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冬は、つとめて。
雪の降りたるは、いふべきにもあらず。※霜のいと白きも。
また、さらでもいと寒きに、火などいそぎおこして、炭もてわたるも、いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶(ひおけ)の火も、白き灰がちになりて、わろし。  

清少納言 『枕草子』の冒頭より

冬は、早朝(がいい)。
雪が降っている早朝は、言うまでもない。※霜が真っ白におりたのも(いい)。
また、雪や霜がなくてもとても寒い早朝に、火を急いで起こして、(いろいろな部屋へ)炭を持って行くのも、(冬の朝に)大変似つかわしい。
(しかし、)昼になって、(寒さが)だんだん薄らぎ暖かくなってゆくと、丸火桶まるひおけの火も、(ついほったらかして)白い灰になって(しまっているのは)、よくない(=似つかわしくない)。

https://shingakunet.com/journal/exam/20170327212914/ より現代語訳


冬の記憶は断片的、冬眠したがる動物の記憶と、仕組みに従わされる人間の体がせめぎ合う季節のためか。この記憶は誰の記憶?わたしの?あなたの?かれの?

2月、東京芸術大学作曲科では作品提出が行われていた。一番福を求めるように、最初に提出する学生。譜面が黒くなっていくと共に、顔が青白くなる学生を見かけるのはよくある光景だった。


この物語は”断じて”フィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。


スコアの作曲家は没頭して制作すると、周りが見えなくなり空気を読めなくなることがある。ASD的傾向があると言うべきか?

あまり好きな言葉ではないけれど、俗な言い方だとKYだ。

K=「空気」、Y=「読めない」で、「空気が読めない」という意味である。あるいは、直接「KY」と忠告すると、「空気を読め」という意味になる。

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」


学生「次の提出、頑張ります」

YK先生「頑張って書くと・・・・」(不安そうに)

ある学生はモーツァルトとベルク、シェーンベルク ((「ナポレオンへの頌歌」に興味を持ちつつ )) を参考に一心不乱に弦楽四重奏を書いていた。



<途中、芸大が国からの助成金を大幅カットされるニュースが耳に入るが> 



そして、曲を書き上げ、空気を読んでタイトルをつけた。(((これだけ書けばいい点取れるだろう)))

ナポレオンへの頌歌しょうか
《原題、Ode to Napoleon Buonaparte》シェーンベルクの語りと室内楽のための作品。1942年作曲。フランス革命後のナポレオンを非難する歌詞に、ヒトラーに対する怒りをこめた作品として知られる。ナポレオンボナパルトへのオード。

出典 小学館デジタル大辞泉



レッスン室にて

Y先生「(タイトルの)『Disruptio(羅)』って『Disruption(英)』でしょ?皆んな、戦々恐々としているよ」

学生「はあ、、」


Y先生「モーツァルトのパロディみたいだな」

学生 「モーツァルトが好きなのかな〜と思われるかなと」

Y先生「そうは聴こえないよ〜」


学生「あ〜、なんか、○×△☆♯♭●□してる感じが出てるんだと思います」

Y先生「う〜」(涙目)


(どうなるんだろう?)作曲棟の廊下でY先生は頭を抱えて歩いている、T先生に肩を抱かれて。


学生  (((  Y先生具合が悪いのかな〜?お大事にね〜  )))



提出後、Y先生がドアを開けて

Y先生「ぎりぎりだったよ〜(小声)」 

「でも、それでいいんでしょ?」

学生「は~い」

Y先生「たいしたもんだ」

学生 ((( ? )))


ホール棟の蛍光灯が照らす薄暗いエレベーターの前で、退官される背の高い厳しい教授が、熱気立ち上がるような「真っ赤な顔」で学生を見ている。(憤怒の表情)


学生  (((   血圧が高いのかな??お大事にね〜  )))



春になって



作曲棟でT先生が血の気が引いた「青ざめた表情」で
学生の顔を覗き込んでいた。 


学生「おはようございます」

T先生「お、、おはよう」

学生 (( ? ))


第2講座ガイダンス


K先生「曲のタイトルには、気をつけなければいけません....」(横向き)


学生 (( ? ))


上野駅近くの飲食店で


学生「そうそう、室内楽のタイトル『Disruptio』ってつけたんだよ。
英語でいうとDisruption(崩壊)」

学生B「そのせいですよ!そういう意味ですよ!」

学生 (( 笑 ))


(彼は、その時気づいた)


〇〇的な体制は崩壊し、厳しい先生が一人いなくなったので、作曲棟は少しだけ明るくなった。


なぜに、そのようなタイトルをつけたのか?
彼の記憶には全く残っていない。


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全く意図してないのだが、音程の使い方がベルクの「抒情組曲」1楽章に似て(最初が反行系)、結果的にコミカルなパロディみたいになっている。「抒情組曲」は背の高い厳しい教授の愛好の曲とされていた。


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短編集 「春夏秋冬〜事象の地平面」へ続く

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