対する順応力を上げ、ストレスフリーな生活を送らせることにつながっていきます。

Tip
10週齢以前の子犬の場合は、母犬・兄弟犬とのやりとりが重要になります。そのため「動物の愛護及び管理に関する法律」でも、生後間もない犬の販売や展示が禁止されています。譲り受ける場合も、あまり小さいころに親や兄弟と引き離すと、問題行動が多発するリスクがありますので十分に親兄弟と過ごす時間をとるようにしましょう。


何に対する社会化が必要?

では、何に対する社会化が必要でしょうか?実は「今後の人生で犬が遭遇するであろうすべての刺激」に対して社会化をしてあげたほうがよいといわれています。

刺激とは、例えば

・人間:飼い主、家族だけでなく、見知らぬ人、制服を着た人、大柄の人、子ども、お年寄り、マスクをした人、外国人、など

・動物:大きな犬、小さな犬、シニア犬、子犬、猫、鳥、他に飼っている動物など

・音:車、バイク、バス、トラックなどの乗り物、ドライヤー、洗濯機、掃除機などの家電製品、花火、雷などの自然現象

・その他の状況:人混みを歩く、車、電車、バスなどに乗せる、など

Tip
特に犬はバイクや大型車の音や家電製品の音が苦手です。練習しておくようにしましょう。

他にもご家庭特有の刺激(例えば、酪農家の方は「牛」や「羊」に慣れておく必要があったり、飛行場が近くにあるため飛行機の音に慣れる必要があったり)があれば、そういったものにも社会化期に接触しておくようにしましょう。

でも、どうやって社会化する?

社会化期は生後20日~14週目(3.5か月目)頃までですが、法律により子犬がご家庭に迎えられるのは、早くても生後2か月(8週齢頃)です。そこから3.5か月目までにこれだけの刺激に触れさせるにはどうしたらいいでしょうか?

しかも、ワクチンプログラムが完了するのは一般的に生後4か月目以降です。。。子犬を迎え入れてから、家にずっといるだけでは、貴重な社会化期が終わってしまいます。

犬の安全を守りつつ、犬の社会化を進めるには、こんなことをやってみてください。

■子犬を抱っこ、またはスリングに入れてお散歩に行く
できるだけ、いろんな時間帯でいろんな人と接触しましょう。例えば午前中に幼稚園の前を通って子供の大声や笑い声に慣れさせて、お昼はドッグカフェで他の犬のにおいや姿を見せます(決して子犬を地面に置いたり、他の犬と接触させてはいけません)。また、人通りが多い道や車の往来が激しいところにも行ってみましょう。夜の車道のヘッドライトや音にも慣れるといいですね。一つのルートをぐるぐるするのではなく、新しいものを数多く、いろんなシーンで接触させてあげるようにさせてあげてください。

舗装された道路や手入れされてる芝生などでしたらリードで歩くのもおすすめです!

■パピーパーティーに連れていく
獣医師やペットショップ、ドッグランなどで開催されているパピーパーティーに通いましょう。一度だけでなく、何度もいろんな場所のパーティーに参加することをお勧めします。そのときに、専門家やトレーナーの方がいらっしゃるところだと、心強いですね。私がおすすめすのはこちらです。

■家の生活音を一通り試してみる
犬がこれから接する生活音に慣れるために、家電製品を一通り使ってみましょう。冷蔵庫やテレビなど常時ついているものだけではなく、エアコン、音楽プレイヤー、ドライヤー、掃除機、チャイムの音なども試します。

■友達を家に呼ぶ
友達を家に呼んでみましょう。家に誰かが入ってくること、見知らぬ人との接し方などが学習できます。お友達にはおいしいものを犬にあげてもらうようにしましょう。できるだけ多くの人から子犬におやつをあげると見知らぬ人への警戒心が減っていきますので、100人くらいの人からおやつをもらうことを目標にしましょう(友達を呼ぶだけではなく、お散歩の途中におやつをあげてもらうなどで数を稼ぎます!)

■Youtubeなどで音をかける
花火や雷などは、実際のシーンがこの社会化期に発生するとは限りませんよね。YoutubeやCDなどでこういった環境音がありますので、小さい音でかけるようにしましょう。犬が耳をぴくっとするなどの反応を示さない程度のレベルから始め、徐々に大きな音にして慣らしていきます。「dog, socialize」などで探すと、踏切などいろんな音がありますので、ぜひ様々な環境音を試してみてください。

■電車や自動車、バスに乗る
エンジン音や構内の音など、犬にとって苦手な環境音が多いので、スリングやキャリーに乗せて、短い距離を移動してみてください。また、公共の交通機関を使うときは、必ず各交通機関の持ち込み方を確認してください。基本的には犬の足や頭部が一部でも出ている場合は持ち込みができません。大きさや重さにも制限がありますので、注意してください。

■ボディータッチをする
犬がトリミングやグルーミングを苦手にならないよう、マズル、耳、手、足、しっぽなど体の各パーツを触っていくようにしましょう。また犬につける首輪、リードなども少しずつ慣らしていきましょう。  

Tip
この時期は、刺激が強すぎて犬が「怖い」と感じてしまうと、その経験が一生続いてしまう重要な時期です(トラウマとなってしまうんですね)。新しい刺激に接するときは、子犬が怖くない程度の音の大きさ、刺激の強さにしましょう。もし子犬が怖がっている様子が見られたらすぐにその場を離れるか、少し距離をとっておやつやフードを与えるようにしましょう。「怖いものを見るとおいしいものが出てくる → ということは、怖いもの=楽しいもの」に変わっていきます。何度も繰り返し「怖くないよ、楽しいものだよ」とおやつを使って学習させていきましょう。


この社会化期を逃してしまうと・・・?

わたしも犬を飼い始めた時、この社会化期の重要性を知らず、家から一歩も出さずに育ててしまいました。結果、どのようなことが起こったかというと

・犬と仲良くなれず、近づかれると吠える、威嚇する
・見知らぬ人に警戒心があり、懐くのに時間がかかる
・散歩中にバイクの音がすると足がすくんで動けなくなる
・基本的に散歩嫌い

という状況が発生してしまいました。つまり犬にとって、世の中に怖いことがいっぱいになってしまったんです。。。

嫌いなものや怖いものが多いと、不安になりやすく、ストレスが多くなってしまうため、数多くの問題行動が発生するようになります。例えば、吠える、咬む、など不安からくる攻撃行動や、飼い主さんへの愛着が強すぎて分離不安になってしまう、音や人間、見知らぬ場所への恐怖症などです。

犬が社会化期で学んだ行動パターンを変えるには長期間の行動修整プログラムが必要になってしまいます。程度にもよりますが、我が家の犬は一年トレーニングしてようやく他の犬に威嚇することがなくなりました。友達になった犬と隣り合って寝ることもできるようになりました。ですが、いきなり犬が動いたり興奮した様子を見せると、恐怖がよみがえってくるのか、ケージに逃げ込んだり、わたしの足元に駆け寄ってきます。また友達になるのに、数時間かかります。


子犬を迎えてすぐにすることとは「社会化」

せっかく犬を飼い始めたら、いろんなところに一緒に出掛けたいですし、社会的で誰にでも愛される犬になってもらいたいですよね。

ぜひ、いろんなところにスリングやキャリーケースなどを使って出歩くようにしてください。そして、飼い主さんとその家族との絆を築いていけるよう、たくさん遊んだり、ボディータッチをしてあげてください

社会化期はどんなに長くても1か月半しかありません!この時期は二度とやってきませんし、この時期の過ごし方が一生の犬の行動を決めていきます。この時間の使い方は飼い主さんにかかっていますので、ぜひ頑張ってみてください。

もし悩んでいることやわからないことなどあれば、いつでもコメントください!ご相談に乗ります。




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