浄瑠璃淵(じょうるりぶち)の由来 (その2 全3回)
そこはお金持ちのカネタカ長者のお屋敷だったんだ。そこにはね、とても美しい浄瑠璃という娘さんがひとりいたんだ。鳳来寺の薬師如来にお参りしてから授かったというんでねそりゃあ大切にかわいがられていたのさ。皆から浄瑠璃姫と呼ばれてね、その美しさは日に日に輝いていくようだったんだって。
義経たちがこの矢作の村に差し掛かった時の事だよ。十日二十日と山道を越えて野宿をしながら歩き続けて来たからね、義経もお供の者たちもひどく疲れてきていたんだ。そこでお供のキチジが休ませてもらえるかと頼みに行ったのさ。
「このようなひなびた所で何のおもてなしもできませぬが、何日でもお泊りくだされ」
と言ってくれたんだよ。義経たちはしばらくお泊りさせてもらうことにしたんだ。カネタカ長者のお屋敷の中は一気ににぎやかになったよ。浄瑠璃姫はお屋敷の中の人としか会ったことが無かったからね、義経たちと会ってとても嬉しく楽しかったんだね。浄瑠璃姫は義経たちとお話をする時にはね、コロコロと鈴のようによく笑ったって。
でもね、奥州へと旅立つ日がやって来てしまったんだよ。義経には平家に負けてしまった。源氏をもう一度立て直すと言う大きな夢があったからさ。
「今一日、いいえ、今一時でよいですからここにいてはもらえませぬか」
浄瑠璃姫はね涙を流しながら義経に頼んだんだよ。でもダメさ。
「浄瑠璃姫よ。これから奥州へ行かねばならぬ。これは母の形見のウスズミという名の笛じゃ。この笛をそなたに預けておこう。いずれまた、会う時が来るまでにな」
と一本の笛を差し出したんだよ。浄瑠璃姫はね、何も言わずにその笛を両手で受け取るとねいつまでも胸に抱きしめていたって。義経たちがいなくなると浄瑠璃姫は毎日ずっと遠い空を見つめていたって。
今日はここまで、読んでくれてありがとう!かわいそうな浄瑠璃姫。義経と一緒に旅立ちたかったんだね。いよいよ明日は最終回。お休み、ポン!
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