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書評 相続対応とグリーフケア

未来を創る朝読書
令和元年 8月28日
相続対応とグリーフケア
加藤美千代 著
経済法令研究会 版

本日は、感情の揺れを知性で整え、社会的課題として焦点付けした方の1冊。
愛知県よろず支援拠点ではIT担当として活躍していた加藤美千代さんの書籍です。
喪に対する心理的・社会的に必要な膨大知識を知性に変換し、グリーフケアをマナーとして社会に根付かせようとされています。

私が彼女と知り合ったのは、2014年。
東京で開催されたよろず支援拠点のコーディネーター研修でお隣同士だったご縁。起業相談に県の振興センターに出向き相談を重ねていた流れで、よろず支援拠点のコーディネーター就任を依頼されたという経歴しか知らず、当時は彼女の起業テーマがなんなのか詳しく知ることはありませんでした。

その後、彼女の個人FBに週一に投稿されるおふぃすワニベの内容から、喪のギフトに取り組まれていることを知りました。
よろず支援拠点でもそこそこ忙しくされている中、毎週の報告で、起業の形も整い続けていることが淡々と報告されていました。

なぜ、喪のギフトなのか。
なんとなく、立ち入っては行けないい領域のように感じられ、特に改めてお聞きしたことはないのですが、年に一二度顔を合わす折に、お聞きした内容から、彼女が息子さんを病気で亡くされていること、喪中の方の心に沿った、喪のギフトをつくろうとされていることを知りました。

この本を通じて、彼女が察しても余りある哀しみの出来事を通して、喪に対する新しいギフトを通じてグリーフケアという社会的マナーを創ろうとしていることを知りました。
同時に息子さんをなくされた具体的な出来事も、初めて知りました。
息子さんをなくされたという事実を知ったのはもうずいぶん前。
私が安易な言葉を謹んでいる間に、彼女はずんずん前に進みました。
 
少子高齢化というのは、かってない、多死社会に突入したということです。にも拘わらず、死にたいする、感情教育はあまりにも立ち遅れている日本。
個人の哀しみをステップに、グリーフケアという社会的課題を焦点付けその解決を図ろうとされている、加藤さんのお仕事。

感情の揺れ蓋をせず受け止めてきたからこそ持てた他の遺族との交流に彼女の女性性を感じます。
また自己と遺族のありようを客観視し、どのようにすればグリーフケアを社会に根付かせることかできるのかという男性性があります。
 
この本は、金融機関のみならず、あらゆる場面で必要になるであろうグリーフケアを実際に学べます。
そして個人の問題を社会的に課題に焦点付け、ビジネスとして社会的課題を解決しようとされる一人の起業家の初版にして、名著です。

公的機関に所属する全ての方に一読していただきたい本です。

京都で「知的資産とビジネスモデルの専門家」として、活動しています。現在は内閣府の経営デザインシートの普及に勤めています。