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選挙は1人10票じゃいけないのか?-「ポジションを取る」の限界

よく、コンサル業界などで使われる言葉で「ポジションを取る」という言葉があります。つまりは、自分の意見を常にはっきりすること。ある企画に対して、賛成か反対か、進めるのか進めないのか、市場は拡大すると思うのか、縮小すると思うのか、そして、立場を定めて、そこに一貫して物事を進めていくという行動様式とも言えるでしょうか。

結論から言えば、私は、この考え方が限界に来ているのだと思います。

「ポジションを取る」は「個人内部の多様性を認めない」と同じ

世の中の問題って、そうそう0か100で割り切れる話じゃなくて。51対49ぐらいのことだってある。人間だって、世の中に極悪人と聖人君子しかいないわけじゃない。人間良いところもあればダメなところもある。

政党政策だって、「この部分は賛成できるけど、この考え方はちょっと受け入れにくいな」とか、0か100で決められることのほうがむしろ少ない。だからこそ、賛成か反対か立場を決めなさい、というのが「ポジションを取る」ということ。

「ポジションを取る」という単語で検索すると、色んな記事があがってきますが、基本的にはポジションを取るという態度は、優柔不断の対義語として、称揚される文脈のことが多いようです。

そうはいっても期日までに何らかの決定をしなければ行けない現場では、それなりに有用な態度ではあると思います。決定がなくては組織が動かないですからね。ただ、自分の意見を0なり100なりに決定しても、現実が51対49なら、その現実は変わるわけではないし、変えられないということは頭に留めておくべきでしょう。

さて、近頃のネットの炎上や、世界各国で見られる政治的に極端な動き。これは、「ポジションを取る」文化の弊害が生み出しているんじゃないかと思います。現実は30対70だったり、62対38だったり、54対46だったり、いろいろあることを、0か100かに仮定して物事を推し進める。でも、それは仮定であって現実じゃないんですよね。

シンプルに言えば、「あなたがA、B、C、どの意見を持っていても構わないが、AでありB,BであるけどCもある、のような態度は許さない」というのが、今の多様性でもあるわけです。集団の中の個人の意見の多様性は認めていても、個人の中で色んな意見が拮抗している「1人の個人の内面の多様性」は、「ポジションを取る」の思想では、認められていないんですよね。

「あなたが、カレーを食べたい、焼きそばを食べたい、カツ丼を食べたい、どれを食べたいと思っても自由です。でも、カレーを食べたいとポジションを決めたら、焼きそばを食べたいと思ってはいけません。」なのです。

そして、こういう思考法は、本来51対49の個人の中の迷いを押しつぶして、100対0へと先鋭化していき、「様々な方向に先鋭化し強い意見を持った個人が集まる」ことが、多様な社会、となっているわけです。

1人1票の限界

その「ポジションを取る」という文化を極端に制度化したものが、1人1票の二大政党制という政治システムのデザインに表れているのだと思います。「外交ではA党だけど、教育ではB党、でも、税制だとC党なんだよな、、」と個人の中で、「全ての政策についてA党に賛成!」みたいなことってないと思うのですよ。

でも、今の選挙制度のデザインって、その曖昧さを許さないんですよね。「ポジションを取る」ことが正義になっていて、迷いを表現する余白がない。

個人の中でどれだけ51対49に近く拮抗していても、投票時に「A党」と書けば、それは0対100で「A党」を支持賛成したとみなされてしまいます。49で悩んだ「A党」への賛成は数字に表れません。

もちろん、それを補完する様々な制度や政治参加手法はありますが、基本的には、「全ての政策について任期中はA党(A候補者)に全てを預ける」というのが、1人1票の選挙制度。そして、その選択肢を2つにまで絞り込んだのが2大政党制、となります。

でも、やっぱり、無理がありますよね。これだけ社会が複雑化していて、1人1票として自分の意見を集約し、ポジションを取るというのは限界がある。

そこで、1人10票だったらどうかと。「今回でている政策だと全面的に支援できるから、今回は10票、全部入れる」「基本的には現職のA候補者だけど、失点もあるから3票はB、1票をCに回そう」とか、「今回は判断に迷ったからAさん4票、Bさん6票」とか、個人の中で無理に結論を出さず、迷いや混沌を、迷いや混沌があるということを受け止めて、それを表現する

「ポジジョンをとる」ことによって、曖昧を排除して意見を先鋭化していく一本槍のアプローチではない、社会の意思決定システムが、複雑化した社会には求められてるのかなと思います。

少し広い話をしました。

今日の話はここまで。

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