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【過去記事】Jordan Diary 97-98③

 97-98シーズンに雑誌「HOOP」に連載していたJordan Diaryの再掲載第3回は、98年3月&4月の話題です。

Jordan Diary 1998年3~4月

            HOOP 1998年6月号&7月号掲載(日本文化出版)

1998年
3月3日(火)

 デンバー戦。リーグに入って3年未満の選手がチームの大半を占めるナゲッツは、この日ブルズに負けてシーズン成績5勝54敗。その負けっぷりはリーグ史上最低記録を書きかえる勢いだ。試合後に「5勝54敗のチームがあるということはNBAにとって健全なこと?」と聞かれたジョーダン、「そんなこと聞かれてもわからないよ。僕はコミッショナーじゃないんだから」と苦笑い。「リーグが成績がいいチームと悪いチームにくっきり分かれてしまっているけれど?」との問いには、さらに苦笑いしながら、「自分が悪いほうのチームにいるのでなければ気にならないもんだよ」と、正直な答えだった。

3月8日(日)
 ニックス戦でエアジョーダンIを履いてプレイしたジョーダン。またエアジョーダンIを履くか聞かれると、即座に「ノー」の答えが返ってきた。
「きょう僕の足にどれだけ水脹れができたlことか。信じられないだろうね。1984年に戻った代償というわけだ。バスケットボール・シューズの技術が最近どれだけ発展したかを物語っているよ」

3月16日(月)
 昨夜遅く、スティーブ・カー夫妻に第三子が誕生した。女の子を予想していたら、生まれたのは男の子だったという。喜んだのは長男で5才のニコラス。「名前はマイケル・ジェフリー・カーにしよう」と提案してきた。ニコラスは、ほかの多くの子どもたちと同じようにジョーダンの大ファンなのである。「ニコラスには『マイケルを崇めるのはかまわないけれど、限界ってものがあるよ』と言ったんだ。わかってくれたみたいだ」とカーは苦笑い。結局、赤ちゃんはジョーダンとは無関係に、マシュー・マルコム・カーと名づけられた。

3月29日(日)
 シカゴ・サンタイムス紙のレイシー・J・バンクス記者が計算したところによると、NBAに入ってからのジョーダンの試合(レギュラーシーズン&プレイオフ)を見に来た観客の人数の累計は、きょうのバックス戦で2000万人を越えるのだという。試合前のロッカールームでその話が出るとジョーダンはおかしくて仕方がないといったように笑いころげ、「レイシー、僕が出場停止になったときの試合はちゃんと省いたかい?省いていないんじゃないか?」とからかった。

4月5日(日)
 今季ブルズとロケッツがそろってファイナルに勝ち進まない限り、この日がドレクスラー対ジョーダンの最後の対戦となる。ジョーダンのシーズン後の去就はまだはっきりしないが、ロケッツのクライド・ドレクスラーは今シーズン後には現役を引退、母校ヒューストン大のコーチになることが決まっているからである。そのドレクスラーはさっそくリクルートを始めたのか、ジョーダンに「君のところの息子(9才と7才)を僕のところ(ヒューストン大)によこしてくれよ」と声をかけた。これに対して、ノースカロライナ大出身のジョーダンは「ちょっと待つことになるぞ。まずノースカロライナのほうにいかせなきゃいけないからな」と答えたとか。

4月11日(土)
 オーランド戦。25本中15本のフィールドゴールを決め、37得点と好調だったジョーダンだが、珍しくフリースローだけは最後までリズムをつかめずに10本中6本をミス。3Q終盤には1本目をミスすると、2本目は左手でシュート。ところがなんと、これはリングに当たらないどころか、1m近く外れたエアボールとなってしまった。試合に勝ったあと、インタビューのためにロッカールームに出てきたジョーダンは開口一番で「あの左手フリースローについての話はなしだよ」と記者たちを牽制。それでも聞かれると「右手で入らなかったから左手でやってみたんだけれど、それもだめだった」と苦笑いしながら説明した。調子がいいときは、目をつぶっても、左手でも決めるのだが、この日はよっぽど調子が悪かったようだ。

4月15日(水)
 ピストンズのグラント・ヒルは、ジョーダンの引退に対してまだ半信半疑だ。この日の試合でマッチアップしたジョーダンをFG25本中7本の19点に抑えたことについて聞かれると「もしマイケルが引退するなら最高のディフェンスだったけれど、もしまだ引退しないなら、単に彼が調子が悪い日だったと言っておこう」と慎重(?)なコメント。ジョーダンにマークされたヒルはFG16本中7本と、ジョーダンよりずっと効率よく17点をあげ、さらに9リバウンド、12アシストも記録した。これに対してジョーダンは「グラントにもこれはフェアじゃないって言ったんだ。だって、彼らはぼくをダブルチーム、トリプルチームで守っていたけれど、ぼくらはダブルチームなしの1対1で彼を守っていたんだからね」とのこと。

4月17日(金)
 今季限りで引退したらこの日がフィラデルフィアでの最後のジョーダンの試合ということで、フィラデルフィア・デイリーニュース紙はなんとこの日の新聞に52ページのジョーダン特集をつけた。実に様々な角度からジョーダンを取り上げていて、「史上最高?(ウィルト・チェンバレン対マイケル・ジョーダン)」「プロ初期」「ジョーダンは止められるか」「素顔」「後継者」「金・金・金(スポンサー)」「バスケットボールへの影響」「社会への影響」などなど。これにはジョーダンもびっくり。
「これだけの時間をかけてくれるとは。まだ全部は読んでいないし、全部が正確かどうかはわからないけれど(笑)、これだけのことをやってくれて感謝しているよ」

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