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不平等は悪ではない。平等こそが悪なのだ。「コードギアス」

今回は、「コードギアス反逆のルルーシュ」について書いてみたいと思う。
これ、屈指の名作だよね。
よくある「歴代アニメ人気投票」みたいな企画でも、1位になることが多いと思う。
監督は谷口悟朗、脚本は大河内一楼
どうやら、このふたりが「原作者」の権利を共同保有してるっぽい。
そして、キャラクター原案がCLAMP
このキャラクター原案というのが一体どういう仕事なのかはよく分からんが(ストーリー作り等には関わってないはず)、でもこの「コードギアス」、予想以上にCLAMP臭が強いんだよね。
めっちゃ厨二!
特に主人公のルルーシュが

・オットーアイ
・黒のマント
・cv福山潤のやたらよく通る声
・妙に芝居がかった仕草

といったところで、厨二の究極形態を見せてくれている。

なんていうかな、こういうキャラ設定に少し女性作家のテイストがあるのよ。
こういうのは谷口さんや大河内さんだけじゃ無理だったと思うし、やっぱりCLAMPが果たした役割が大きいと思う。
私の持論として、女性作家の作るキャラは男性作家の作るキャラと少し違いがあるんだよね。
なんていうか、女性作家の作る美形男子って、大体が少しややこしい性格をしてるのよ。
なんかやたらと心の奥底に闇があるというか、「裏表がなくてフツーに健全な男子」というキャラをなかなか許容してくれない。
そもそも、女性って本質的にそういうニーズなんじゃないかな?
たとえば「ドラゴンボール」において、女性層に人気が高いのはベジータだという。
あと「進撃の巨人」ならリヴァイ、「ワンピース」ならトラファルガーローといったところが人気。

ベジータ
リヴァイ
トラファルガーロー

やはり、ややこしい性格のキャラに人気が集中している。
で、そういうキャラはそのややこしさゆえ、大体は主人公でなくサブキャラに回されるものなんだけど、「コードギアス」は敢えてそういうのを主人公に据えた点こそが画期的といえるんだ。

でも、ルルーシュがこの作中で最もややこしいキャラというわけでもない。
正直、彼よりも濃いキャラはいるよ?
たとえば彼の父親、皇帝シャルル・ジ・ブリタニア。

シャルル皇帝(cv若本規夫)

これは↑↑アニメ史上最も有名な演説シーンとされるものである。

「人は、差別される為にある。
だからこそ人は争い、競い合い、そこに進化が生まれる。
不平等は、悪ではない。
平等こそが悪なのだ。

オォールハイールゥ、ブリタァーニアァー!」


このシャルル役は若本規夫さんがリミッター解除してたみたいで、若本節のボルテージMAXフルスロットルとなっている。
多分、谷口監督が若本さんに「もう思う存分やっちゃってください!」とか言ったんだと思うよ。
これ、若本節の最高傑作だよね。
個人的にも、シャルル皇帝は歴代悪役TOP10にランクインしている。

だがこのシャルル、よくよく話を聞いてみるとルルーシュが言うほど極悪人じゃなかったと思うんだ。

<ルルーシュがシャルルを憎む理由①>
皇帝のくせに、母マリアンヌを凶弾から守れなかった。
<真実>

実質マリアンヌは死んでないし、シャルルとマリアンヌは今も仲良し。

<ルルーシュがシャルルを憎む理由②>
自分と妹ナナリーを日本に追いやり、見捨てた。
<真実>
ZZ(マリアンヌ殺害事件の犯人)の目から遠ざける為、敢えてふたりを日本に逃がした。

<ルルーシュがシャルルを憎む理由③>
自分たち兄妹が日本にいることを知りつつ、日本との開戦を止めなかった。
<真実>
当時からシャルルは「ラグナレクの接続」(全人類を集合的無意識に回帰させ、生者も死者も皆がひとつになれる新世界)実現の研究をしてたわけで、現世における死をあまり重視してなかった(たとえ死んでも、ラグナレクの接続が済めば皆また一緒になれるんだから・・)。

なんていうか、シャルルはかなり不器用な父親だったんだと思う。
どうやら話を聞く限り、彼なりに家族への愛情は最低限あったっぽいのよ。
どっちかというと、私は父シャルルよりも母マリアンヌの方にイラっとしたよ。
ところで、③の「ラグナレクの接続」ってのがワケ分からんと思うが、

ユング心理学

ようするにこれは、この図の「集合的無意識」に全人類を接続、そして意識全体を共有させることがシャルルの目的だったらしく、それが実現すると、生者も死者もみんなが意識共有できる、争いのない平和なパラダイスが成立するらしい。
そういや、「エヴァ」でも似たようなこと言ってるオッサンいたっけ・・。
この作品では、

生死に関係なく人の心と記憶が集まる場所=神=集合的無意識


という定義なんだそうだ。

ルルーシュに授けられた「命令遵守のギアス」という能力も、その精神干渉は集合的無意識に作用するものなんだろう。
だけど、「・・あれ?」と思うよね。
演説では
争いがあるから進化が生まれる
とまで言ってたシャルルが
みんなでひとつの意識になって、争いのない世界を作ろう
というのは甚だ矛盾している。
果たして、どっちがシャルルの本音なんだ?

うん、私は「ラグナレクの接続」、つまりは意識統合による平和実現こそがシャルルの偽らざる本音だったんだと思う。
じゃ、「争いがあるから進化が生まれる」は何なの?
きっと彼って、あまり本心を語るタイプではなかったんだろう。
だってさ、あのルルーシュの父親だよ?
ルルーシュの言動を見てりゃ分かることだけど、彼だってつかなくてもいい嘘をいっぱいついてるんだよね。
そこは素直に真実を打ち明けろよ、という場面でも虚勢を張ってしまう。
あの性格を見てると、多分シャルルもまたそうだったんだろうなぁ・・と。
そしてシャルルは、自分のコミュニケーション下手を自覚してたからこそ、人類レベルの意識統合というものに救いを求めたのかもしれないね。

ちなみに、この作品では3つの平和実現の方法論が提示されている。

①意識統合による平和実現(シャルル皇帝)

②大量破壊兵器フレイヤの恐怖、その抑止力による秩序としての平和実現(シュナイゼル第二皇子)

③ギアス(強制させる異能力)使用による世界統一⇒皇帝暗殺⇒対話による政治へと移行、という形での平和実現(ルルーシュ)

3人ともやり方は違えど、ちゃんと各々が平和実現のビジョンを持ってたんだ。
私利私欲の為とか、そういうのじゃないんだよ。
みんな冷酷非情なことをしてるものの、その一方で平和への道を模索してることは評価してあげてほしい。
私はこの3人、3人ともがそれなりに筋が通った考え方だと思う。
ただみんな「相手の話を聞く」能力に問題があり、だから最後は殺し合いに発展してしまったのが不幸・・。

まぁ結果的に、③の形で世界平和は実現した。


これは「北斗の拳」において、ラオウが拳王の覇権エリアを拡大後、敢えて自分をケンシロウに討たせることで、ようやく全プロジェクトを完成させたというのと似てるんだ。
乱時のリーダーと平時のリーダーは同一であってはならない、というのが彼なりの考え方だったのかと。
ちゃんとラオウがそこまで考えてたなら、
俺、そろそろ拳王引退したいんだよね、・・お前、俺のあと継がね?
とケンシロウに素直に相談すれば済んだ話じゃん?
なのに、なんでこうなったんだろう↓↓

もっと対話しろよ。

もっと対話しろよ。

もっと対話しろよ。

やっぱ、あれだね。
家族って面と向かうと、意外と言いたいこと言えなくなるものさ。
あと、このふたりはかなり無口だからね。
だから、こういう不器用なコミュニケーション手段になってしまう。
「北斗の拳」にせよ「コードギアス」にせよ、家族内のコミュニケーションって難しいものなんだねぇ・・。

さて、この「コードギアス」をまだ見たことないという人が仮にいるなら、まずは全50話のテレビアニメじゃなく、お手軽な劇場版から入ってみるのも悪くないんじゃないかな?
興道」「叛道」「皇道」の3部作。

サンライズは昔からテレビアニメ編集版を劇場映画化することが多いんだが、さすがはそういう作業に慣れてるだけのことはあり、「コードギアス」3部作はめちゃくちゃ編集のセンスがいい。
思いっきりがっつり削ってるところもあるけど、全然不自然じゃないのよ。
ちゃんとストーリーも分かりやすいし。
あと、続編の「復活のルルーシュ」はテレビ版じゃなく劇場版3部作の内容に準拠してるので、むしろ劇場版の方を正典と考えた方がいい気もする。
最近、「奪還のロゼ」という新作をやってるらしいね。
ならば復習教材としては、劇場版3部作こそが最適だろう。


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