市場規模(TAM,SAM,SOM)は資金調達のキー
スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズ
市場規模の重要性
資金調達を成功させたいならば市場規模の試算は必須といえます。なぜならもっぱら出資者はその事業が対象とする市場規模が小さい/成長性が低い場合には興味を抱かない、すなわち資金調達に失敗する可能性が高まるからです。そんな市場規模を表すものとして、TAM、SAM、SOMという指標があります。
TAM (Total Addressable Market)
製品やサービスが理論上取り得る最大の市場規模(市場シェア100%を取った場合の市場規模)
例:電気自動車(EV)のTAMは、全世界の自動車がEVに置き換わったらと考えることができます。2022年度の四輪車の世界生産台数は約8,500万台なのでこれがTAMになります。
SAM (Serviceable Available Market)
実際に製品やサービスが提供可能な市場規模(地理や人種等の制約を考慮した場合の市場規模)
例:電気自動車メーカーが特定地域(例えば、北米市場)をターゲットとした場合、TAMの内北米は約1,100万台でこれがSAMになります。
SOM (Serviceable Obtainable Market)
現実に獲得可能な市場規模(競合の存在等を考慮した場合の市場規模)
例:電気自動車メーカーが北米市場での競合状況等を鑑み、20%のシェアを獲得できるとすると約220万台がSOMになります。(TAMの2.5%にしかならないとがっかりするなかれ、十分大きな市場規模です)
TAM等算出の参考
TAM等を算出する場合、ある仮定を置いて試算することになります。どのような仮定をおいて試算をするとよいのかについては個社毎に条件が異なりますが、新規上場した企業が開示している「成長可能性に関する説明資料」の中にはよくTAMに関する記述があります。例えば以下です。
freee株式会社
サスメド株式会社
セーフィー株式会社
自社で検討する場合は参考になりそうな企業を探してこれらの資料を参考にするのがよいでしょう。
グーグル等で、「成長可能性に関する説明資料」と入力して検索すると、さまざまな企業の資料がヒットするので試してみてください。
また、TAM等の算出の際には、例えば、官公庁や調査会社等が公表している統計データを用いることがよくあります。矢野経済研究所とか有名ですね。ちなみに上記の例の世界の自動車生産台数については日本自動車工業会の統計情報を参照しています。
スタートアップが生み出す新しいサービスは、まだ市場が存在せず、ぴったり市場規模を算出できない場合もあります。そのような場合は、似たような既存市場のデータを代替指標としましょう。いずれにしても市場規模とその成長性を試算することはMUST項目になります。
追伸)スタートアップのCFOをやって分かったことシリーズでは備忘の意味も込めて書き綴っています。各種質問やこんな話題を取り上げてほしい等のリクエストがありましたらご連絡いただければ幸いです。
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