【考え事】シュートフォームと得点力

■ 独特なシュートフォームの先輩

 中学のバスケ部の1つ上の先輩で、独特なシュートフォームの先輩がいた。普段は結構ヤンキーだったため、制服はカッコよく仕上がっており、お友達もカッコ良い人たちだったので、校内で会う時は別の緊張感があったが、部活中は普通に話すことができた。

 スラムダンクの三井寿が得意とするスリーポイントシュートは、中学生だと筋肉が発達していないためなかなか届かない。私自身も中2の後半ぐらいから届くようになったような気がする(今の子達は筋肉も身長も発達しており平気で届くのかもしれない)。

 その先輩はスリーポイントを打つ時に、腕を左の腰ぐらいから右上にうねっと持ち上げるような形でスリーポイントを打っていた。身体もネジっているので決して真っ直ぐではない。さらに下から腕を持ち上げるため、シュートの体制に入ってから打つまでの時間が長くなる。バスケのきれいなシュートフォームは以下のサイトなどを参考にして欲しいが、その先輩のフォームは決してセオリーに沿ったものではなく、いいフォームとは言えなかった。

■ 驚異的な得点力

 しかしその先輩はむちゃくちゃシュートが入った。なぜそんなに入るのかは見ていて不思議だったが、とにかく入った。ゆっくりなハズのシュートフォームだが、左下からシュートが始まるため、ドリブルとの区別がつかず、いつの間にかシュートに入っているため、マッチアップしてみると傍で見るよりかなり速く、身長で勝っていてもカットはできなかった。

 今でも記憶に残っているが、ある試合でその先輩は1人で70点を決めた。70点がどれほど凄いかはバスケをやっている人なら分かるだろう。バスケでは1試合20点決めれば大活躍で、チーム合計でも70点決まらないことが多い。NBAでは史上6人らしい。プロ野球の完全試合が歴代15回らしいので、だいたいそんな感じの記録である。

 70点と言えばスリーポイントで換算すると23本決めなければいけない。確かその時の先輩はスリーポイントが13本で、残りは2点だったような記憶がある。とにかく両チームの誰もが意味が分からないぐらい入っていた。私もスリーポイントをよく打つタイプだったが、1試合の最高得点は25点ぐらいだったような気がする。とにかく70点は異次元の得点だ。

■ シュートフォームは手段

 「シュートフォームをきれいにしなさい」とはよく言われており、きれいなフォームで打つ練習はしていたが、あの変則フォームで70点を取られてしまうとフォームなんて関係ないんじゃないかという気になる。

 確かにセオリー通り、肘から手首までを真っ直ぐゴールに向けて真っ直ぐ離すとボールは真っ直ぐ飛んで左右にブレにくくなるため、あとは距離の問題となり入りやすい。しかしフォームがきれいな人が得点力があるかと言えばそうでもない。

 現にNBA史上最高のシューターと呼ばれているカリーは、シュート体制に入ってから0.2秒ぐらいでボールを離している。「え?」という速さでスリーポイントを打つ。明らかに適当に投げている。しかもスリーポイントラインの3歩後ろぐらいから打つ。しかしそれが4~5割の確率で入る。ディフェンスなんてやってられるかという感じである。

 つまりフォームがきれいなことは得点力向上に繋がるが、得点力がある人のシュートフォームがきれいだとは限らない、という事だろう。必要十分ではない、という事なのだろう。イチローの振り子打法も、野茂のトルネード投法も、独特ではあるけれども本人なりの感覚にチューニングされて最適化されたフォームだったのだろう。あれだけ結果を出されると周囲からのアドバイスは無意味だし、とても文句は言えない。

■ その人のスタイル

 おそらくプロの世界では全てがセオリー通りの人よりも、人それぞれに本人のスタイルを持った人が多いのだと思う。集中環境の作り方でも、プレゼンの仕方でも、コードを書く姿勢でも、その人が集中してハイパフォーマンスを発揮できる時には、本人が意識しているかどうかは別としてその人のスタイルが出るのだと思う。

 私も講演やホワイトボードで何かを説明している時にそのモードがあるらしく、話し方かジェスチャーか全部かは分からないが、とにかく内容を伝えようとしている時に何か出ているらしい。

 周りの人のそういうスタイルを見つけて教えてあげると、その人の武器や強みに磨きがかかるかもしれない。

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