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良い本ほど、人を動かす

「一冊の本で人生が変わった」

というと大袈裟だけど、僕は『日本につけるクスリ』という本を読んだことが、リディラバという会社に転職したきっかけになっている。

出版社時代、毎日のように通っていた書店で何気なく手に取り、当時は共著者の竹中平蔵さんしか知らなかったけど、いかにも考え方が違いそうな2人による対談というコンセプトに惹かれて買ってみた。

読んでみると、よくある対談本のように、ただただ同調し合うのではなく、むしろ積極的に意見をぶつけ合い、ときにそれは激しい。対談というより議論に近く、その内容は刺激に満ちていた。

意見をぶつけ合うからこそ生まれただろう発言も多々あり、自分に刺さるパンチラインが並びまくっていた。

だから、僕が問題だと思っているのは「社会問題があること」ではありません。「社会問題が解決されづらい構造そのもの」です。もっと言えば、「何が問題なのか」が可視化されていないこと、たとえ可視化されても社会問題に興味を持つきっかけがないこと、そして興味を持っても、調べて関わったり継続的に考えたりできないことです。
僕は、なにかうまくいっていないことがあるとき、それは個人の努力不足ではなく「システムが不完全」と考えるべきだと思っています。選挙はそのいい例です。若者の投票率が低いときにただ「若者よ、選挙へ行け!」と主張するのは、ごり押しのマッチョイズム。投票率が低いということは、選挙のシステムが悪いということ。投票率が高くなるように「アクセシビリティ」と「インセンティブ」を改善しなくちゃならないんです。
本質的には「かしこい世論をつくる」のがメディアの機能ですからね。(中略)まず、前提として確認しておきたいのは、メディアの質の低下はモラルや志ではなくビジネスモデルの問題だということ。ジャーナリズムはそもそも受け手が「知りたい情報」ではなく、「知るべき情報」を伝えるのが、その役目です。でもいまは「知るべき情報」を伝えることと、事業者としてのビジネスモデルが一致していないから、受け手が「知りたい情報」だけを伝えてしまっています。

抽出したリディラバ安部さんの発言はじめ、本全体を通じて、その「知」の広さや深さに圧倒されて転職に至った。

転職したのには色々な理由があったにせよ、この本に出合わなければリディラバという会社を知ることもなかったかもしれない。そういう意味では、「一冊の本で人生が変わった」と言える体験だった。

人が動くから良い本だと言えるのか、良い本だから人が動くのか。どちらでもあるし、どちらでもいいのだけど、良い本は人を動かす、良い本ほど人を動かす力を宿しているというのは真理だと思う。

それにしても、こんな本を企画する編集者は相当な敏腕じゃないかと思っていたら、案の定、その後NewsPicks新レーベル編集長になるなど、今後よりビッグになりそうな井上慎平さんだった。

そして、この本の「おわりに」には書籍タイトルへの解として、こんなことが書かれている。

今回のテーマは「日本につけるクスリ」だそうだ。僕の中ではこの答えはわりと明確に出ている。「社会全体に対して当事者意識を持ち、痛みも含めてみなと共有し、ともに未来を作り出していける市民や国民をできるだけ多く生み出していくこと」が、いちばんのクスリだと信じてやまない。他人任せにするのではなく、誰しもが当事者意識を持って自分の生きる社会や国や地域と、その未来を考える。「いまはまだ大丈夫」「自分にはそんな問題関係ないから」という社会に対する無関心を乗り越えてこそ、クスリの効果は見えてくるのだろう。

その一つにリディラバが開催する年一度の「R-SIC(アールシック)」というカンファレンスがあり、今週末7月27日(土)、28日(日)の2日間で開催される。

会場内でリディラバジャーナルの年間購読を申し込めば、『日本につけるクスリ』をプレゼントする来場者限定の特典もある。

「読者と語る、リディラバジャーナルと社会問題の伝え方」という、メディアセッションもあり、今週末、時間があればぜひ足を運んでほしいなと思う。

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