FE聖書的考察 vol.2 ─ ヘブライ語「フーグ」に秘められた驚くべき真実
〘vol.1 ─ 地は円形?〙で、多くの聖書翻訳で「円」と訳されるヘブライ語「フーグ」は「円形」を意味しないという徹底的な聖書的根拠を挙げました。
■ 「フーグ」の本当の意味
この記事では改めて「フーグ」の意味するところを探ってゆくことにしましょう。
〘vol.1〙で考慮した4つの「フーグ」と同じ語根を持つ語は他に2つ(厳密には3つ)あります。動詞フーグはそれらから派生したものだとされています。その2つとは「ハーガーグ(動詞)」及び「ハーグ(名詞)」という語です。
これらの単語のルーツを古い順に並べると、ハーガーグ(動詞)→ハーグ/ハーガー(男性・女性名詞)→フーグ(動詞) →フーグ(名詞)となります。
そして、まさにこれら原形「ハーガーグ、ハーグ」こそが「フーグ」の本来の意味がどういうものであるかを教えています。
聖書中の語句の意味に関して、最も信頼に値する根拠となり得るのは、同じく聖書中に見られる、同じ語根を持つこれらの語にどういう訳語が当てられているかを知ること以上の資料は他にないと言えるでしょう。
ではまず「ハーガーグ(動詞)」についてですが、この語は聖書中に16箇所で使用されています。
この語の意味は「feast 饗宴、祝祭」というものです。
《イスラエルの神、主がこう仰せられます。『わたしの民を行かせ、荒野でわたしのために【祭りをさせ(ハーガーグ)よ。』》出エジプト5:1
《あなたがたはこれを主への【祭り】(ハーグ)として【祝い】(ハーガーグ)、代々守るべき永遠のおきてとしてこれを【祝わ】(ハーガーグ)なければならない。》出エジプ12:14
このように「ハーガーグ(動詞)」は、その殆どが「祭りを行う」と訳されています。
そして「ハーグ」(男性名詞)」ですが、これは全部で62回登場しますが、すべて「祭り」と訳されています。
また「ハーガー」という女性名詞としては、1度だけ、イザヤ19:17に用いられています。
《ユダの地はエジプトにとっては【恐れ】(ヘ語:ハーガー)となる。》イザヤ19:17
ハーガーの本来の意味は、語根から字義的には「回転」を意味しますが、通常の意味としては「めまい」という意味の語であり、比喩的な表現の意味として「恐怖」を意味するとされています。
『FE聖書的考察 vol.1 ─ 聖書は[ 地は円形 ]とは述べていない』の記事冒頭で扱ったヨブ記 26:10の動詞形の「フーグ」について、KJV (King James Bible) が「フーグ」を[ compassed ]と訳しているのを紹介しましたが[ compassed ]は日本語で【一周する、巡回する、取り囲む】などの意とされます。
それで、同じ単語が場所によって「円、地平線、大空、丸天井」などとチグハグな訳が見られますが、「フーグ」の聖書的な正しい意味としてKJV の対訳[ compassed ]がもっともふさわしいといえるでしょう。
それで、4つのフーグやそれらの語源的な意味から言って、いずれも共通した概念は、廻るあるいは巡ることであり、この語を仮に漢字で表記すると、決して「円」ではなく「巡」もしくは「周」という文字がもっとも本来の意味を伝えるものと言えるでしょう。
「フーグ」の本来の意味が確認できた上で、改めて、例の「フーグ」が用いられている4つの聖句のうち2つを改めて考慮してみましょう。ヨブ記 26:10と箴言 8:27です。
なぜならこの両者には共通したフレーズ、つまり、「水」に関係し、それを「法令」として定めたという、そもそもの「目的」に言及していることに注目したいと思います。
それで、ヨブ記 26:10正しくは次のような訳になるでしょう。
《水の面を周回させ、光とやみとの境となるべく割り当てた。》
先頭の語は、ヘ語:「ホーク」で、翻訳では「・・とされた」と訳されていますが、この語は「法令、分前、割当」という意味の語です。
《・・深淵の面に周回するものを制定された時・・》箴言 8:27
そしてその目的は光闇の境を制定するためということです。
■ 「深淵の面にフーグを定めたのはいつのこと?
神が「フーグ」を制定されたのはいつのことでしょうか。
この出来事のタイミングとして「水の面に」の「水」はいつのどの時点の、どこにあった「水」でしょうか。もしこれが、「下の水」が1ヶ所に集まって「海」と呼ばれたときの水であったら、その広さは相当小さな面積でしかないことになります。なぜなら今でこそ陸と海の面積比はおよそ3:7ということですが、これはノアの時代に空の上の水がすべて降り注いだゆえの結果ですから、当初の「大地」の面積比は、遥かに陸地のほうが広かったことでしょう。
そして、ヨブ記26:10から、その目的は「光と闇との境」とするということですから、厳密には 創世記1章3節 の「そのとき、神が「光よ。あれ。」と仰せられた」という、「光」を創造された「時」であるということになります。「光」が存在するようになれば確かに「闇」との境目というものが自動的に存在するようになると言えます。つまり、「フーグを制定」しなくともそうなります。ということは、それは単なる「明暗の境界」を意味するものではなく、あえて記述する必要のある何らかの明確な、あるいは具体的な意図や働きがあったということでしょう。
では今度は箴言8章の方から、そのタイミングを計ってみましょう。
箴言8章にはヘブライ語「フーグ」を聖書的に理解するための完璧な証拠が備わっているように思えますので、8:27の更に前後の部分も含めて考慮することにします。
《主は、その働きを始める前から、そのみわざの初めから、わたしを得ておられた。 大昔から、初めから、大地の始まりから、わたしは立てられた。 深淵もまだなく、水のみなぎる源もなかったとき、わたしはすでに生まれていた。 山が立てられる前に、丘より先に、わたしはすでに生まれていた。 神がまだ地も野原も、この世の最初のちりも造られなかったときに。 神が天を堅く立て、深淵の面に【円を描かれた】(フーグ)とき、わたしはそこにいた。 神が上のほうに大空を固め、深淵の源を堅く定め、 海にその境界を置き、水がその境を越えないようにし、地の基を定められたとき、 わたしは神のかたわらで、これを組み立てる者であった。わたしは毎日喜び、いつも御前で楽しみ・・》箴言 8:22-30
箴言8章は「知恵であるわたしは・・」(8:12)という表現からも分かるように「知恵」を擬人化した表現になっていますが、この「わたし」は天におられたときのイエス、つまり「ロゴス」を指しているという理解はすでに定番であり、「主は、その働きを始める前から、そのみわざの初めから、わたしを得ておられた」というのは、ヤハウェは、その働き(み業)の開始の前から ロゴスを得ておられた。という意味です。
それでここからも、「深淵の面にフーグを制定されたとき」とは「地の基を定められたとき」であり明らかに、ヤハウェが創造の業を開始される前の時点から、創造を始められた初期のタイミングの出来事を記していることが分かります。
実際「深淵の面」(the face of the deep)と同じ語句が創世記 1:2 にも見られることを考えますと、「フーグが定められた」のは「地」はまだ形さえなく、闇に覆われていた時点だということになります。
その表現はすなわち、「光」の創造時に、その「光」がどのようなシチュエーションに置かれたかを示すためのものに違いありません。
■【ヘブライ語 [ フーグ ] は太陽軌道を指し示しているという根拠
ここで「太陽軌道」というのは文字通りが太陽が地上を回転移動している軌道のことです。
例えば「惑星軌道とは」中心星の周りを楕円軌道を描いて公転している惑星の軌道のこと。とあるのに「太陽軌道とは」と検索すると「太陽を中心とする周回軌道。太陽の周囲を公転する天体や宇宙探査機などの軌道のこと」とあります。
つまり太陽の軌道ではないものを太陽軌道と呼んでいるところもあるという不思議な現象があります。
〘vol.1〙 の中で、西暦前3世紀頃に、ヘブライ語からギリシャ語に翻訳された「セプトァギンタ訳」に用いられている「フーグ」に対する訳語をご紹介しました。
ヨブ記 26:10 では [ ἐgÚrwsen( エギロセン )]「囲む、包む、あるいは弧」
ヨブ記 22:14、イザヤ書 40:22 では [ gàron( ギロン )]「回転、順路」
これらのイメージを踏襲して考えますと、単に光闇の境目だけでなく、闇の中の光は某かを「囲む あるいは包み込む」状況をイメージさせます。
「光」を創造するタイミングで「フーグを定めた」とはその光つまり「光体」が「地上を周回する」というシチュエーションを伴って制定されたということに違いありません。
ヨブ記 26:10 は、「地」が円形であるということを示す文節などではまったくなく、紛れもなく「天動説」そのものを意味します。太陽は、その軌道を周回しながら 1 年間にその半径を少しずつ収縮/拡大して、現在、北回帰線と南回帰線と呼ばれる区間の間で渦を巻いているということです。