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【対談】KARADA内科クリニック 渋谷 田中雅之院長 × 森田ゆき 子宮頸がんとワクチン<PART 2>

森田ゆきが実行委員長を務める「Women’s Wellness Action from Shibuya」の実行委員でもあるKARADA内科クリニック 渋谷 田中雅之院長に病院の役割と子宮頸がん、そしてその予防にまつわる日本、そして渋谷区の状況と課題についてお話を伺いました。<PART 1 >ではHPVとは何なのか、なぜワクチンが必要なのかについてうかがいました。<PART 2 >では日本での現状についてもうかがいました。

子宮頸がん、日本の現状と渋谷区の対応は?


森田:日本では近年、子宮頸がんで亡くなる人がすごい増えていますよね。毎年11,000人が子宮頸がんを罹患して、約2,900人の女性が亡くなっているといわれています。
すごい確率ですよね。特に20歳から30歳代に増えているため、出産を望む場合子宮を温存するかどうかという問題もあります。30代までにがん治療で子宮摘出をした人が年間1,000人いるというリサーチもあるそうです。
でもこれは、ワクチンの接種と定期検診で防ぐことができること。20代から30代の方に対して認知を広めていくことが必要だと感じています。

田中院長:同感です。さらに、ワクチンを接種するということは、自分の予防はもちろん、周囲の人間を守ることにも繋がり、ひいてはそのウイルスを排除・根絶する可能性を秘めています。そうやって人類はいろんな病気に打ち勝ってきたんですよね。新型コロナウィルスのワクチン接種もあり、ワクチンはもうお腹いっぱいと思っておられる方もいらっしゃると思いますが、ぜひ関心を持っていただければと思っています。

公費で接種するワクチンの種類・スケジュール

出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html
*現在、渋谷区では公費で接種できるHPVワクチンは2種類(サーバリックス2価、ガーダシル4価)があります。KARADAクリニック 渋谷 ではガーダシルのみ取り扱いがあります。なお、9価ワクチンは公費接種対象外。ワクチンは決められた間隔をあけて、同じワクチンを合計3回接種します

 キャッチアップ接種を有効活用してほしい


森田:副作用などの懸念があり、積極的接種推奨が差し控えられていた期間に対象年齢が該当する女性(平成9年4月2日〜平成17年4月1日生まれ)には「キャッチアップ接種」が可能なんですよね。自治体ごとに対応は異なりますが、渋谷区は令和7年3月31日まで公費でキャッチアップ接種が可能になっています。性交渉を既に経験していても接種した方がいいのでしょうか?

田中院長:そうなんです。HPVワクチンは性交渉を行う前に接種するのが一番効果は高いのですが、すでに性交渉を経験していても、まだ感染していないHPVの種類もあるかもしれない。予防の効果があるのでキャッチアップ接種はぜひ有効活用してほしいですね。
3回の接種で効果の立証がされていることから、3回の接種が推奨されています。過去に打ったような気はするけど何回接種しているか覚えていない、という方にはとにかく3回以上打ってワクチンの効果を確実にすることをおすすめしています。

渋谷区の現状


森田:渋谷区では令和2年のHPVワクチン接種者は196人、昨年は872人で30%の接種率でした。今年の接種対象者は3,324人となっています。今年の数字が伸びることを期待しています。東京都は子宮頚がん検診の受診率50%を目標としており、渋谷区では令和2年は4,574人が受診をしています。令和3年は5,252人とだいぶ増えていて受診率が17.8%だったんです。少ないかなと思ったのですが、職域健診を受けた方は反映されていないのでこんなものかなという感じもあります。その中で令和3年に要再検査となった方が約130人で多いという印象を受けました。20歳以降は2年に一回の定期検診が受けられるので、これはみなさん忘れずに行っていただきたい。
ちなみに渋谷区では、40歳から2年に一回乳がん検診を受けられるのですが、令和3年の受診率が25.5%(4,921人)で要再検査になったのは490人。かなり高い確率ですよね。こういう病気は目に見えないので検診には本当に行っていただきたいと思っています。

気軽に相談できるクリニックをめざしています


森田:子宮頚がんは新生児破傷風や麻疹と同じように制圧可能な疾患といわれているんですよね。
そのためには一次予防としてHPVに感染する前に行うHPVワクチン接種、二次予防としての子宮頸がん検診による早期発見が大切だと聞きました。さらに三次的には症状や年代に応じた治療が不可欠とも。
そのためにも接種対象年齢に達した女性にはHPVワクチンの接種、20歳以上の女性には2年に一回の定期検診を受けていただきたい。そのためにも積極的な情報やデータのご紹介に努めていきたいと思っています。先生はこういったワクチン接種率や検診受診率を上げるのにはどうしたらいいとお考えですか?

田中院長:気軽に相談できる医師の存在が必要なんだと感じています。
高血圧やコレステロールの値が高い方はどういう治療があるのか、どんな種類の薬を接種するかといったことを病院へ行って相談しますよね。一方で、HPVワクチンを打つか、子宮頚がん定期検診を受けるかどうかを悩んでいる方が相談をするためにクリニックを受診されることはほとんどありません。基本的には打つことを心に決めて来院されて、気になったことをいくつか質問する程度です。
他の健康問題と同様に、HPVワクチンの接種や子宮頚がん検診、その他の感染症・性感染症など、健康のことを気軽に相談できる場所でありたいと私は考えています。例え、自分の専門分野でなくても、より専門的に相談をできる場所を紹介していくことができます。また、皆さんの医学情報への疑問に対しても、おそらく医師として解きほぐして分かりやすくお伝えすることができると思います。

そのためにもまずは、クリニック受診という敷居をもっと低くしていかなくてはならないと考えています。そして、情報の共有も大切ですが、皆さんとのさらなる対話やコミュニケーションを繰り返しながら医療に関する決断に向けてサポートさせていただければと思っています。ぜひ気軽に来院してもらいたいです。

森田:ウイルスや菌による感染症は見えない病気。予防のためにも病院がもっと身近になるといいですね。主治医的な先生も大切だし、耳のことはあの先生、内科のことはこの先生、という風に医師の使い分けをしてもいいわけですね。
何か違和感を感じたらすぐに通院する、というスタンスが大切なのだと改めて感じます。
感染症という意味では性感染症についてのお話も詳しく伺いたいので、またお話しを聞かせていだきたいと思います。

<参考リンク>
公益社団法人 日本産科婦人科学会
厚生労働省 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html

文・イトウノリコ

【対談】KARADA内科クリニック 渋谷 田中院長 × 森田ゆき 
子宮頸がんとワクチン <PART 1>

【対談】KARADA内科クリニック 渋谷 田中院長 × 森田ゆき 性感染症とは?


田中 雅之院長 略歴
KARADA内科クリニック 渋谷院長
医学博士
日本感染症学会専門医
日本プライマリ・ケア連合学会認定家庭医療専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
日本医師会認定産業医臨床研修指導医(厚生労働省)

KARADA内科クリニック
https://karada-naika.com

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