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ベルリン滞在記vol.1 パブリックスペース編

ベルリンにいる間に滞在記の記事を更新しようと思っていたらあっという間に一週間の旅程がすぎ、早くも猛暑の日本に帰ってきてしまった。

とはいえいろいろなことを見すぎて咀嚼するのに時間がかかっていたのもまた事実。自分自身の振り返りも含めて、いくつかのトピックごとに書き残していきたい。

まずはベルリンのパブリックスペースについて、僕が見聞きしたり学んだことを書いていこう。ちなみにここで言うパブリックスペースとは、「公共による設置、管理の空間」という意味ではなく、公園も含むけれども市民が自由に出入りできて、居場所とできる空間くらいの意味合いで捉えてほしい。

Berlinerは太陽が好き

まず前提として、ベルリンの人々は陽の光に当たることが好きらしい。そもそもベルリンは緯度が高く、夏が短い。実際、僕がいた最終日のあたりは8月のお盆も終わってないというのに、完全に気温は秋のそれだった。そして、白夜とまではいかないが、夏の日没も遅く、21時台までは普通に明るく外で活動ができる。ゆえに短い夏の日を最大限楽しもうという雰囲気が街全体にあって、カフェやバーも外の席から埋まっていくので、満席に見えても室内は意外と空いていたりすることもよくあった。そして、ドイツといえばビール、夏といえばビアガーデンというのはベルリンも同じで、そこかしこに夏季限定のビアガーデンが出現していて、またそれがセンスがいいのである。ちなみにドイツ語でも日本と同じBiergartenという単語らしい。

湖と太陽、そしてビール

Berlinerは太陽とビールに加えて湖も好きである。ベルリン中心部最大のTiergartenにあるCafe am Neuen Seeはそれを集約したような空間で、貸しボートが浮かぶ湖畔に、DIYで作ったようなキッチン、折りたたみ式ながら木製のベンチとテーブル、たっぷりの生ビールとドイツ料理。一角では手作りの結婚式なんかやっていて大変素敵な空間だった。ベルリン初日にここを訪れた僕たちはすっかり気に入ってしまったのだけど、ここはむしろかなり「設えがちゃんとした」パブリックスペース(まあそもそもカフェ・レストランなのだけど)だということがすぐにわかっていった。

なにもなくても楽しめる

森があって、湖があって、散策路があるような公園も素敵なのだけど、一見なにもないような公園にも出会った。Park am GleisdreiekTempelhofer Feldである。前者はベルリンの中でも比較的郊外というか新しく集合住宅が作られているようなエリアにあって、公園自体もだだっ広い。僕が行けたのはその一部なのだけど、そもそもどこから公園が始まっているのか、どういう管理をしているのかわからない。設えというかランドスケープもラフで、芝生と簡単な舗装の園路、それからたまに備え付けの卓球台や遊具があって、自前の道具で卓球を楽しんでいる人たちもいる(ドイツは実は卓球大国で、サッカーと同じくブンデスリーガというプロリーグがある)。

で、これだけ書くとだだっ広い公園に人なんかいるのかと思うかも知れないが、これがめちゃくちゃいるのである。ほとんどの人が芝生にピクニックシートを広げて、自由に過ごしている。自転車で一人できておもむろに芝生に座って本を読む男子、使い捨てのBBQセットでなんか焼いて食ってるグループ、女子同士で髪を切り合ってる二人(今日あそこの公園で髪切ってあげるよ、とか約束したのだろうか?)、ひな壇状になっているところで割といい音でテクノをかけてチルしている全身真っ黒の集団…とにかくいろんな過ごし方が許容されている自由さがある。それがだいたい22時近く、真っ暗になるまで続いている。(ちょっとこの公園の成り立ちとか立ち位置はもう少し調べます。全然違ってたらすいません)

そしてもう一つのTempelhofer Feldはさらになにもない。こちらは日本語で紹介されている記事もいくつかあるので、知っている人も多いかも知れないが、2008年までベルリン・テンペルホーフ空港だった場所がほぼそのままの状態で、2010年に公園化されている。ほぼ、と言ったのは、一応サインとか、すごく簡単なゾーニング(柵で囲っただけのドッグランや、巨大なゴミ箱がおいてあるだけのBBQエリアなど)だけがされていて、ひび割れた滑走路やススキみたいなのが生えた草原みたいなものはおそらくなにも手を付けていないと思われる。ここでも、芝生では人々が自由にピクニックしたりしている。

あとここには真ん中のあたりに貸し農園があって、そこに居る人達も多い(別に農作業してるわけではなく、ただ居るという感じ)。滑走路とそれをつなぐ舗装路がとてつもなく長いので、ロードバイクやインラインスケート、ジョギングなどスポーツをしている人もかなりいる。あと滑走路のあまり人がいない場所で、凧を飛ばしてバギーみたいなのに乗って風力で走らせる遊びをしている一団もいた。というかこの人達はこの公園がなかったらどこでこの遊びをやるのだろうか。。

ほぼなにもないのだけど、唯一素敵な仕掛けがあって、入り口のところに、守衛室のような小屋を改装した小さなカフェがあって、ここでピクニック用品(カゴと食器など)を貸し出してくれる。

サンドイッチやコーヒーも売ってるので手ぶらで来てもピクニックが誰でも楽しめるようになっている。と言っても僕らしか借りている人を見なかったけど。

ベルリナーは自由でいいな、とここまで読んでくれた人は思うかも知れない。だけど、段々とこの「自由であること」がベルリンの人々にとってものすごく重要なコンセプトなのではないか、ということに気づいてきた。自由さの定義というのは論争の種になりがちで、論争や炎上を避けたいが故に日本では個々人の自由さを犠牲にすることがままあると思う。自由であるために他者に迷惑をかけてしまうことは仕方ないが、どこまでが迷惑でどこまでが許容されるかはその都度議論していくしか本来はないはずだ。それをいとわずに、自由であることを選択し続けてきたベルリンの人々の精神が、この街の他にはない精神を作ってきたのではないか。
公園の使い方を見ても、何かが違うと感じさせるこの街の精神を探っていきたい。

Vol.2へつづく。




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