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クアトロ・ラガッツィ【読書メモ】を書こうと思ったらドラマの感想になった

amazonプライムで見たドラマの原案を読む。

上下巻合わせて1,000ページ超え。長い、長すぎる。

信長晩年に派遣された4人の天正遣欧少年使節のお話。と思いきや、その前後の宣教師やキリシタン大名など一人ひとりにもちゃんとスポットを当てて、各人物像を巧みに掘り下げていく。そりゃ長くなるわ。

伴天連追放へと劇的に環境が変わる中、それぞれの人物の本性があらわになってくるのは、このコロナ禍の世の中に通じるものがある。

為政者である秀吉の心理描写も面白い。「心」の征服、「心」の支配を狙って禁教の絶妙なタイミングを図り、真の統一に導こうとするあたりは、今まさに中国が香港の活動家にやってることと見事に重なる。

人間の本質って400年以上経った現在もまったく変わらん。ひょっとしたらこれから心の拠り所となるような象徴的なものが出てくるんじゃないか。それが宗教なのかあるいは違うカタチなのかはわからんけども。

ところでamazonプライムのドラマのほうも、演技や映像含めとても良質。4人の少年使節の性格とか行動の違いも、あくまでドラマの設定だがストーリー進行によく効いている。

自らの生い立ちに怒りと絶望を抱えながらも、自分の人生や愛の意味を熱く追い続けるようになる伊東マンショ。聖闘士星矢でいえば星矢とか一輝みたいな主人公的立ち位置。

ガリレオに憧れを抱き、やがて活版印刷機を持ち帰ることになる知的好奇心旺盛な原マルティノ。これはドラゴン紫龍。

奴隷の女の子がなぜ船に同乗しているのか。思わずキリスト教に疑念を抱いちゃうクールな面持ちの千々石ミゲル。マザコンっぽいところはキグナス氷河である。

心優しい中浦ジュリアンは、まさにアンドロメダ瞬。(←雑)

やっぱりこうした設定があるからこそ、視聴者が飽きないような冒険譚になるし、ラスボスに挑むロープレ的に楽しめる。ラスボスっていってもローマ教皇に謁見することだが。(もしシーズン2があるなら秀吉や家康がラスボスだが決してハッピーエンドにはならない)

外国人を含めて俳優たちの演技にも引き込まれるものがある。主役4人の若手俳優たちの演技もさることながら、秀吉演じる緒方直人の暴君ぶりもいい。あと最終話のラスボス、教皇のジイさんの演技にはカタルシス感じて涙出た。ちょっと笑えたのが、宣教師メスキータが片言で「お前ら西洋をナメんな!」とキレるところ。この時代に外国人が日本語でナメんなとか言う?

帰国後悲しき運命をたどる4人の聖闘士たち、じゃなくて少年たちのストーリーも、ぜひシーズン2として描いてもらいたい。

いずれにしても天正遣欧少年使節がこれだけ面白い題材とは思わなかった。闇に葬られがちであまり日の当たらない歴史上の出来事を、新しい解釈で世に知らしめることは意義深いことだと思う。

それは著者のこの一言にも凝縮されている。

人間の価値は社会において歴史において名前を残す「傑出した」人間になることではない。それぞれが自己の信念に生きることである。

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