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現実から逃げる時も、向き合う時も、創作物の助けを借りていいはずだよ

創作物には二種類ある。
現実から独立した世界を持つ作品と、現実の問題を比喩化または物語化した作品。

前者は社会的メッセージを持たない。
むしろ視聴者はひとときでも現実を忘れるため、作品に触れる。

後者は、実際に起きたできごとを扱ったり、事実からエッセンスを抜き出して物語にする。
作品を見終わったあと、読み終わったあとに視聴者は、この世の中で起きている問題を認識したり、自分の課題を見つけたり、それらに立ち向かっていく勇気をもらったりする。

呼び方は何でもよくて、前者をソフトな作品、後者をハードな作品と言ってもいい。

臨床心理士の東畑 開人さんが書いた『居るのはつらいよ』の中で、ケアとセラピーの違いが何度も出てくる。
ケアは、患者を受け入れ、居場所を作り、気力を戻す。
セラピーは、患者の問題を一緒に眺め、考え、先に進む手伝いをする。
大事なのは、ケアされていない状態でセラピーはできないことだ。
前に進むためには、自分を受け入れてくれる居場所が必要だ。

一定の割合で、現実逃避をさせてくれる創作物を自分へのケアに使っている人たちがいるように思う。
少なくとも私はそうだ。
その場合、社会的、政治的、哲学的テーマは邪魔にしかならない。
教訓もいらないし、作品から何かを得て成長しようとも思わない。
なぜなら、それ以前の状態だからだ。

両方の性質を持つ作品もある。
ぱっと思いつくのは『この世界の片隅に』だ。
ケアとしてもセラピーとしてもおそろしくレベルの高い、希有な作品だと思う。

世の中に、どちらか一方があふれているより、両方あったほうがいい。
両方あって、互いに補い合って、創作物は私を救ってくれる。

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