「経営デザイン」京都で実践するひと

◇デザインは幸せと豊かさを実現する

   今、ほんとうに大きなパラダイムシフトの真っただ中にあると感じています。世界情勢から気候変動まで。地球環境の変化、自然破壊のすさまじさを思えば、70年代の「公害問題」など本当に端緒に過ぎなかった。

   それでも、私たちは当面この地球で生きてゆかなければならないし、生活を石器時代に戻すわけにはいかない。と、考えるとどれだけ、環境と調和し拡大成長ではないところで、「幸せ」を見つけ「豊かに」生きてゆくか、が問われている。

だからと言って「清貧」を目指すのもまた違う。

  経営をデザインするという考え方の中には当然そういった、この時代に生きる人それぞれの「幸せ」「豊かさ」をどう実現するのかという視座も含まれている。
 問題解決の方向を人間を中心におく、デザイン思考をおし進めれば「幸せ」と「豊かさ」は顧客のものだけではなく、経営者のそれも従業員それも当然守られる、もしくは創造されるべきもの。

 人間観察をベースにした共感と問題定義、そこから最適解を創造し、プロトタイプ小さく創り、試してみる。このスパイラルを経営と呼び、そこから創出される価値は、「幸せ」と「豊かさ」という目的を達成しようとしているものだから。ただし、「幸せ」と「豊かさ」を実現しようと思えば、一定程度の経済は、利益という形で保証されなければならない。

◇伯食屋のビジネスモデル
 京都市内、西院に一号店を開店した伯食屋は、従来の飲食店の「固定概念」どころか「売上拡大」という命題さえも一旦リセットしたとことから始まったお店。

 一日、百食販売すれば店を閉める。
 食材にこだわり、原価率は50%
 広告費は一切使わない。                      
 原価率を30%に落とし、広告費を10%かけるなら、おいしさにこだわり、広告は出さない方を選ぶ。

 オーナーの中村朱美さんは、インスタ映えという言葉がまだなかったころ、写真映えする美しい盛り付けは、シェアされることを予感したという。

 開店当初こそ、集客に苦労し廃棄を余儀なくされることもあったとのことだが、やがて個人ブログをきっかけに、ブレイク。14席の店が満員になる。そこで、彼女たちが下した決断は、ランチのみで百食。時間ではなく、完売したタイミングが閉店時間としたこと。

◇デザインは意志とゴール

 お客が来れば、どんどん食べて頂く。ランチのみといわず、夜は別メニューとお酒をだして単価を上げる。人手不足で従業員がすぐ見つからなければ、割増賃金を払って長時間働く、当然それは単価に上乗せされる。    

 一般的には、これを成功と呼ぶのだろうけど、そこに流されず、創業時に夫婦で決めた、「本当に働きたいと思える会社」をつくる、全ての出来事への対応基準、意志決定の基準をそこに置いた。「働きたいと思える会社にする」そのゴールに向けて、行動し続けた。

◇固定概念ではなく自分で決めたゴールへシフトする。

 固定概念でものごとを発想すれば、伯食屋のように自分で決めたゴールへは行くことができない。そもそも、自分でゴールすら決められない。事業にも人生にも「これまで」と「これから」は必ずある。パラダイムシフトといっていいぐらいの転換期にいる今、思考が「これまで」から抜け出せない状態であるのは危険ですらある。これまでをいったんリセット。あらゆる場面でこの強さが求められている。


 

 




京都で「知的資産とビジネスモデルの専門家」として、活動しています。現在は内閣府の経営デザインシートの普及に勤めています。