ラーメンのスープは飲み干すな
写真_2014-12-29_14_29_02

ラーメンのスープは飲み干すな

山路力也

 よく、ラーメンの食べ過ぎは身体に良くないと言われることがある。油分も多くカロリーも高く、野菜が少なく栄養バランスが悪いなど、人はラーメンをそんなイメージで悪者扱いするわけだが、冷静に考えてみれば、ラーメンよりも遥かに油分が多くカロリーも高く野菜も少ない食べ物など、世の中にはいくらでもある。例えば「とんかつ定食」などカロリーはラーメンの倍はあるし、野菜など水でさらして栄養分の抜けた千切りキャベツ程度。ラーメンばかりが目の敵にされるのが不憫で仕方が無い

 しかし残念ながら、それ即ちラーメンが身体に悪い食べ物ではない、ということにはならない。無論、ラーメンに限らずどんなものであっても食べ過ぎは良くないという前提はあるものの、他の食べ物と比較した際、ラーメンについてはどうしても看過出来ない部分がある。それはラーメンの「塩分」である。言うまでもなく、塩分摂取過多は高血圧をはじめ、生活習慣病を誘発する要因になるため、しっかりとコントロールしなければならない部分であるが、ラーメンと塩分について語られることはあまりない。ラーメンにおける塩分は間違い無く他の食べ物よりも高い

 厚生労働省が定めた「日本人の食事摂取基準」(2010年版)によれば、食塩摂取量の「一日あたり」の目標量は成人男性が9g未満、女性が7.5g未満。高血圧で治療している人は、一日6g未満にすることが奨励されている。当然ラーメンによってその塩分含有量は異なるが、一般的にラーメンの塩分はおよそ7g程度、インスタントラーメンでも5gほど。ラーメン一杯で一日で摂って良い塩分の大半をクリアしてしまうのだ。ラーメンはスープなどを飲み干すケースも多いので、これはかなり高い数字だと考えて良いだろう。

 同じ様な麺料理にうどん、蕎麦があるが、かけうどんの場合で塩分含有量はおよそ5gとラーメンにかなり近い。しかし実際にかけうどんや温かい蕎麦の汁を残らず飲み干す方は少ないと思う。また、塩分濃度の高い汁物だと味噌汁があるが、そもそも味噌汁はお椀に一杯程度しか飲まないわけで摂取する塩分は1g程度のものだ。先ほど例に挙げた「とんかつ定食」ですら4gほど。ラーメン一杯をスープまで飲み干した時の塩分摂取量がいかに高いかお分かりかと思う。

 もちろん世の中の大半の方のように、たまにラーメンを食べる程度であればスープを飲み干しても問題はないと思う。しかし、毎日ラーメンを食べるようなラーメン好きの方の場合はかなり深刻な問題になる。人によっては一日に何杯も食べる方もいるだろう。一日三杯ラーメンを食べたとして21g、それを毎日続けていたとしたらどうなるか。大げさではなくラーメンが身体を壊す原因になるのは言うまでもない。

 日々ラーメンを食べ歩いている方は、ラーメンのスープを残すべし。私は余程のことがなければラーメンのスープを飲み干すことはしない。ラーメンの塩分のほとんどはスープに含まれている。スープを残すだけで半分近くの塩分摂取を抑えることが出来るのだ。ラーメン好きからすれば、店主さんが一生懸命作ったスープを残してしまうのは辛いことだし、美味しいスープを飲み干せないのも寂しいことだ。しかし、それで自分の身体を壊してしまい、ラーメンが食べられなくなってしまうのであれば身も蓋もない。だからラーメンのスープを飲み干してはいけない。

 またラーメン店の方には、ぜひメニューに塩分含有量の表示をお願いしたい。化学調味料不使用の旨やアレルギー表示、あるいはカロリー表示など、最近の健康志向も手伝ってラーメン店のメニューにも様々な情報が掲載されているが、塩分について書かれていることはあまりない。しかし高血圧の方や腎臓疾患をお持ちの方など、日々の食事における塩分量を数字で把握したい方も多い。ファミレスやファストフードをはじめ他の外食では塩分含有量の表示がされていることが多い。しかし、ラーメン店で塩分含有量を表示している店は皆無に等しい

 塩分を表示したら健康に敏感な消費者がラーメンを敬遠してしまうのでは?と思われるのかも知れないが、それはそういう食べ物なのだから仕方のないことだし、敬遠されてしまうから表示しないというのであれば、それは昨今話題になった「誤表示」「偽装」問題と本質的に変わらない気もする。ぜひ塩分コントロールされている方たちのためにも正確な情報の提供をお願いしたいところだ。

 大好きなものだからこそ、ずっと食べていきたいものだからこそ、ラーメンに含まれる塩分の多さを自覚して、日々の食生活をうまくセルフコントロールすることで、ラーメンと末長くおつきあい頂きたいと思う。自戒の意味も込めて。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
山路力也
フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家。著書「トーキョーノスタルジックラーメン」他。連載「SENSE」「シティ情報Fukuoka」他。TV「郷愁の街角ラーメン」(BS-TBS)レギュラー。「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えています。