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新しいコードを見つけたい。

ベネチアビエンナーレが開催中ですね。
現地に行く予定はないので、できるだけメディアの関連記事を読むようにしています。で、多少知ったつもりになったりもしますが、仮に、そうして事前に知り得た情報をもって、実際の展示を目にすることができたとしたら、自分の中にある情報が上積みされたり、横に拡がったり、あるいは根を張ったりするんだろうなあと思ったりします。

さて、マイホームタウン、東上野。
みんなのギャラリーでは、「香月恵介 作品展」が5月9日で終了しました。
今後、モネの作品を見る機会があるときには、香月恵介の作品が私の頭に浮かぶだろうなと思っています。マスターピースと現在進行形で進化するアーティストの作品が繋がり、両者の取り組みを比較できる。今はまだ見えてない繋がりが別の場所に続くのではないかという予感。今後の新発見が楽しみです。


次にギャラリーで発表を控える、threeの作品に、Displayシリーズという作品があります。
ふわっとした話になってしまうけれど、香月のPixel Paintingがディスプレイの絵画化であったことを思うと、両者の作品の繋がりについて考えてみたくなります。

three, 20V型 Display, 2022年


香月の作品を通じて、モネの絵に関して知り得たことがあるけれど、考えてみると、香月の作品に描かれているモチーフ、例えばルーアン大聖堂の絵は、過去に実物を見たことがあったかどうか記憶がありません。ルーアン大聖堂が建っている場所にも行ったことはありません。ネット社会の今、ディスプレイの中の世界で完結することは、仕事でも生活でも増える一方ですが、ディスプレイを通じて知覚することのほとんどはまだ、実体験が伴わないものかなとも思います。

コロナ禍以降、展示自体のあり方についても考えるようになりました。周りを見渡しても、ディスプレイを通じて展示内容を伝えることの可能性が色々と模索されていました。個人的に、オンライン展示の可能性は今後もっと進化して欲しいなと思う面もあります(ベネチア、ルーアンが少し近づく)。とはいえ冒頭にも書いたように、知るということと体験との結びつきは依然強くあるように思います。ディスプレイを通じて知覚する世界がその域を完全にカバーする時代は、果たしてくるのでしょうか。


香月、threeのディスプレイをテーマにした作品は、オンラインとオフラインの世界を激しく行き来する現代ならではの作品なのではと思います。両者の作品には、ディスプレイを通じて知覚する世界、あるいはデジタルとの繋がりがありつつ、作品自体の物質性もまた強調されている。作品と対面することで、当たり前に受け入れてきたデジタルというものについても再考が促されるように思うのです。

そのようなことを考えながら、threeのDisplayシリーズ新作をギャラリーに迎えます。この展示以降しばらく、オンラインとオフラインで見せ方を少し変えてみたいと思います。ネットといった場では、作家の作品シリーズにフォーカスし、そのシリーズについて紹介していきたいと思います。そのためこちらでは個展を開催しているように見えるかもしれませんが、実際のギャラリー空間の方では、毎回フォーカスする作家のシリーズ新作と、過去作や他の作家の作品とを合わせた展示空間を作りたいと思います。香月恵介作品展で展示した一部の作品も引き続き展示します。

音楽のコード(和音)のような空間をイメージしているのですが、どうなるでしょうか。きっと色々なコードがあり得るはずですし、ご覧頂く方もコードの中の音になっていただけるといいなと思っています。
上野にお越しの際はぜひ、お気軽にお立ち寄りください。

NewChord_#1 - three "Displays"
5月25日(水)ー6月11日(土)
13:00-19:00
休廊:日曜日



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