小山城(おやまじょう)の落城 その2(全2回)


姫は大井戸の淵に手をかけると、炎で焼かれて行く小山城をしばらく見つめていた。
「三途の川(さんずのかわ)とやらは、この井戸の奥にあったのですね。今日は七夕(たなばた)、水はさぞ気持ちの良いことでありましょう。」
姫は手に持っていた杖を足元に置くと、その大井戸の中へと身を投げてしまった。この時、姫が井戸の脇に置いた、その杖からはイチョウの根が生えてきて、そのまま根付いて大きなイチョウの木になったという。

小山城が落城した日が7月7日だったから、それ以来、小山では七夕は他の所のように、にぎやかにはしないということだよ。それから小山城が敵に囲まれた時、小山城の周りにはトウモロコシの畑がたくさんあったんだ。小山城の家来たちには、どうやら、そのトウモロコシが敵の槍や旗指物(はたさしもの)に見えてしまったらしい。霧が深かったし、大きな鬨の声(ときのこえ)を聞いてしまったから、恐ろしかったこともあって、勘違いしちゃったんだね。そんなことで小山ではトウモロコシは縁起が悪いといって、あまり作らなくなってしまったとのことだよ。

落城して、暫く経ってからのこと、村人たちが、このお城の大井戸の近くを通ると、女の人のすすり泣く声が聞こえるというんだ。そして、大井戸の脇のイチョウの木の枝を折ると、真っ赤な血が流れ出てくるというので、誰一人その木を傷つける人はいないんだそうだよ。

最後まで読んでくれてありがとう。

お休み、ポン!

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