(連載:就活サバイバルNo.1)ついに開幕。有名大学生の就活バトル
<登場人物>
・美希:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、“大手企業”。総合商社、広告代理店、大手メーカー、メガバンクなど、手広くやっている。
出身は、仙台。地元の進学校を卒業後、上京。父親は、地元で弁護士をしている。
・麻子:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、商社の一般職か、損保のエリア総合職。小学校から田園調布雙葉学園に通う。父親は、大手不動産会社の副社長。
・エマ:慶應義塾大学経済学部3年。慶應NY高出身の帰国子女。外資系金融機関に内定済み。
3人とも同じゼミに所属している。
「合同説明会延期だって」
美希は、大学の図書館で出くわした麻子に話しかけた。
「そうなんだ。知らなかった…」
美希の言葉に驚いた麻子。しかし、彼女の服装はいつも通り、花柄のワンピース。右手には、プラダのバッグだ。
OB訪問帰りで、リクルートスーツにトレンチコートの美希とは大違い。
就活はしていないということだろう。
「ねえ、麻子。この後お茶しない?」
美希が声をかけると、麻子は「もちろん」と微笑んだ。
大学近くの喫茶店に入った美希はブラックコーヒーを注文する。その隣で、麻子は「うわあ、ショートケーキが美味しそう。じゃあ、ショートケーキとハーブティー、お願いします!」と、ケーキの注文を始めた。
いつまでもメニューを幸せそうに見ている麻子を横目に、美希は自分の手帳と就活ノートを取り出す。
「今日、三井物産の先輩にOB訪問してきたの。エネルギー関係の部署で働いている人で格好良かった。明日は、資生堂の先輩に会いに行くんだけど…」
美希が手帳を見ながら今日のことを報告すると、麻子が「美希は頑張っててすごいね」と、目を丸くした。
「麻子は大丈夫なの?説明会が延期になったとはいえ、そろそろ始めないと置いてかれちゃうよ」
あまりにも呑気な麻子の様子に、美希の言葉がキツくなる。
だが、麻子はそれにもお構いなしでのんびりと話しながら、ショートケーキを美味しそうに食べている。
「私も頑張らなくちゃ。でもなんかやる気出なくてさ。
ねえ、美希はどういう業界に行きたいの?」
「私は、今は手広くやってるよ。総合商社に広告代理店、金融やメーカーなんかもちょっと。一番行きたいのは、総合商社かなあ」
美希が真面目に答えると、麻子が目を丸くしながら「総合職で?」と聞いてきた。
「当たり前じゃん!海外飛び回るような仕事に憧れるし、バリバリ働きたいもん」
「へえ、美希はすごいね。私は、家庭と両立出来るような仕事、一般職とかが良いなって思っちゃう」
美希は、いかにもお嬢様育ちの麻子らしい発言だなと、思った。
「麻子は都内に実家があるもんね。私は、実家も遠くて頼れない。だから、自分でバリバリ働いて稼がないといけないの」
美希は、強めのブラックコーヒーを一口飲む。一気に頭が冴えるような、そんな濃さだ。
その隣で麻子は、ハーブティーを優雅に飲んでいる。
「さてと、明日もOB訪問が2件あるし、さらにwebテストも受けなくちゃ。あー、忙しい」
美希が席を立とうとすると、麻子が「就活って大変そうだね」と、不安そうな顔をした。
「もう、他人事だと思ってると、痛い目見るよ。一緒に頑張ろうよ」
美希は、のんびりした性格の麻子が就活に出遅れるのではないか、とても心配になった。
だが…。まさかこの時、勝利の女神が麻子に微笑むことになるなんて、美希は思ってもいなかった。
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