5946. コミュニケーションの商品化&ある画家の方との出会い&ロイ・バスカーの哲学思想への関心

時刻は午前7時に近づきつつある。今し方、ふと自宅の目の前の通りを眺めたら、ジャンバーを羽織って自転車を運転している女性の姿を見かけた。確かに今日はそれくらい寒い。

昨日の日記にもこれから数週間の気温について書き留めていたように思うが、数週間を超えて、7月と8月の双方において、暑さを感じる日が今年はほとんどなさそうだということを月間予報から知った。

そこからさらに先の9月についても調べてみると、当然ながら9月からは一段と気温が低くなっていた。今年はやはり冷夏なのかもしれない。

昨日は街の中心部に行き、かかりつけの美容師のメルヴィンの店と、その近くにあるコーヒー·お茶専門店に立ち寄った。そこでも改めて、この国では人とのコミュニケーションを商品化していないことに気持ちよさを感じた。

現代社会においては、笑顔を含めた感情までもが商品やサービスの一環として組み込まれてしまっており、人間が深層的な部分で触れ合う機会がますます無くなってきてしまっている。そうした潮流に与しない形で、この国では笑顔や会話のやりとりが実に自然であり、見知らぬ人と外でちょっとした挨拶を交わすときや、店で店員と話す際に、人間と交流しているという実感が湧く。

一方で、笑顔や感情を含め、コミュニケーションが商品やサービスの中に組み込まれている文化の中で人と会話をすると、どこか生身の人間と会話をしている実感が湧かないことがある。このあたりは、人間性とは何なのか、人間性の喪失と復権に関するテーマともつながってきそうである。

一昨日に、この秋の講演会に向けて、対談相手を務めてくださるある画家の方とオンラインミーティングをさせていただいた。昨日も改めて、そのミーティング内容について振り返っていた。

そもそも、私はなぜその方に関心を持ったのかという点について改めて考えていたのである。1つには、2つの意味での共感·共鳴があったように思う。

1つ目の意味としては、その方の著書に書かれていた幼少時代の幾つもの体験が自分の体験と外見上は異なれど、体験内容として非常に重なるものがあり、同様の体験を経て成長してきたのだという意味における共感である。ここではその方の具体的にどのような体験が自分のどのような体験と重なっていたのかについて書くことはしないが、幼少時代に置かれていた精神的状況や、将来の自分に対する千里眼的な力に関してはとても重なることがあった。

今から数年前に偶然ながらその方の作品を最初に目にしたときに、私は思わず、「同じものを見ている人がいるんだ」と呟いた。それが2つ目の意味としての共感·共鳴である。

もちろん、全く同じものが見えているわけではなく、見ている世界、あるいは見ている認識次元が同じであるということに大いに感銘を受け、ひどく共感の念を持ったことを覚えている。こうした2つの意味での共感·共鳴をする人というのは現代社会にほとんど存在しておらず、その方の存在を知ったときにはとても嬉しく思ったことが懐かしく蘇ってきた。今回の対談講演会が実現したのも、こうした共感·共鳴と無縁なものではないだろう。

昨日はその他にも嬉しい出会い、ないしは再会があった。私は長らく、成人発達理論に大きな貢献を果たしてきたオットー·ラスキー博士に師事をしていて、彼がテオドール·アドルノやマックス·ホルクハイマーなどのフランクフルト学派の哲学者だけではなく(実際にラスキー博士はこの2人の碩学に師事をして哲学の博士号を取得している)、「批判的実在論(critical realism)」を提唱したことで有名なイギリスの哲学者ロイ·バスカーの仕事をよく言及していた理由が当時はいまいちよくわかっていなかった。

というよりも、当時の私は彼らの哲学思想にほとんど関心を持っていなかったと言った方が正確かもしれない。ところが、昨日何か天啓的な閃きのような形で、ロイ·バスカーの仕事を辿っていこうと思ったのである。

バスカーは、インテグラル理論のコミュニティーの一部や科学哲学のコミュニティーではよく知られている哲学者であり、バスカーもまた統合思想の持ち主であり、ウィルバーの思想とも相通じるものがありながら、ウィルバーにはない哲学思想も持っている。

バスカーについては確かに以前一度、彼の書籍を読み進めていこうと思っていたのだが、そのときにはそれを行うことをしなかった。だが昨日、それを行うのは今だという確信めいたものが降ってきた。バスカーの仕事を辿り、そこから自分の思索を深めていくのは今だと思ったのである。

そこから私はいつものように、バスカーの主著を調べ、自分の関心を引くものについては全て購入しようと思った。ちょうど7月にはその他にも音楽理論関係の書籍や、霊性(スピリチャリティ)の物質化に関する問題を提起している思想家の書籍などを購入しようと考えていた。今のところ、明日か明後日に購入する書籍には下記のようなものがある。

1. Scientific Realism and Human Emancipation
2. Philosophy and the Idea of Freedom
3. Dialectic: the Pulse of Freedom
4. From East to West: Odyssey of a Soul
5. Creativity, Love and Freedom
6. Reflections on Meta-reality: Transcendence, Emancipation, and Everyday Life
7. From Science to Emancipation: Alienation and the Actuality of Enlightenment
8. Metatheory for the Twenty-First Century: Critical Realism and Integral Theory in Dialogue
9. Fathoming the Depths of Reality
10. The formation of critical realism: a personal perspective.
11. Enlightened Common Sense
12.Roy Bhaskar: A Theory of Education by David Scott
13. Critical Realism: Essential Readings
14. Cutting Through Spiritual Materialism
15.The Craft of Musical Composition: Theoretical Part - Book 1
16. The Craft of Musical Composition: Book 2
17. Traditional Harmony, Book 2: Exercises for Advanced Students
18. A Composer's World: Horizons and Limitations
19. Twentieth-Century Piano Classics: Eight Works by Stravinsky, Schoenberg and Hindemith

この夏は、美学、霊性学、群衆心理学などの書籍を読むことに並行して、ロイ·バスカーという1人の哲学者の仕事も丹念に辿っていきたい。フローニンゲン:2020/7/1(水)07:14

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