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自分を磨いて「リアルRPG」に挑む、 冒険家・春間豪太郎さんに聞いた「偏愛 のつくり方」【よなよなビアファンド】

2021年4月に始まった、笑顔を生み出す多様性人材“よなよな人(びと)”へのビール投資プログラム「よなよなビアファンド」。「出る杭に心打たれる」をキャッチコピーに、様々な分野で活躍する人をよなよなエールで支援する取り組みです。

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「出る杭に心打たれる。」愛すべき変わり者であふれた世界をつくりたい。

よなよな人に共通しているのは、自分がやりたいと思ったことを探求する「知性」と、それに情熱を傾ける「偏愛」を持っていること。日常生活を送る中で、見失ってしまうこともある「偏愛」ですが、よなよな人達はどうやってそれを持ち続けてきたのでしょうか。

前回、よなよな人第一号として登場いただいた岡島礼奈さんに続き、第二号として今回ご紹介するのは、冒険家の春間豪太郎さん。「偏愛のつくり方」についてたっぷりとお話を伺いました。

<聞き手=ヤッホーブルーイング・よなよな編集部スタッフ>

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【プロフィール】春間豪太郎さん
1990年生まれ。現在は筑波大学に在籍。12年前、行方不明になった友人を探しにフィリピンに行って以来、冒険家として生きることに。主なスキルは複数の語学、船舶衛生管理者、気象予報士、小型船舶一級、応用情報処理技術者。さらには、新宿・歌舞伎町をはじめとする繁華街で身につけた交渉力、護身術など。好物は卵。特にカルボナーラが好き。
http://go-haruma.blogspot.com/

春間さんのこれまでの冒険:
これまでに20数ヵ国を訪れ、冒険に挑戦。モロッコでは、ロバと猫と鶏と犬と鳩をお共に「キャラバン隊」として野宿旅を。その後キルギスで馬、犬、羊と共に旅をし、日本ではヨットでインコとカニと共に日本一周を果たした。ラクダとのチュニジア旅を経て、合計約10,000キロを渡っている。類を見ない旅の様子が世界各地のSNSで話題に。



冒険に傾け続ける「偏愛」

——「冒険家」として、世界各地でユニークな挑戦を続けられている春間さんですが、現在は人生で二度目の大学に入学されて、学生でもあるんですね。

はい。今年4月から筑波大学に在籍していて、ロボット工学を学んでいるんです。

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これまで動物たちと冒険を続けてきましたが、より難しい挑戦として「ロボットを仲間にできればおもしろいんじゃないか」というところと、もうひとつ、ぼくは死ぬ直前まで冒険していたいと思っているんです。

もしこの先、歳をとって体が弱ってしまったとしても、それを補強するロボットスーツのようなものがあれば、ずっと冒険を続けられます。VRなどではなく自分の手足で冒険し続けたいので、それが実現できるようにテクノロジーの研究・勉強をしています。

——「死ぬ直前まで冒険がしたい」と思えるほどに春間さんが惚れ込む、その冒険との出会いはどのようなものだったのでしょうか。

きっかけは、友人の失踪でした。今からもう12年も前ですが、幼なじみが音信不通になって、実家を訪ねても姿がなかったんです。

聞けば、彼のお父さん曰く「フィリピンに行ったきり半年くらい消息不明だ」と。お父さんはアメリカ人で、もしかするともっとあっけらかんとしていたのかもしれないのですが、当時19歳のぼくはすごく深刻に捉えてしまって。「よかったら豪太郎くん、息子を探してきてよ」と言われるがままに、フィリピンに向かったのが、ぼくの冒険家としての始まりでした。

——異国でご友人を見つけるのは、とても大変なことですよね。

当時は英語すら自信がなかったものですから、大変でしたね。高校生のとき、ニュージーランドに数日間だけ行ったことはあったんですが、それ以外には旅行経験もなく、まさか“人探し”のためにひとりで海外に渡るとは思ってもみなかったです。とにかく現地で、情報収集をしなければいけないけれど言葉も通じない。日本とはやっぱり環境もまったく違いますし、名前と写真以外に手がかりもない。ぼくにしてみれば日常とは別世界の体験で、とても難易度が高くて。

結局、彼は無事で、楽しく過ごしていたんですが、そのチャレンジをクリアしたときの快感が忘れられなかったんです。

——これまでの春間さんの冒険を振り返ってみても、難易度の高いチャレンジや、ハードルを自分に課すのがお好きなのかもしれませんね。

冒険って、自分の至らない部分を痛感する旅でもあるんですよ。今の自分には何が足りていないのか。それは体力なのか知識なのか、それとも精神力や咄嗟の判断力なのか。自分と向き合って弱点を知って、それに打ち勝てるかをずっと試して成長していたいんでしょうね。

体験中は、予測不能の「リアルRPG」

——ご自身の冒険を「リアルRPG」と表現されることがありますよね。

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春間さんと一緒に旅する動物たち、モロッコにて

そうですね。もともとゲームは大好きで任天堂の『ゼルダの伝説』をはじめ、RPGにもハマりました。大人になってモロッコをロバと旅したり、キルギスを馬と旅したりしている様子を、友人たちから「ゲームの世界だな」と言われるようになって。たしかにその通りだと思ったんです(笑)。ゲームのようなフィクションのおもしろい世界を、現実に引きずり下ろして楽しんでいる、というのがぼくにとってすごく痛快なんですよね。

——冒険の中で“ゲームらしさ”、“RPGらしさ”を感じることは他にもありますか。

たとえば語学や医療の知識、交渉術、護身術……、一つひとつ武器のようにスキルを身につけて、予測不能のことに挑戦していくところも、通ずるものがありますね。

特に語学は、外側にある世界を開くための「鍵」なんですよね。言葉が通じなければ、出会った人たちに心を開いてもらえることも極端に少なくなりますし、体験できることの幅も変わります。もちろん身の危険に関わることでもあるので、その都度勉強して、英語、フランス語、ロシア語、アラビア語は、旅が成り立つ程度には話せるようになりました。チュニジアではネイティブが話すアラビア語を喋れるようにしてみたら、周りの人からの受け入れられ方がもう驚くほど変わったんです。

——そこを学んで乗り越えるというのが春間さんのすごいところですよね。医療の面でも「船舶衛生管理者」という国家資格も持たれていると伺いました。

航海中の船で手当てに当たる船医のような資格なんですが、モロッコの旅の途中では、仲間の猫を亡くすとても辛い体験もしました。もともと体が非常に弱かったこともあるんですが、動物の治療が自分でできるようになるまでは、次の冒険は絶対にしないとそこで決めたので。キルギスで馬と冒険をするまでに心して取得をしました。

そういった辛い体験さえ自分の力で防げば、冒険にはワクワクしかないわけですから。はたして今のぼくなら救えたか……それは分かりませんが、できることはすべてやるべきだと思っています。

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モロッコを共にしたハトのウィンナ

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チュニジアを一緒に旅したラクダ、シャムス

——たとえ資金が不足することがあっても、それぞれの場所で本当に工夫されていますよね。

それはそうですね(笑)。モロッコでは動物たちを含めたキャラバンとの写真撮影で冒険中の滞在費を稼いだこともありますし、あとは常にパソコンとソーラーチャージャーを持っているので、旅先でも語学やプログラミングのスキルを使って働くことができるんですよね。砂漠でも4G回線が飛んでいる時代なので。星空の下でパソコンを開いて、資金のために仕事をすることもあるんです。そういった体験も全部が宝物ですね。

終わると残るのは、宝石のような思い出

——まさに、そんな「宝物」のような出来事が詰まった冒険の中で、いちばん感動した体験はどんなものでしょうか?

いちばんを決めるには、どれもあまりにも甲乙つけがたいんですよ……。ひとりで見る夕焼けも、星空も、荒野のだだっ広い景色も。

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干からびた塩湖、チュニジアにて

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キルギスのソンクル湖

⑥砂漠の中の野ざらし温泉で野宿した日の夕陽(エジプト).jpg のコピー のコピー

砂漠の中、野宿した日の夕陽

全身で感じ取ったものも最高の思い出ですし、現地で出会った友人たちとは今でも連絡を取り合っているんです。それはもう唯一無二の関係で。我が家のような、安心して帰ることができる家がキルギスにはあるので。それぞれ忘れられないないものばかりですね。

——旅するたびに、「ただいま」と言える場所が増えていくのは素敵ですね。

まさに、冒険は終わったあとも味わい深いものなので。ぼくの場合は、雪山だったり、草原だったり、はたまた砂漠だったり……。異世界での体験たちがそれぞれ、ひとつの“カプセル”になっているようにも感じていて。

——冒険の一つひとつが“カプセル”に。

はい。違う世界で体験した、ひとつのかけがえない思い出としてそれぞれに完結しているんです。なのでそれらが、ぼくの中では宝石のように輝いていて。それをこの先いつでも思い出すことができる、それだけでもとても幸せなことだと思いますね。

春間さんにとって、ビールとは

——現在の大学の同級生とはひと回り近く離れていると思いますが、いかがですか。

尊敬できる友人が山ほどできましたね。特に医学部の友人が多いんですが、勉強はもちろん、たとえば作曲ができる人や、走るのがめちゃくちゃ速くて関東学生新人陸上で決勝進出してしまう人も。本当にすごい友人ばかりですよ。

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——お酒をご一緒されたりするシーンもあるんでしょうか。

こういった状況ですが、20歳を越えたメンバーとは少人数でたまに飲みますね。ロシアでウォッカをたくさん飲めるほど、幸いお酒は強いので(笑)。特にビールが好きなので、コミュニケーションツールとしても大切にしています。

——そういったとき、冒険のお話はされるんですか。

親しい友人であれば話すこともありますね。みんな「死ぬなよ」とは言ってくれますが、たとえ止めたとしてもぼくが行くことはわかっているので、見守ってくれていて。「豪太郎なら大丈夫だろう」と言ってもらえるのは、うれしいことです。

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——春間さんのように、壮大な挑戦を重ねられている若い人がいらっしゃる一方で、たとえばやりたいことに迷ったり、できなかったり。生きづらさを感じている人もいるはずですが、みんなが尖りながら楽しく謳歌していくにはどうすればいいと考えられますか。

ぼくはありがたいことに、冒険はもちろん、冒険を軸に本を出したりテレビに出たり、好きなことをやらせてもらっていますが、その前の段階がやはりすごく難しいな、と思いますね。

よく「レール」とも言われますが、たとえば大学を卒業したらすぐ就職しないと……といった判で押したような流れを求める風潮は、人の挑戦したい気持ちを阻害しますよね。大学に二回入学することも、もっと一般化すればいいなあ、と思います。情報収集のために世界のいろんなところでお酒を酌み交わしますが、世界は広くていろんな価値観や生き方、大切なもので溢れていると思うので。

生涯続ける、冒険のための研磨、冒険での研磨

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——冒険のために身につけられること、冒険の中で身につけられること、どちらも本当に多いと思うのですが、身体的にも精神的にも鍛えられているように感じますか?

そうですね。たくさんの経験を積んだことで、これまでのいろんな出会いがあるので、自分を研磨することの大切さは痛感しています。ぼくは「高所恐怖症」なので、今後、ロッククライミングで崖を越えて野宿する……とかはぜひやってみたいですね。最初すごく苦手だった交渉も、歌舞伎町でしっかり習得することができたので(笑)。できないからこそ、挑戦して攻略する、そうやって鍛えられていくと思うんですよね。

——冒険のためであれば、そこまでストイックになれるんですね。

「できないからこそやってみる」というのは、ぼくにとってはすごくおもしろいことなんです。あまり価値観を押し付けることは好まないのですが、楽しみながら自分を強くするためにも冒険っていいよ、ということは伝えたい気持ちがありますね。

——これからも冒険は当然続けていかれるんですよね。

はい。今までは「砂漠をラクダに乗って横断したい」という夢に向かって何年もやってきましたが、今はカプセル化された一つひとつの冒険の宝石を集めているという感じが強いですね。集めきった先には、10年後20年後、ぼくはきらきらとしたものに囲まれているはずなので。あまりにも幸せな人生なんじゃないかと今から楽しみです。

——宝石を集めるために、冒険を重ねていかれる。

もちろんステージはどんどん上がっていきますから。その分スキルも必要になります。だからこそ、より輝いた宝石が手に入りそうですよね。将来的に、ロボット工学を絡めながらアイスランドに行ったり、来年はアマゾンを横断しようかなという計画も最近練っているんですよ。

——自分を研磨することで、宝石も磨かれていくんですね。

はい。難易度の高いことに挑戦できますし、余裕が生まれれば五感で感じ取れることももっと増えて、たくさんのことに気付けるようになると思うんです。

——これからの楽しい冒険はもちろん、さらなる成長と無事も心から願っています!

これから輝く宝石のような旅に、乾杯!

世界を股にかけ「とびっきり無茶をする」のではなく、しっかりと準備と心得を持って「とびっきり大きなスケールで自分を磨く」。

どこまでも現実的な視点を保ちながら、一つひとつの冒険を「宝石」と語ってくれた春間さんの姿は実に眩しいものでした。スキルはもちろんのこと、きっと春間さんの「人としての魅力」に多くの人が手を差し伸べてくれていることも想像でき、こんなご時世ながら世界中の人にわれわれまで手を差し出して、「ありがとうございます」とお礼を伝えたい気分になります。

また世界中の国々を自由にめぐり、乾杯できる日を祈って!

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「よなよなビアファンド」では、これからも新しい”よなよな人”の発掘や、“よなよな人”への支援を行っていきます。これからの「よなよなビアファンド」も、お楽しみに!

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「出る杭に心打たれる。」愛すべき変わり者であふれた世界をつくりたい。

(おわり)

取材・執筆:中前結花、編集:ツドイ

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