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新文芸坐×アニメスタイル セレクション vol.123 中村豊のスーパーアクション vol.1

YnkL

開催日:2020年1月25日(土)開演22時30分
会場:新文芸坐
出演:中村豊さん・安藤真裕さん・小黒祐一郎さん(司会)

※メモ漏れや解釈違い、ニュアンス等も含んでいます。
指摘や訂正、追加の情報などありましたらコメントまたはTwitterのDMにてお知らせください。

以下敬称略

『ストレンヂア』について

安藤:
ボンズに同年代の描けるアニメーターが何人かいて、そういった面子でコアなフィルムを一本作りたいと思っていた。当時のアニメーションテクニックで時代劇にチャレンジしてみたい。それに南さんがのっててくれた。
小黒:
登場人物に女性が少ない。大人っぽいのが作りたかった?
安藤:
必然的に男祭りになった。女性キャラを意図的に出さなかった訳ではない。アフレコ現場を見て女性キャラの重要性を痛感した。

中村さんにとっての『ストレンヂア』
中村:
『カウボーイビバップ』もそうだけど、『ストレンヂア』はアニメーターとしの分岐点。方向性を考えたり、1年間じっくり作品に向き合えた。
憧れている安藤さんの作品でメインスタッフとして参加できたのは自分にとっては誇り。今の自分の軸にもなってる。
安藤:
100分の中で、濃密にアクションとしての物語を作っていきたいと思っていた。後半にもお腹いっぱいのアクションで物語を完結させたかった。
中村:
最初から最後までしっかりリアルに作られているので、最後をエンターテインメント寄りにしたら安藤さんに止められた。
安藤:
クライマックスのアクションを一人で担当するとなると、※気が引けてしまったりするけど、中村さんはドンと受けてくれて惚れちゃう。
中村:
監督が凄かったりすると「ついていこう」ってなる。
安藤:
初監督作品だからかなり緊張して取り組んだ。中村さんはまとまったカットを見せてもらい、一部修正しつつ後はお任せしている。

安藤:
「何かが足りない」「もっとギリギリ感が欲しい物」っといったアバウトな要求にもちゃんと答えてくれる安心感が中村さんにはある。
中村:
『ストレンヂア』は中のアニメーターがうまい人ばかりだったので、「あの人がこう来るならこうしよう」みたいな気持ちがあった。
安藤:
アニメーター同士で切磋琢磨していた。

安藤:
コンテは流れのポイントだけ抑えてある。そこを如何にして中村さんに膨らませてもらうか。
中村:
痛さ、痛みを感じる描写の演出にこだわりがあった。
安藤:
そこは"ギリギリ感"をだそうと。

中村:
クライマックスを超人バトルにしても、それまで担当された方達がリアルに描かれていたので最後に成立している。
安藤:
中村さんが最後に「もう1カット欲しい」と凄く粘られていて、その1カットでより濃密になるのは分かっていたけど、「どこに時間作るんです??」ってなって、スケジュール的にも厳しかったし、※ドラマの積み重ねがあるので大丈夫だと説得した。

中村:
うまい人が揃っていても、レイアウトは安藤さんが大量に修正していた。
安藤:
オリジナルなので、作品のリアリティを僕の手で調整する感じでやってた。アクション以外の部分は僕が持ち上げる。そういった事が演出の仕事だったりする。
メインのアクションアニメーターにアクションの幅を広げてもらって、中村さんに最後の花火を上げてもらう。

中村:
現場に入った最初の3ヶ月くらいは冒頭の背動を描いていた。でも後半の同じ様な背動は3Dだったので、「これも3Dで良いんじゃないの?」ってなり、3ヶ月の仕事を捨てた。お寺の炎上もレイアウトのみ担当している。

小黒:
Twitterでストレンヂアを布教しているのはなぜ?
中村:
なぜ沢山の人がこの作品を見ないんだろうと思って。安藤さんがいる間にヒットして欲しい気持ちがある。埋もれさせてはいけないなと。

『カウボーイビバップ』について

安藤:
中村さんの要求度が高いので、足を上げて頑張った。
中村:
急に1カットコンテを変えたいと言い出してしまった時、安藤さんの目は殺し屋の目をしていたけど、大人な対応をして下さった。
村木さんには凄い怒られたけど、「あの人なんであんなに怒るんだろう」と。
負い目は凄く感じていたので、ストレンヂアでようやく借りが返せたなと。それまでは会うたびに肝が締まった。

小黒:
インタビューでは中村さんが「安藤さんには修正なんて入れてませんよ。」と言っていたけど。
安藤:
歴史は捻じ曲げられる。ただ、僕はフィルムを見て納得した。最終的にはフィルムで答えを出してくれる。

小黒:
人物アクションはシリーズでも描かれているが、『カウボーイビバップ 天国の扉』は特にその集大成だったりするのか。
中村:
意識としてはある。
でも、手が遅いので「こういう原画マンに頼まないと終わらないよ」って言いながら頼んで、ギリギリ終わってる。

中村:
ディスクに打ち合わせに行ってくださいって言われたので行ったら、今度は渡辺監督に「何しに来たの?」って言われた。
自分の肩書についても話し合ったりしていたのに。受け入れざるを得ない、ボンズという会社は。

『エスカフローネ』について

中村:
1年で40カットしか上がらなかった。
安藤:
最後まで見ても、中村さん担当パートの冒頭が一番印象に残ってる。
小黒:
暗くて当時は見えなかった。原画を見て鎧の描き込みに驚いた。
中村:
演出さんには「暗いから描き込まなくてもいいよ」と言われていたけど、
結城信輝さんのところに行くと思うと描くべきだと思った。設定がとにかく半端なかった。
血飛沫もBlu-rayですら見えないから悔しくて、『ストレンヂア』でそれをやった。
安藤:
次の作品で復習戦をやってる人は結構いる。

中村豊さんについて

安藤:
僕のアニメーターとしての刀を折った男が中村さん。中村さんの仕事を見たりして、演出に移った。
特に最近のお仕事はお客さん気分で見ている。ワクワクさせてくれるなぁと。技術的な部分もあるけど、童心に帰るような、作画が全てで表現が無限に広がっていた時の感覚が蘇る。
今は演出で汚れてしまってる。
2D手描きのアニメとしての限界は、最近3Dで表現する様になってきたけど中村さんはそれを全て手描きで描き切る。
小黒:
「3Dに負けるか」みたいな
安藤:
「これを手描きでどう表現するか!」
中村:
いや、3D使えるんだったら3Dを使う。でも自分はコンテを変えるから3Dを準備する時間が無くて、結局手描きで背動を描いてる。
安藤:
でも、中村さんのフィルムを見るとやっぱり「闘ってるなぁ〜!」ってなる。今は3Dでなんとかならないかと考えてしまう。
中村:
「これは3Dにならないの?」って毎回聞いてる。

安藤:
中村さんはリングを作品に例えるなら、ロープでギリギリまで伸ばしている感じ。それでアニメーションの幅を広げてもらっている。


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