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(連載:就活サバイバルvol.11)地方出身というだけで、選択肢が狭まる。東京出身者との格差

ついに本格化した就活。慶應3年の美希は、OB訪問に説明会に忙しい。漠然と大手企業に行きたいと考えており、手広くやっている。が、彼女はことごとくエントリーシートで落ちてしまう。悩む彼女は、内定を掴むことが出来るのか!?

「地元に帰って就活しようと思う」

久しぶりに電話した美希は、母親にそう告げた。電話口の母は驚いた様子だったが、声を弾ませる。

「お母さんは大賛成よ。でも、どうしてそう思ったの?」

そう聞かれた美希は、東京で就活がうまくいかなかったことを契機に、自分なりに考えたことを話し始めた。

「地方出身の私は、やっぱり“住む家”を確保しないといけない。今みたいにお父さんお母さんに負担してもらうわけにはいかないでしょ。

そう考えるとね、エリア総合職は、給与的に難しい。悔しいけど、都内に実家があれば選択肢は広がっていたのかも。

でもね、自分は東京で何がしたいのか、どうしても東京に残りたいかって考えたら、そうでもなかったの」

母は、「うん、うん」と頷いたまま聞き続ける。

「自分の理想とする生活は何だろうって考えたの。そうしたら、仕事もしながら、結婚して家庭を持つことだって気づいた。

就活する前は、海外でもどこでも行きますって思ってたけど、よくよく考えたら、私はニューヨークとかパリみたいな大都市に憧れているだけ。生活環境が劣悪な環境に住んででも仕事をしたいわけじゃない。だったら、旅行で十分なのよ。

気は早いかもしれないけど、子どもを育てるってなったらお父さんお母さんの手も借りたいの。そう考えたら、やっぱり地元に戻ろうって思う」

「そう…」

母親は、美希の言葉を聞きながらしばし声を震わせる。

「自分が理想とする姿から逆算したら、地元に戻るのが一番だって思ったんだ」

「分かったわ、待ってるよ。お父さんにも話しておくから」

電話を終えた美希は、清々しい気持ちで、勇人にLINEを送った。

「私、地元に帰って就活するつもり」

勇人は驚いた様子で、「え、どうしたの急に。マジで?」と送って来た。

翌日。

「美希、ちょっとコーヒーでも飲もうよ」

勇人が話しかけて来た。美希が、「地元企業の就活について調べるので精一杯なんだけど」と言うと、「いいから」と、カフェテリアに連れ出された。

コーヒーを飲みながら、昨日母親にしたのと同じ話をすると、勇人が「美希、変わったな」とつぶやいた。

「実家が東京にあれば良かったのにとか、自分にもコネがあればなんて、無いものを考えたこともあったよ。でも、無いものは無い。仕方ないよね。

東京での生活は家賃も高いし、それでも頑張ろうって思えるほどやりたいこともない。だから、いっそのこと地元に帰って、就職して結婚してって生活の方が良いなって思って」

全てを話し終えた美希がコーヒーを飲むと、勇人が「あのさ、美希…」と、重々しく口を開いた。

→続く。

●次回予告

勇人の口から発せられたのはまさかの!?


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