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2024年読書評13 金田一耕助

「金田一耕助の新冒険」
横溝正史
この本は長編に直す前に書いた短編集です。
すなわちよくあることなのですが、作者が短編を書き、それをもとに長編に書き直すということなのです。
レイモンドチャンドラーもアイリッシュもしています。
これは長編の原型の短編を集めたもの。

「霧の別荘」
ある邸宅に招待された金田一。霧の中で迎えた奇妙な男。案内された別荘で女性が殺されている。警察を呼びに行き、再び別荘に行くと死体はない。
というもの。
要するに霧を利用したトリックなのですが、着想はいいと思います。

「百唇譜」
横溝の本はエログロだという人がいますが、百唇とは何かと思っていると、どうやらプレイボーイが付き合った女の性器を魚拓のようにして集めていたということらしいです。
金持ちの男の妻が殺された。死体を刺したナイフにはクイーンとジャックのトランプが刺さっていた。その指紋は妻の愛人のプレイボーイだった。

「青蜥蜴」
「夜の黒豹」の原型。
私はこの事件の出だし、被害者の女性の胸に青蜥蜴が描かれていた、という発端に物語の魅力を感じ、気になる一冊であった。
しかし実際の本は、エログロであり、エロくはなく、ただあまり気色のよくない小説になっている。
というわけで読むなら短編の方がよろしいと思います。

これもトリック重視で、1つのホテルからどのように人目につかず出入りしたか、というようなことがポイントになっています。

「魔女の暦」
演劇界のお話。3人の女性が次々、予告殺人の通りに殺された行く。
この話だけ、面白くなかった。おそらく演劇界内での話であまり、物語に動きがなかったからか。
3人の女優は一人の男の愛人で、・・・そんな感じの人間関係を探るというお話。

172ページ
ちなみに「天真爛漫」という表現で、もしくは「天衣無縫」と書かれており、両者を同意語とみなしていたけれど、
「天真爛漫」は簡単に言うと無邪気な様子であるけれど、
「天衣無縫」は天の衣に縫い目がないという意味で「完璧」を表す言葉。同意語ではありません。
そんな間違いを横溝正史がするのか、不思議でした。

「ハートのクイーン」
こちらの話は案外面白い。
彫り物師が謎の女に呼び出され、目隠しをされ車で屋敷まで連れられて来る。女の股にマッチ箱大のトランプの模様を彫り、また目隠しをされ返される。しばらくして、股にトランプの入れ墨のある首なし死体が上がる。彫り物師は謎の事故死で、妻が真相を金田一に依頼する。

こんな感じです。
入れ墨を入れられた女は二人いるので入れ替わったのか、などがトリックになりますが、
冒頭の彫り物師のくだりは、ホームズものの「ギリシャ語通訳」に似ていて、面白い。
というか横溝がまねたのかも知れないが。

「悪魔の降誕祭」
金田一の留守中に彼のアパートで待っていた依頼人が毒殺される。依頼人の女は有名なジャズ歌手のマネージャーだった。
そこに歌手の夫が絡んでくる。
長く感じて、あまり面白くはなかった。

「死神の矢」
ユリシーズにあるように、嫁を娶るために3人の夫候補が競うというもの。
しかし殺人事件が起きて、動機と犯人が探られる。
これも人間関係がどろどろしていて、あまり面白くはない。

以上、長編に書き換える前の短編ということで、長編は冗漫になっている可能性があるので、つまり私はあまり多くの彼の作品を読んでいるわけではないので、なんとも言えないけれど、出来の良くない長編も多々あります。
よって、短編でてっとり早く読んで、興味を持ったら長編を読むということでも良いのではないか、と思った次第です。


ココナラ
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