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瞑想を深めるヨガの八支則

瞑想は5〜10分やるだけでも効果があると言うが、短時間で深い瞑想状態に至るのは難しい。

筆者の場合、瞑想開始から思考が落ち着き出すまでに10〜15分位かかり、その後、徐々に徐々に深くなっていく。

しかし、大自然の中で過去も未来も忘れて自然のリズムで一日を過ごしたり、大掃除で部屋と心身をスッキリさせて一日を過ごしたりした後は短時間、ほんの5分でも深い瞑想状態になれる。

瞑想が深まり始めるまでの時間を短くするには、普段から言動、感情、思考を制御する事、精神的習慣を整える事が非常に有効だ。

さて、ヨガには八支則という解脱、悟りに至る為に重要とされる行いがある。日常の行為についても触れており、これを意識して生活すると瞑想が非常に深くなる。

瞑想をやっているがなかなか深まらない、体や思考が落ち着かないと言った方に、八支則を意識するのがおススメだ。今回は八支則について紹介する。

八支則

八支則は次の八つで構成される。

八支則

1. ヤマ(禁戒)

ヤマ(禁戒)は行ってはならない5つの行為を定めている。

①アヒンサー(非暴力)
暴力を振るわない。物理的にも心理的にも。他人にも自分にも。暴力を振るえば心のどこかに負い目が生じる。瞑想をすると自分自身と向き合う事になる。瞑想が深くなると歓喜の境地、幸福の境地が訪れるのだが、負い目があればそこに至るのは難しくなる。

②サティヤ(真実語)
嘘を言わない。嘘も心のどこかに引っかかりを生じさせてしまう。ただしアヒンサー(非暴力)が優先されるのでいわゆる優しい嘘は許される。全体の調和を優先しよう。
サティヤ(真実語)は自分自身に対しても適応される。自分を殺しすぎず臨機応変に。また、予測や思い込みで喋らない事も重要である。

③アスティヤ(不盗)
人の物、体力、時間を奪わない。自分自身に対しても盗まない(無駄にしない)。心に不安や後悔を生じさせる原因となる。

④ブラフマチャリア(禁欲)
性欲に流されず、適切な相手と適切な頻度で行為を行う。性欲は三大欲求の一つだけあって禁欲はなかなか難しい。しかし、どんなに魅力的な異性でも骨と肉と皮でできている。仏教では本来不浄な物を浄と捉えるから苦が生じるという考え方がある。この考え方は欲を抑えるのに役に立つだろう。

⑤アパリグラハ(不貪)
むさぼらない。必要以上に欲しがらない事を指す。あれもこれもと欲しがると心が彷徨いやすくなる。むさぼる癖がつくと欲しいものが手に入っても、欲が更に肥大化しやすくなる。欲望や願望が制御できないと瞑想は深くならない。適量を心がけよう。

2. ニヤマ(勧戒)

ニヤマ(勧戒)は進んでやるべき5つの行為を定めている。

①シャウチャ(清浄)
身も心も清浄に保つ。散らかった部屋、汚れた体では意識が散漫になりやすく瞑想は深めにくい。自己評価が低くなりがちな精神状態は瞑想には適していないのだ。

②サントゥーシャ(知足)
足るを知る。今手にしている物、今置かれている環境に満足する事を指す。既に自分は満たされていて、必要な物は他にないという満足を感じると心が安定していく。

③タパス(苦行)
苦行と訳される事が多いが、自分を痛めつけるほど苦しい事をするのはアヒンサー(非暴力)に反する。そしてタパスの元の意味は「熱」。心身を継続して鍛錬する事で心の毒を焼いていく行為である。日々何かに精力的に取り組んでいる時は心も安定するものだ。

④スヴァディヤーナ(学誦)
聖典を読む事を指す。ヨガの聖典に限らず、時代の流れにさらされても名著として読み継がれている書は人間の本質を突いている。読書は精神修養になるし、のめり込める本を読んでいる時は本と一体化しているような感覚が得られるだろう。これはまさに瞑想状態。

⑤イーシュワラ・プラニダーナ(自在神信仰)
イーシュワラ(自在神)を信仰し、信愛を示す事を指すが、神とは具体的な神様を指す事もあれば、宇宙そのもの、この世界そのものを指す事もある。
この世界そのものに信頼と愛を持っていればおのずと心は安定する。神でなくとも推しに信愛を示す事でもよいだろう。

3. アーサナ(坐法)

アーサナ(坐法)は今でいうヨガポーズ。かつては瞑想に適した座り方を指していた。快適かつ安定した姿勢で瞑想を行うための身体作りと言ったところ。

現代人は座っている時間が長いが、座り姿勢を綺麗に保つだけでも身体づくりになる。座る姿勢を意識する事は自分の身体の状態を客観的に観る事になるので、瞑想を深める一助となるだろう。

(姿勢が良くなる、年齢に負けない身体作りにはこの本!)


4. プラーナーヤーマ(調息)

プラーナーヤーマ(調息)は呼吸法。呼吸を深くゆったりとしたものにしていく。様々な呼吸法があるが、自然な呼吸を観察するだけで充分効果がある。呼吸に気付きながら座る、動く、考える。これだけで自ずから瞑想に適した状態になっていく。

5. プラティヤーハーラ(制感)

プラティヤーハーラ(制感)は感覚を制御する事を指す。えてして人は身体感覚に心まで支配される。体が快適であれば心落ち着く、行き過ぎるとダラダラする。体不快であれば心は騒つく、行き過ぎると怒りや悲しみになる。

感覚を制御するにはまず観て知る事が必要。快、不快、快でも不快でもない中性の感覚を自覚する練習を通じて感覚が制御できるようになり、心の動きが沈静化していく。自然と瞑想も深くなる。

6. ダーラナー(凝念)

ダーラナー(凝念)は瞑想の対象(呼吸、感覚、思考、心、etc…)に対して意識を一点に集める事を指す。瞑想はパワーを使わないようで実はかなりタフな行為。彷徨う感覚や思考を鎮め続け、集中を維持し続ける必要がある。ダーラナー(凝念)は一点集中を努力して維持する事を指す。

ダーラナー(凝念)は心の活動がある処に結び付く事

ヨーガスートラ 第三章第一節

7. ディヤーナ(禅定)

ディヤーナ(禅定)は努力せずとも一点集中のダーラナー(凝念)が維持できている状態を指す。ダーラナー(凝念)を続けているとフッとディヤーナに入っていく。禅定は普段から意識するというより、目指す境地と言ったところか。

ディヤーナ(禅定)とはダーラナーにおいて、想念が一点に集中しつくす状態の事

ヨーガスートラ 第三章第二節

8. サーマディ(三昧)

サーマディ(三昧)は瞑想の対象と一体化した状態を指す。自分が対象に集中しているという意識はない。対象そのものになる。例えば呼吸に集中すると、自分という存在が消えて呼吸そのものになるような感覚となる。

サマーディ(三昧)とはディヤーナにおいて、対象のみが光り輝き、己は空の如くなる事。

ヨーガスートラ 第三章第三節

まとめ

日々の生活の中で己の身体、感覚、思考、心に気付きながらコントロールする事が瞑想を深める事に繋がる。

ヨガでは具体的な指標として、やってはいけない行為、進んでやったほうが良い行為などをまとめた八支則というものがある。

瞑想は特殊な環境で、特殊な時間だけやるものではなくいつでも行える行為。八支則を意識して生活すると瞑想は自然に深まるだろう。

動画:瞑想とは?


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