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エレベーターの繕い職人

朝の散歩の戻りにエレベーターを待っていると、おばあさんがガラガラ(ショッピングカートと呼ぶらしい)を引きずりながら、あいさつをしてくれた。

「こんにちはあ」
「ええ、こんにちはあ」

ぼくまで口調を合わせる必要はないのだけれど、おばあさんのゆったりとした口調に引っ張られてしまう。

エレベーターは遅々として来ない。
すると、

「ホークスがねえ、勝つと良いですねえ」
「全くですねえ。今日はどこでしたっけねえ」
「セイブドーム、ですねえ」
「ほほお」

雑談が始まった。無言っていうのもなんだし、同じ建物の住人同士なんだから世間話くらいはする。それは良い。

問題は「野球のことなどからっきし」のくせに、さもいつも観てるような顔をしてしまうことだ。つい、場を繕ってしまうのである。

やがて到着したエレベーターに、ふたりして乗り込む。おばあさんの野球トークはなお続く。

「先発は石川ねえ」
「ははあ、そりゃあ良いですね」
「踏ん張ってほしいわ」
「ですよねえ」

ひどい知ったかぶりである。石川氏について知っていることなど何もない。正直に知らないと言えば良いのに、なにゆえ拾ってしまうのか。繕い職人。

やがてエレベーターが停止する。去り際に、おばあさんがガラガラを引きずりながら、

「応援しましょうねえ」
「もちろんですとも」

わたしは正直になりたい。


トップの写真は「秋刀魚の炙り寿司」です。回転寿司チェーン店「玄海丸」にて注文の一皿。

見ての通り、シャリが2つ。「橋げた」のように配置され、異様に背筋を伸ばした秋刀魚がビンと渡されている。なんだこれは。

どうしろというのだ。と、おもわず息を飲んだもので、記念に写真に収めたのでした。


今日もお読みいただきまして、
ありがとうございます。

それでは、また明日。

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